26年大阪杯を振り返る~枠順の違いが生んだダービー馬2頭の明暗~
1800mのGIを創設してくれという声はよく耳にする。まー、気持ちは分かる。
一部では大阪杯を外回りの1800mにしてほしいという声もよく耳にするが、マスクは反対だ。もう10年前になるか、このレースをGIにすると聞いた時にはJRA、いいGIを作ったなと思ったものだよ。
なぜかって、『内回りの2000m』という条件だからだ。内回りの2000という条件のGIは他にホープフルS、秋華賞とあるが、どちらも古馬のGIは出られない。
内回り2200mという条件で宝塚記念が存在するが、さすがにそんな条件だと1600mや1800mの実績馬はそうそう出られない。
外回りの直線勝負は確かに見応えはあるだろう。それでも直線の長いGIはすでに天皇賞秋が存在するからな。時期の近いドバイには1800のドバイターフもある。
内回りの2000mという条件を、4月頭にやるという設定はとても良くできていると感心するものさ。マイラーはここを使って安田記念に行ける。もっと長い距離を使っている馬はここから天皇賞春に行く選択肢もできる。
これがもう少し後の時期に設置されると天皇賞までの間隔が狭い。絶妙な時期に開催されているのだ。
この『絶妙な時期』というのが大阪杯のポイントの一つだろう。
3月と4月の狭間で
大阪杯はGIになってもう10年経とうとしているが、産経大阪杯時代から30年近く変わらないことがある。『2回阪神4日目』の開催ということだ。
平たく言えば、3月の最終週か4月の頭の開催だ。今は2月半ばから阪神開催がスタートして、4月半ばまで連続開催になっているから、もう開催終盤と言ってもいい。
2カ月の連続開催となる阪神芝だが、阪神芝はAコースとBコースの2つしか存在しないんだ。
東京ならA~Dコース、京都ならA~Dコース、中山ならA~Cコースまである中で、主要4場の中で唯一、阪神だけAとBしかコースがない。
芝は2コースだけで2カ月乗り切らないといけない。そのため2カ月の連続開催で、1ヶ月Aコース、もう1ヶ月Bコースという振り分け方ができない。
考えてもみてくれよ、平等に分担したとして、後半ずっと雨だった場合、最終週はとんでもない馬場ができてしまう。そのため少し長めにAコースで競馬が開催される。
連続開催9週間のうち、例年6週目か7週目からBコースに切り換わるわけだが、大阪杯は7週目。毎年、Bコースに変わるかどうかギリギリの週なんだよ。
☆GI昇格後の大阪杯のコース
17年 Bコース
18年 Bコース
19年 Bコース
20年 Bコース
21年 Aコース
22年 Aコース
23年 Aコース
24年 Bコース
25年 Bコース
26年 Aコース
この10回、Bコースだったり、Aコースだったり、バラバラだろう。基本的にGIはコースが動かない。ダービーだったらCコース、みたいな感じでな。
それだけにこれだけコースが動くGIは珍しい。距離が『マイルと2400mの中間』であると同時に、『AコースとBコースの中間』であることをまず頭に入れたい。
今年は3年ぶりのAコース。つまり、連続開催7週目でひたすら使い込んだAコースでの開催になる。
加えて土曜は雨。ここで内が掘れたら、余計に外伸びになる可能性があった。結構芝の塊も飛んでいたしな。



☆阪神10R 心斎橋S
1着 赤 ⑥ミトノオルフェ
2着 白 ②スライビングロード
3着 橙 ⑬スカイハイ
ここで見ておきたいのが10Rの心斎橋Sだ。33.0-35.3という超ハイペースで差し決着となったレースさ。
勝ったミトノオルフェ、3着スカイハイは外から差してきているが、注目は2着だった白スライビングロード。
道中内ラチ沿いを通っているだろう。7週目にもなればもっと外伸びになっていいものだが、スライビングロードが内を通って好走している。
もちろんこれはスライビングロードの力があるからでもあるが、内の黒丸で囲んだ部分の馬たちが内を空けていない。つまり、ジョッキーの中でも『内は通れる』という認識なんだよな。

