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パラソルは組織の証

昨日、訪問先の集合住宅で、小さなじぃちゃんを見つけた。

植え込みの地べたに座って草むしりをしていた。
白いシャツにステテコ。

パラソル一本、地面にぶっ刺していた。

既視感だ。
なんだなんだ?

ぴこーん。

ババヘラだ。

秋田へ行くと見かける、あのババヘラアイス。
橋のたもとに、ぽつん。

炎天下なのに、装備はパラソル一本。

しかも、あのパラソル、やけにカラフル。

赤とか青とか黄色とか。
絶対、ホームセンターで個人が選んだ色じゃない。

あれはきっと、支給品だ。


昔から、不思議だった。

どうやってあそこまで行くんだろう。

お昼ご飯は?

トイレは?

アイスがなくなったら?

補充は誰が?

夕方はどうやって帰るの?

考えれば考えるほど、謎ばかり。

だから、わたしの中ではひとつの結論にたどり着いた。
ババヘラの背後には、なんらかの組織がある。
早朝、軽トラックが迎えに来る。

パラソルを積み。

アイスを積み。

ばぁちゃんを乗せる。

橋のたもとで、パラソルを降ろし。

アイスを降ろし。

ばぁちゃんを降ろす。

夕方。
……ブォンブォン
年季の入った軽トラックが迎えに来る。

窓が開く。
「ごくろーさん。」

ばぁちゃんは、
「はぁ。」と小さくため息をついて。

アイスケースを積み。
よいしょ、と荷台へ乗り込む。

ブォンブォン……

軽トラックは次の現場へ向かう。


そして今日。
パラソルの下のじぃちゃんを見つけた。

訪問を終えて戻ると、まだそこにいる。

車をバックさせようとした、その時。

「オーライ、オーライ!」

じぃちゃんが立ち上がって、両手を大きく振って誘導してくれた。
無事に道路へ出ると、

にっ。

歯はほとんどない。
でも、一本だけ見えた。

その笑顔が、なんだかうれしかった。

……でも。


窓を全開にして走りながら、
また始まる。

わたしの脳内再生。

あと1時間もすると。

……ブォンブォン。
あの、トラックだ。

運転席の窓が開く。
黒いサングラスのおじさんが頭を下げる。
「お疲れさんです。」

じぃちゃんは、
「オゥ。」
それだけ言って、ゆっくり立ち上がる。

パラソルをたたみ。
当然のように助手席へ乗り込む。

ドアが閉まる。

ポケットから扇子を取り出し、ぱたぱたとあおぐ。

タバコを一本くわえる。

運転席のおじさんが、黙ってライターを差し出す。
カチッ。
火がつく。

じぃちゃんは煙をひとつ吐く。

ブォンブォン……

……やっぱり。

元締め、お前だったのか。

パラソルは。

なんらかの組織の証なのである。

──もちろん、全部わたしの妄想だけど。

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