空想フランス料理フルコース88 ひな祭りランチ 上巳の香り 春のしつらえ Sous cloche, mars en fête
Sous cloche, mars en fête
ひな祭りランチ 上巳の香り 春のしつらえ
桃の節句の卓の形と色を、白・若草色・桃色、菱形、二枚貝、草の香りとして集めた。桃は花と実の印、菱形は菱餅の輪郭、二枚貝は対で揃う縁、よもぎは清めの青い香りとして扱う。白い余白に若草と桃が差し込み、菱形の角が光を拾い、二枚の殻の稜線が影を落とす。器を置くたび、席に小さな華やぎが増えていく。

コースのコンセプト
白、若草、桃の三色と菱形が、前菜、冷たいスープ、甘い皿に出る。口開けはおいり、甘酒ブリオッシュ、ひなあられで甘み、乳、香ばしさ。はまぐりは殻の熱とよもぎ、身のベニエとナージュ。甘酒の氷を挟み、干し柿ソースの牛フィレ、最後は三色の小さな楽しみで締める。
Amuse-bouches 3種の楽しみ

1.塩バターバスケットの鳥取おいり クリスピーベーコン

白と淡桃のおいりを箱形の小さなバスケットにまとめ、塩味のバターを薄くまとわせる。上面にクリスピーなベーコンを小さく盛り、米粒の凹凸と乾いた輪郭は残す。
味わうポイント
最初に砂糖の粒がほどけ、続いてバターの乳の香りが広がる。ベーコンの香ばしさと脂が短く重なり、塩が点で当たって甘みは短く引く。
2. 甘酒ブリオッシュ 桜でんぶ

甘酒を練り込んだ小さなブリオッシュ。天面に桜でんぶを薄く一刷毛だけ置き、甘い香りを表面に残す。
味わうポイント
焼けた小麦の香りの後に米の甘みが出る。桜でんぶの甘い香りが鼻へ抜ける。
3. ひなあられ エメンタール

ひなあられに溶かしたエメンタールを絡めて表面で固め、米粒の凹凸と香ばしさを残す。
味わうポイント
砕ける音の後にチーズの甘い香りが広がる。米の香ばしさが戻り、乾いた旨みが続く。
Entrée froide
ひな祭り特別 春の前菜盛り合わせ

配置(時計回り)
12時:菜花サラダ 2時:菱形三層魚介ムース
4時:ニシンのエスカベッシュ 6時:手毬ちらし
8時:菱形に切った澄んだコンソメのジュレ
10時:桜鯛の焼き霜 11時:らっきょうのピクルス
中央:ビーツの桃型チップ
中央の手前寄り:ソースジェノベーゼの点
桜鯛の焼き霜昆布締め ソースジェノベーゼ

桜鯛は皮目を焼いて香ばしさを出し、身は冷たく締めて薄切りにする。皮の焦げは点で残し、白い身の面を大きく見せる。
味わうポイント
皮目の香ばしさが先に立ち、身の淡い甘みが続く。脂は軽く、後口に塩気が短く残る。
菱形に切った澄んだコンソメのジュレ

澄んだコンソメを透明な菱形に切り、角を立てて置く。中に車海老、ホワイトアスパラ、白魚、筍、木の芽、スナップえんどうを小さく沈める。
味わうポイント
口で割れるとだしの旨みが広がり、海老の甘みが続く。筍の歯触りが挟まり、木の芽の香りが短く上がる。
菱形三層魚介ムース

三層のキューブに仕立てる。帆立の白、サーモンの桃、ほうれん草の若草を重ね、断面が見える向きで置く。
味わうポイント
舌でほどける順に、帆立の甘み、サーモンの脂、ほうれん草の青みが出る。冷たさが最後まで残る。
手毬ちらし

酢飯を小さな球にまとめ、表面に桜でんぶ、キャビア、いくら、青海苔や海老の小片を散らす。粒の輪郭が残る硬さにし、白を強く見せる。
味わうポイント
米粒がほどけて酢の香りが出る。海老の甘みが続き、白魚の淡い旨みが短く残る。
ニシンのエスカベッシュ

ニシンは薄切りにし、酢と香味野菜で漬ける。身の銀と脂の面が見える向きで置き、汁気は皿に広げない。
味わうポイント
脂の後に酢の酸が重なり、香味野菜の香りが返る。身はしっとりして、後口に青魚の香りが残る。
らっきょうのピクルス

らっきょうは小粒のまま酢漬けにし、艶を残して一口分で置く。白い塊として形をはっきり見せる。
味わうポイント
歯が入ると硬い音が出て、甘酸が広がる。香りは短く、後口に歯切れだけが残る。
菜花サラダ

菜花は茎と花の形を残し、中央奥に小さく盛る。水分は切り、花の黄色を点で立てる。酢橘ドレッシングを和える。
味わうポイント
青い香りが先に立ち、ほろ苦さが短く続く。外周の魚介の余熱と混ざって、青みが戻る。
ビーツの桃型チップ

ビーツを薄く切り、桃の形に抜いて中央に立てる。表面の赤の濃淡と、縁の薄さが見える角度で置く。
味わうポイント
歯が触れると軽く割れ、ビーツの甘みが短く出る。後口に土の香りが細く残る。