外回りは事情が異なっていた。これは8Rの外回り1800m。勝った青モアリジット、2着の赤マイネルフルムーンが黒丸部分の内を空けている。3着の白オメガインペリアルも外を回っていた。
外回りはある程度外。内回りは内を通ってもOK。内と外で違う馬場であることを認識しながら、この先の回顧を読んでほしい。
レジェンドの理想と現実
ここまでポイントの一つとして馬場について触れてきたが、大阪杯には他にもいくつかのポイントがあった。
展開とペースも間違いなくその一つだろう。まー、どのレースでも展開とペースはポイントにはなるがね。
今回の大阪杯のメンバーで、ここ3走以内に逃げていた馬を内枠から挙げていくと、セイウンハーデス、メイショウタバル、エコロディノス、ファウストラーゼン、クロワデュノールの5頭が該当する。
ただクロワデュノールの場合は外枠から前に壁を作れずに行ってしまった凱旋門賞で、ファウストラーゼンのハナは3400mのダイヤモンドS。
エコロディノスのハナは2勝クラスの北野特別でのもので、控えても競馬できる。基本的にこの3頭がハナということはよほどのことがない限り、ない。
するとハナ候補はここ2走逃げているセイウンハーデスと、なるべく逃げたいメイショウタバルのどちらか。
セイウンハーデスは戦前から控えることを示唆していた。すると順当に行けばメイショウタバルがハナになる。
このセイウンハーデスの中山記念を見てほしい。逃げて12着だったのだが、ものすごく速いペースというわけではなく、残り200mまでは先頭に立っていたんだよ。
それが残り200を過ぎたあたりで交わされると、急に手応えがなくなって下がっていった。
レース後幸が「外から来られた時に他馬を気にしていました」とコメントしていたように、交わされて競馬をやめていた。
本来中山記念も控えたかったようだが、最内枠を引いてしまって揉まれたくないという理由で行ってしまい、気難しいところを出してしまったというわけだ。
今回も内枠。陣営は控えると言っていたが、中山記念と同じように揉まれたくないからと先行すればメイショウタバルと競り合うことになるし、宣言通り控えればメイショウタバルが単騎でマイペースになる、そんな展開予想が成り立つ。
先程馬場のくだりで書いたが、内回りはインが使える。そんな馬場でメイショウタバルが単騎でマイペースで逃げれば、簡単には止まらないと考えられる。



そんな簡単に行かないから競馬は難しいんだよな。スタートで思わず声が出てしまったよ。
青メイショウタバルが立ち遅れてしまったのだ。斜め前の映像を見ると、はっきりと立ち遅れているのが分かる。これには驚いた。

青メイショウタバルと武さんの不幸中の幸いだったのは、内隣の赤ショウヘイがスタートを出た直後、少しだけダノンデサイルのほうに飛んでしまったことだろう。
外にいた黄エコロディノスがメイショウタバル側に出てしまっているだけに、これがもし赤ショウヘイが外のほうに出ていたら、メイショウタバルは挟まれていた可能性がある。
馬はまっすぐスタートを出てくれない。スタートを出た直後の斜行は基本制裁対象にならない。もし仮に挟まれていても他馬に制裁がやってくるわけではないことは付け加えておく。


立ち遅れても幸いにして挟まれなかった青メイショウタバルは、二の脚がついたことでショウヘイとエコロディノスの間を突破。ハナに立ちに行った。
ここでもう一つタバルにとって幸いだったのは、黒セイウンハーデスが戦前の宣言通り控えたことだろう。
もし前回同様内枠で揉まれるのを嫌ってハナに行こうとしたら、立ち遅れていたメイショウタバルは2番手になる可能性が高い。番手だとより脆くなる馬だけに、このセイウンハーデスの動きも大きかった。

