00年代のマッシュアップと今
以前、Steely Danつながりでこの曲のことを書いたのですが、コーチェラでのサブリナのパフォーマンスの件もあり、00年代のマッシュアップという現象についてまとめてみました。
83年全米75位全英11位。当時人気絶頂のBillie Jeanがシンプルなリズムで構成されていることを利用し、Do It Againのヴォーカルパートを重ねたアレンジのカバー曲です。当時ラジオで結構聴きましたし、便乗してSteely Danの代わりにGreg KihnのJeopardyやYesのOwner Of A Lonely Heartを重ねたものもありました。しかしポップ・ミュージック界きってのIPに厳しい関係者のクレジットを得るなど、今では実現不可能なプロジェクトではないでしょうか。
もともとマッシュアップという言葉自体や、全く違う曲を合体させる手法は何十年も前からありますし、それこそHip Hopではサンプリングなんて当たり前の概念なのですが、24年前に突然表舞台に出てくることになります。きっかけは2002年のブリット・アワードのこのパフォーマンスでした。
90年代は低迷していたKylieですが00年のアルバムLihght Years(全豪1位全英2位)で復活。続くアルバムFever(全豪全英1位全米3位)はさらなる大ヒットとなります。シングルCan't Get You Out Of My Head(01年全英1位全米3位「熱く胸を焦がして」)はブリット・アワードにノミネート。当然パフォーマンスを期待されていたのですが、意表をついてバックトラックをNew OrderのBlue Mondayに差し替えた大胆なアレンジで披露。インターナショナルのアルバムと女性部門を受賞し、後にこのヴァージョンはCan't Get Blue Monday Out Of My Head(Blue Mondayが頭から離れない)という気の利いたタイトルと共に音源リリースされます。
この頃、アップルのiTunesやファイル交換など音源をファイルとして扱うことが定着し、楽曲の二次加工のハードルが下がりました。そして脈絡のない二つの楽曲のヴォーカルとバックトラックを組み合わせたものをマッシュアップと呼ぶことが一般的になります。多くはネット上のお遊びに過ぎなかったのですが、中には公式音源としてこんなのもリリースされました。
UKのガールズ・グループSugababes。ブリット・アワード直後にリリースされたメンバー脱退後初のシングルはタイトル通りAdina Hawardのカバー(95年全米2位)ですが、バックトラックはTubeway ArmyのAre Friends "Electric"?(79年全英1位)。これが彼女たちの初の全英1位(02年)となりました。
さらにはこんな便乗企画も。
ローカルラジオ局のDJが企画したChristina AguileraのGenie In A Bottle(00年全米全英1位)とThe StrokesのHard To Explainを組み合わせた音源は、正式リリースの要望があるも関係者全員が拒否(そりゃそうだ)。だったらカバーしてしまえと新人バンドに歌わせます。このシングルは03年全英10位。一周回ってClub Houseの芸風に戻ったわけですね。
当時の記憶では、モデルあがりの女の子にミュージシャンを当てがいバンドを組ませたみたいな話を聞きましたがどうやら間違いで、全員ミュージシャンのようでした。しかしバンドはアルバム1枚で解散し、その後のメンバーも目立ったキャリアを築けていません。
そんなマッシュアップのブームですが、思わぬ形でピークと終焉を迎えます。
もとはエレクトロニカ系のアーティスト&DJであったDanger Mouse。マッシュアップのブームに便乗し、Jay-ZのThe Black Albumの楽曲にThe Beatlesのセルフタイトルアルバム、通称White Albumのトラックを組み合わせるという大胆な企画、名付けてThe Grey Album。当然ながらMichael Jackson以上にIPに厳しいThe Beatles側の許可をとれるわけもなく、非公式音源としてネットで公開されました。
これに世界中が注目。なかでも英国のメディアNMEは年間ベストアルバムに選出するなど大きな反響を呼びます。もっともNMEの評価はファイル交換やIPなど、現代における音楽産業の課題を炙り出すという意図もあったようです。実際このアルバム聴きましたが苦労して作ったという割にそれほどインパクトを感じませんでした。特に99 Problemsは元のトラックがBilly SquireのThe Big Beatというロックの楽曲で(プロデュースもロック系のRick Rubin)、対するバックトラックのHelter Skelterも元祖ハード・ロックみたいな曲なので意外性がなかったというのもあるでしょう。
こちらはWhile My Guitar Gently Weepsをバックトラックに。Hip Hopやサンプリングが割と好きな私が聴いても正直そんなに面白くなかったです。
結局この企画は、面白半分で曲を混ぜ合わせても元の曲以上の出来にはならない、そして安着なサンプリングに対する警告の意味もあったのかもしれません。そしてマッシュアップのブームはいったんこれで終了します。
ただ、マッシュアップ自体は珍しさがなくなった分、むしろ定着したというべきでしょう。最近ではSabrina CarpenterのHouse TourとMary Jane GirlsのIn My HouseのマッシュアップIn My House Tourがネットで人気となり、Sabrina自身もコーチェラでこのマッシュアップを披露しています。
誰も話題にしていませんでしたが、終盤2:58ごろにIn My Houseのイントロがかかります。