Potage
ビシソワーズ 菱形三色コンソメジュレ 香川おいりクルトン

冷たいビシソワーズに、菱形の三色コンソメジュレを沈める。透明、赤はビーツ、緑はうすいえんどう。白・緑・桃色のおいりクルトンを少量置く。
味わうポイント
じゃがいもの甘みと乳の香りが先に出る。ジュレが割れてコンソメの旨みが混ざり、ビーツの香りが短く立つ。緑の甘みが続く。

Poisson
はまぐりのヴァプール クロッシュ仕立て よもぎと菜の花のブール・モンテ はまぐりのベニエ はまぐりのナージュ

蒸した大きなはまぐり二つを皿の奥に置き、殻の中に菜の花の刻みとよもぎを溶かした澄ましバターを少量入れる。殻にガラスのクローシェを二つ被せる。ベニエにしたはまぐりの身を殻の手前に二つ置き、サーブのとき、殻の中へ熱い透明のはまぐりのナージュを注ぐ。

味わうポイント
最初にベニエの揚げ香が立つ。次にクローシェを上げた瞬間、温まったバターの匂いに菜の花とよもぎの青さが重なり、蒸したはまぐりの香りが追う。さらにナージュが湯気を上げ、貝の甘みが広がり、後口に塩気が短く返る。
Granité
甘酒グラニテ ケウラウォーター

甘酒と氷を一緒に削り、雪状の細かな粒にする。中央に小山で盛り、小山の肩にケウラウォーターで作った桃の花形の薄い透明氷を一枚差し込み、香りを表面にだけ薄く移す。
味わうポイント
冷たさが先に当たり、米の甘い匂いが戻る。花香が鼻へ抜け、喉で静かに消える。

Viande
牛フィレ 干し柿ソース 長芋ガレットの引千切 マッシュポテト 絹糸卵

牛フィレは中心に赤みを残す火入れとし、上面に香ばしい焼き色をつける。
土台は長芋のガレット。小判形に焼き、表面に淡い焼き色を散らす。ガレットの上にじゃがいものピュレを低くのせ、中央に浅いくぼみを作る。くぼみに牛のジュと干し柿の戻し汁を合わせたソースを少量流し、角切りの果肉を控えめに散らす。仕上げに絹糸卵を小さくのせ、細い先端の方向へ短くほどく。
補足
引千切は、小判形に細い尾が付く菓子の形。
長芋ガレットを小判に整え、片側の縁を細く引きちぎったように延ばして“尾”の輪郭を写す。
味わうポイント
長芋ガレットの香ばしさとじゃがいもの温かい香りが先に立ち、牛フィレの旨みが続く。
くぼみのソースから干し柿の果肉がほどけ、甘い香りが短く残る。最後に長芋の粉の香りが余韻に残る。

Avant-dessert
梅の落雁シャーベット ローズの泡 レモンタイム綿あめの雲

梅のシャーベットを落雁の型で抜き、表面のさらりを残す。桜の花びらの形の色付けしたローズの泡を添え、レモンタイムの刻みを絡めた小さなの綿あめを一つ置く。
味わうポイント
梅の酸と冷たさが先に出る。泡が消えてローズの香りが残る。綿あめが溶けて甘みとハーブの爽やかさが一瞬だけ残る。

Grand dessert
白玉入りクレームブリュレ 菱餅仕立て 三色キャラメリゼ

耐熱ガラスの菱形三分割皿にクレームを流し、白玉を表面近くに沈める。左区画はブリュレの砂糖を薄く焼き、琥珀色のキャラメリゼ膜を作る。中央はフランボワーズ液を含ませた赤い砂糖板を一枚でのせ、表面にフリーズドライの粉を薄く散らす。右区画はピスタチオを混ぜたホワイトチョコの薄片を一枚で覆う。仕上げに一瞬だけ熱を当て、各板の底面だけを軽くなじませる。
味わうポイント
最初に板が割れて、砂糖の香ばしさが立つ。続いてクレームの甘みが広がり、白玉の弾力が残る。赤はフランボワーズの酸が短く返り、緑はピスタチオとホワイトチョコの香りがゆっくり消える。

Mignardises 最後の小さな楽しみ

1. よもぎのギモーヴ

よもぎを溶かしたギモーヴを小さな角に切り、表面に粉糖を薄くまとわせる。
味わうポイント
弾力が戻った後に、よもぎの青い香りが甘みの後ろから出る。
2. ミニトマト糖衣(コンフィ)

ミニトマトをコンフィにして小粒にし、薄い糖衣で包んで赤い艶を残す。
味わうポイント
糖衣が割れて甘酸が出る。果肉がほどけ、皮の香りが短く残る。
3. 豆乳のマカロン

豆乳のクリームをマカロンで挟み、殻は白く焼いて表面の気泡を細かく残す。
味わうポイント
殻が割れて軽い歯触りが出る。豆乳の香りが穏やかに広がり、甘みは短く引く。

ありがとうございました。
次のコースもお待ちしております。