ハーデスが控えてハナを切った青メイショウタバルだが、外から先行してきたのが橙ファウストラーゼンだったのも幸運だった。
前述したようにファウストラーゼンは前走ダイヤモンドSでハナを切っているんだけれど、これは3400mでの話。
ダイヤモンドSの前半3Fは37.0、前半5Fは63.4。まー、遅い。内回り2000mの大阪杯でこの数字ではハナは切れない。
もし外がもっとテンの速い馬だったら、メイショウタバルはハナに行けなかった可能性もある。
お気づきだろうか。ここまで『タラレバ』が多いことに。メイショウタバルは一つボタンを掛け違えていただけで、もっと苦しい展開になっていた。
武さんからすればスタートを五分以上に出て、すんなりハナが理想だったはず。序盤脚を使いたくないところで無駄に脚を使ってしまった。
まー、立ち遅れたこと自体は大きなマイナスだが、その後に運があったと言える。2番手だったら展開面も大きく変わっていたかもしれない。
大外枠を引いたダービー馬
金曜の朝9時。大阪杯のメイショウタバルの立ち遅れくらいザワついたのが、クロワデュノールの大外枠だ。15分の1を引くとはな。まー、引く可能性はゼロではないがね。
これが馬場が荒れて外伸びだったらまだしも、こちらも前述したように内回りの内はまだ使える。そんな馬場の内回りの8枠。簡単な条件ではない。
内回りのJRA芝GIにおいて、最後に8枠から勝ったのは24年宝塚記念のブローザホーン。ただこの時は道悪で内が悪く、しかも13頭立ての12番。
良馬場の内回り芝GIで8枠から勝ったのは19年リスグラシュー宝塚記念が最後。この時も12頭立ての12番。
内回りGIで15番、16番からの勝利となると18年大阪杯のスワーヴリチャードまで遡る。内回り芝のGI自体が少ないとはいえ、内が持っている時の良馬場の8枠15番は悩ましい。
当然ジョッキーも色々考えただろう。前につけるプランも考えたとは思う。

スタート後。立ち遅れながらも青メイショウタバルがハナに行き、外の2番手に橙ファウストラーゼンがつけに行く形に。
桃クロワデュノールの北村友一くんもここで考えたと思う。橙ファウストラーゼンについていくか、緑デビットバローズや黄エコロディノスを行かせるか。

選択されたのは後者だった。橙ファウストラーゼンが2番手に行き、黄エコロディノスがある程度主張したこともあって、桃クロワデュノールが中団で脚を溜める形になった。
まー、メイショウタバルがある程度締めて逃げることは他のジョッキーも分かっていただろうから、断続的に流れる展開を追いかけたくないという思いもあったかもしれないね。

桃クロワデュノールにとって大きかったのは、右斜め前に赤ダノンデサイルがいたことだと思う。
そしてすぐに右斜め前というわけではなく、緑デビットバローズを挟んでいる点がポイントだ。
なぜかって、赤ダノンデサイルが今後外に出すためには緑デビットバローズを外に弾かないといけないだろう。
すると、緑デビットバローズの外にいる桃クロワデュノールは更に外に弾き出される可能性がある。北村友一くんとしては、それだけは避けたい。

向正面。赤ダノンデサイルは白ショウヘイの後ろ。対して桃クロワデュノールは緑デビットバローズの後ろ。
お待たせしましたここまで4530字、読者の皆様はこれを待っていたんだろう?言わなくても分かるぜ。
強い馬の後ろ、上手いジョッキーの後ろはベストポジションだと、回顧においてクラゲが耳に入ってイカになるくらい書いてきた。そう、タコイカポジションだ。
この場合、ダノンデサイルはこのレースでも人気だったショウヘイ川田の後ろだから、タコイカポジションに近かったと思う。
客観的に見て、ショウヘイとデビットバローズ、阪神の2000mでどっちが強いかって前者。
デビットバローズ岩田望来もかなり上手いが、あくまでこの時点でポジション利のあるなしを考えると、若干ダノンデサイルのほうが上だったと思う。

先ほど書いたように赤ダノンデサイルが外に出すには、緑デビットバローズを突破しなければいけない。
ダノンデサイル瑠星からすればデビットバローズには早く下がってほしいし、デビットの後ろにいる桃クロワデュノールからすると、デビットにはなるべく前で粘ってほしい。
その後ろにいる橙レーベンスティールもデビットバローズには頑張ってほしいだろうな。もし止まったら、その後ろのクロワとレーベンもポジションを下げてしまうわけだから。
この後ダノンデサイルとクロワデュノールのポジション差は明暗を分けるのだが、後述。
本当に天才に悔いはないのか
レジェンド武豊はとにかく上手い。たまに下手なんてご意見を見かけるが、何を言っているんだろうと思うな。下手だったらこんなに勝てない。
馬が強いから勝ったというご意見もたまに見るが、強い馬を勝たせるのは難しいことを理解されていないと思う。
そんな武さんの武器の一つが、精密な体内時計とペースキープだと思う。たまにあるよな、道中綺麗に同じようなラップを並べて逃げ切る時。
中盤を緩めてスローにした逃げは下級条件なら嵌まりやすくても、上級条件だと後ろに回収されやすい。
締めて、後ろに脚を使わせるのはある意味理にかなっているのだが、当然勇気もいる。馬の能力を正確に把握しないとできない逃げ方だ。
まー、ここまでメイショウタバルとコンビを組むこと4回、いつも武さんの思い通り逃げられているかというと、これはそうでもない。
国内では3度コンビを組んでいるが、武さんが納得のペースで逃げられたのは昨年の宝塚記念くらいだろう。
☆25年宝塚記念 阪神芝2200m
12.4-11.0-11.4-12.1-12.2-12.2-11.9-11.9-11.8-11.7-12.5
1000m通過 59.1
ご覧のように、道中大きく緩んでいるところがない。道中1F12秒前後を断続的に刻んで後ろを動かさない、まさに芸術的なラップだ。
時速60kmで走る生き物の上で、ずっと同じペースを刻めること自体離れ業。改めて見ても衝撃的なラップだ。ただあくまでこれは『上手くいった例』。
☆25年天皇賞秋 東京芝2000m
12.6-12.3-12.2-12.5-12.4-12.2-11.5-10.9-10.9-11.1
1000m通過 62.0
続く天皇賞は乗り難しかった。本来ならもっと締めたいだろうが、次が2400m以上になることは決まっていたから、次を見据えると飛ばして逃げられない。
宝塚記念と比べれば前半部分が緩んでいるのが分かる。上がり勝負が不利なのは武さんも承知の上だが、臨戦過程やコース適性が足りなかったと言っていいだろう。
☆25年有馬記念 中山芝2500m
6.9-11.0-11.8-12.2-12.1-12.6-12.4-12.0-12.6-12.3-11.9-11.6-12.1
そして迎えた有馬記念ではミステリーウェイとの兼ね合いも大変だった。締まるには締まったが、コーナー6つの2500mとなるともう少し息を入れたい。
昨年の宝塚記念を勝って以降、メイショウタバルの持ち味を完全に生かしきれたレースはないと言え、それだけに距離短縮で内回りの2000m、しかも内回りは内が走れるのは、武さんにとって久々にメイショウタバルの持ち味を生かせる状況だった。
☆26年大阪杯
12.4-11.0-11.5-11.7-11.5-12.1-11.9-11.8-11.6-12.1
34.9-35.5 1:57.6
1000m通過は58.1。GI昇格後の1000m通過タイムとしては、昨年の57.5についで2番目に速い。まー、ハイペースに分類される。
昨年とは馬場差も違うからな。換算すると同レベルのペースに近いかな。
☆23年大阪杯
12.4-10.9-12.2-12.0-11.4-11.7-11.5-11.4-11.4-12.5
35.5-35.3 1:57.4
1000m通過 58.9
※26年大阪杯
12.4-11.0-11.5-11.7-11.5-12.1-11.9-11.8-11.6-12.1
34.9-35.5 1:57.6
1000m通過 58.1
これは武さんがジャックドールで逃げ切った23年の大阪杯。標準より気持ち速いほうのペースだと思うが、序盤は今年よりも少しゆったり入れていた。
今回は前述したように立ち遅れてしまい、そこから巻き返して前半3F34.9で1000m通過58.1。
もちろんジャックドールとは馬のタイプも若干違うから一概に良し悪しを比較できないが、スタートを五分以上に切れていればもう少し楽なペースを刻めていた可能性はある。
まー、終わったことだ。仕方ない。決して出遅れたわけでもなく、致命的な立ち遅れというわけでもなかった。
それでも武さんはレース後「自分のやりたいレースはできた、悔いはない」と話しているが、本当に1ミリも悔いがないのか、気になるところだ。
まー、それでも後続心理を考慮したラップはさすがの一言。
※26年大阪杯
12.4-11.0-11.5-11.7-11.5-12.1-11.9-11.8-11.6-12.1
34.9-35.5 1:57.6
1000m通過 58.1
何度も出して、決して字数稼ぎではないのだが、中盤まで11.5-11.7-11.5とラップを締めている。

この画像は46秒地点だから大体残り1200m地点のもの。後ろは当然速いと思って、ついてこない。
実際青メイショウタバルと2番手橙ファウストラーゼンの距離が少し離れているだろう。

それが武さんは11.5-11.7-11.5と速いラップを刻んだ後に、残り1000mから12.1と、少しだけ息を入れている。
それがこの画像、残り800m手前のあたり。先程の残り1200m付近の画像と見比べてほしい。
青メイショウタバルと、橙ファウストラーゼンの距離が縮まっているだろうか。縮まっていないんだよな。
これは心理的に上手い。普通であれば、序盤の1、2コーナーで一旦息を入れる。
それを今回の武さんは中盤まで飛ばして、3コーナー付近で息を入れた。武さんが息を入れた3コーナーで後続は動くだろうか。
動かないんだよな。武さんが飛ばしてハイペースなのは後ろも分かっている。ハイペースなのに、2、3番手の馬が残り1000m近くあるところからタバルを捕まえに行くか?という話だ。
当然ながら行かない。早仕掛けを避ける。強力な2番手がいれば話は変わるが、ファウストラーゼンにそこまでの力はない。
つまり武さんは後ろとの差をキープしながら息を入れている。後ろの心理を考えたラップに唸る。
落鉄していなければ勝ったか、というと、それは疑問なところではあるな。落鉄が競走能力に影響を与えない可能性があるという研究もあるし、個体差もある。
落鉄したのも前脚のようだし、後ろが落ちるよりはまだ影響は軽め。相手はフラつきながら勝っていることもある。
君の前にタコはいるか
ここまで約7000字か。それなりにタイピングが早いマスクでも、ここまで来るのには少々時間を要する。
馬場について序盤触れていなければもっと早く終わるんだけどな。レースの内容に関係あるから外せない内容なんだよ。
思い返してみてくれ。馬場は外回りと違って、内回りのほうが内を使える。つまり勝負所から馬群がワイドに広がりにくい。ある程度固まる。

これは3コーナー。白ショウヘイが、前を走る黄エコロディノスを外から交わしにいった。
まー、若干掛かり気味だったし、普通に考えてエコロディノスの後ろで溜めていたら外から交わされ、馬群の中で何もできなくなってしまう。妥当な動きだ。逆タコイカポジションみたいなものだからな。
ここで問題になるのは赤ダノンデサイルの動き。当然ながら、前にいたショウヘイが外に出たら、自分の前は黄エコロディノスになる。
瑠星からすると上がっていったショウヘイの後ろにくっついていって、そのまま進路を確保したい。川田の後ろというタコイカポジションを確保し続けたい。

赤ダノンデサイルの瑠星がそうしたいのは、その外を走る緑デビットバローズと桃クロワデュノールのジョッキーたちも分かっている。
ショウヘイが外から上がっていったところで、桃クロワデュノール北村友一くんが外から少しずつ上がっていったのも、一種のブロッキングに近いと思うね。

実際桃クロワデュノールが外からポジションを上げたことで、緑デビットバローズも少しポジションを上げ、赤ダノンデサイルの進路がなくなってしまった。
前にいるのは黄エコロディノス。エコロが自力で動いてくれればいいが、残念ながらまだそこまでのスピードと力はない。
ダノンデサイルは難しいところだよ。そもそも引いたのは内枠。外枠発走でもしない限りこんな進路にはなる。

内が荒れて馬群が横に広がれば進路があるのだが、今の阪神はAコース最終週なのにまだ内が持っている分、みんな内をそこまで開けない。
黒丸で囲んだように、馬群が密集しているだろう。瑠星からすると、Aコース7週目なんだからもう少し広がってほしいところ。
阪神芝は10Rの心斎橋Sで1:19.7という速いタイムが出ていた。昨日あれだけ雨が降って馬場が緩んでいたのにも関わらず、このレベルの時計が出る。つまり馬場がいい。
まー、内が掘れてもっと馬群が横に広がるような馬場だと、今度は悪い内を通らされるという負の側面が生まれるのだがね。


締められている中で、赤ダノンデサイルの瑠星にもう一つ不利が発生する。黄エコロディノスが急に下がってきたんだよ。
2枚目の写真、赤ダノンデサイルの瑠星が内を見ているのが分かる。避けるには赤矢印のほう、つまりインに行くしかない。緑デビットバローズの望来も手綱を引っ張り気味だな。
突然減速されたら後ろは大変だよ。エコロディノス池添はゴール後下馬したが、巻き込むような大事故に繋がる可能性もあったシーンだ。

最初、赤ダノンデサイルがいたのは緑デビットバローズのところの赤矢印のところだ。
それが切り返して下がったことで、左側の赤矢印のほうのポジションに下がってしまっている。
GIの勝負所でこれは痛恨の不利だよ。ここまでも苦しいポジションだったが、これでダノンデサイルの勝ち筋はほぼなくなった。

赤ダノンデサイルがそこから上げていこうにも、白ショウヘイは道中力みもあって進んでいかず、右前は黒セイウンハーデスで、左前は緑デビットバローズ。
どちらもGIで自力で馬群をこじ開けてくれるレベルでは、まだない。逆タコイカポジションだよ。
タラレバになるが、仮に白ショウヘイのポジションにクロワデュノールがいれば、話はもう少し変わったかもしれないな。動いてくれて、その後ろのポジションが空いたかもしれない。
ただクロワデュノールはそもそも大外枠。ショウヘイのポジションにつけられるような状態ではなかった。
ダノンデサイルの前にタコはいなかった。完全なタコイカポジションにならなかったのもダノンデサイルにとっては痛かったと言える。
この点において、クロワデュノールの大外枠はいいほうに働いている。外から、自力で動けるからな。大外で距離ロスはあっても、内で閉じ込められるリスクがない。

直線に入っても、赤ダノンデサイルの前は白ショウヘイ。右前には黒セイウンハーデス。
どちらも一気に急加速できるタイプでもなく、瑠星は進路を確保しきれていない。これはもう仕方ない。
ネットの広い海ではダノンデサイルの騎乗が叩かれていた。これで叩かれるのはかわいそう。
そもそも右回りだと内にササる分、左回りのほうが乗りやすい馬。2000mも短い。休み明け。加えてテン乗り。簡単な馬ではない。
それこそスタート後1コーナー前でもう外に出していればこんな不利はなかったと思うが、それで外外を回されて負けたら叩かれていただろう。所詮、結果論でしかない。
中東情勢の悪化でドバイを使えず、それまで乗っていたジョッキーが不運もあって騎乗停止。大阪杯を使わざるを得なくなって内枠。今回は運がなさ過ぎたな。それに尽きる。
今後のローテが難しい。目黒記念にでも参戦しない限り、当分日本に適鞍がない。海外にしてもアメリカに行かない限り左回りも少ない。

ただ成長は感じた。赤ダノンデサイルの瑠星が直線で少し足を広げていることが分かるだろうか。
つまり重心を傾けて乗っているようにモタれ気味ではあるのだが、右回りで内にササる馬に対して、赤矢印で分かるように瑠星が左ムチを叩いている。
左ムチを叩けば馬は逆の右側、つまり内側に行く。いくら内隣に馬がいるとはいえ、右にササる馬には叩きにくい左ムチを使っているんだ。
直線で左ムチを叩きながらもある程度真っすぐ進んでいるのは成長。最後は少しだけ内にササる素振りはあったが、ササり癖が少しずつマシになっている。
着実な成長はうかがえるから、あとはもう運だね。まだこれからも期待できるんじゃないか。
瑠星が一部で叩かれていたが、難しい依頼だったと思うよ。負けたらやっぱり戸崎のほうが合うとか、下手って言われる。上手く乗っても元々強いと言われてしまうだろう。
正直この枠、臨戦過程、馬のタイプを考えると、本人は悔しいところもあると思うが、できることをしたという認識だ。
パドックを歩く昨年とは違う馬
他に負けた馬の話をしていこう。2着メイショウタバルはもうペースについてほとんど書いてしまったから、そちらは割愛。
落鉄していなかったら勝っていたかというと、そうは思わない。後述するがクロワデュノールが外を回り続けて、最後蛇行しながら勝っていることを踏まえると、着差以上に差がある。
今回に関してはやれることはやった感じもあり、それがつまり武さんのレース後の「自分のやりたいレースはできた、悔いのないレースはできた」というコメントに繋がると思う。
Xのパドック評にも書いたように、今回の仕上がりは本当に良かった。有馬記念より数段いい。天皇賞よりも全然良かった。
いい仕上がりで、合う内回り2000で2着、これはもうクロワデュノールを褒めるしかない。
宝塚は昨年勝っているようにレースを作りやすい。宝塚が2週目に移動したことで極端に内が荒れる可能性も減ったし、同型が少なければチャンス。
こういう馬のために内回り2000mのGIはあるべきだと思うんだよな。得意レンジが結構狭いだけに、少ないチャンスを逃したくないところだ。

4着だった緑タガノデュードは健闘だろう。桃クロワデュノール、その後ろの橙レーベンスティールの後ろという、タコイカラインに乗ることができたのも好走要因の一つ。
加えてメイショウタバルがある程度締めてペースが流れたのも良かった。展開利、ポジション利もある。
正直それでいて不利のあったダノンデサイルに先着された時点で、現状の力量差もあったとは思う。
ただそれにしても力をつけているのは間違いない。父親のヤマカツエースも4歳冬から更に一段階強くなっていた。
似たような成長曲線を辿っている気配があり、今後も父が良かったレースで注目。右回りの一周2000重賞はマークしたいな。
5着セイウンハーデスも健闘。2走前に飛ばして逃げてちょっと馬がおかしくなりかけていたが、控えて結果を出せたのは収穫だろう。
交わされたらやめた中山記念などを考えると、本来外から交わされる形を嫌がりそうで、ジョッキーの言うように外枠向きの可能性はある。
東京のワンターンは上手い。あとは馬場と枠次第か。安田は速い時は本当に速い。また違う適性が問われてくるだけに、条件による。
6着レーベンスティールも頑張ったほうだと思うけどな。ハイペースの阪神2000で、クロワデュノールについていって外々を回って突き抜けるほどの力がなかったということだろう。不利どうこうの前に最後止まっていた。
直線クロワデュノールのフラつきで影響を受けていないわけではないが、そもそも脚色が良くなかったから、クロワがフラついても制裁が掛かっていない。
パドックでもかなりうるさかったように、テンション面の調整も難しい馬。GIとなるとかなり色々揃う必要があるな。いい馬なんだが。
2200mでもオールカマーを勝っているとはいえ、それも1年半前の話。今はマイル~1800くらいの馬という認識で捉えたほうがいいのかもしれない。
10着ショウヘイは力んでしまった。この馬もレーベンスティール同様、レースに合わせるのが難しい馬。
レースセンスがいいから簡単に乗っているように見えて、返し馬からゲートへの持っていき方も大変そうで、ハイペースの2000で力まれたら厳しいね。
馬体は良かったし、更にパンプアップしている。あの気性だと1800くらいでも、とは思うのだが、現状マイル寄りの馬体ではなく見える。買うタイミングが難しい。
気性面が成長すればいい馬になると思うんだよ。馬体は良くなっている。精神面が身体面に追い付くのを待ちたい。
勝ったクロワデュノールの話をしよう。
まずは直線の動きについて。先程レーベンスティールのくだりで触れたが、直線でフラフラしてしまっていた。


桃クロワデュノールの北村友一くんが直線で左ムチを叩いたら、馬が一気に内側に行ってしまった。
橙レーベンスティールの位置関係からも、クロワデュノールが内に動いているのが分かる。

当然内に行ってしまった以上、北村友一くんはムチを持ち換えて今度は右からムチを叩く。
すると桃クロワデュノールは、今度は外側に流れていってしまった。ムチを叩いたほうとは逆のほうに動くのは当然として、それにしてもヨレ過ぎ。


ご覧のように、桃クロワデュノールが外に行き過ぎて、橙レーベンスティールの進路に被ってしまっている。
これだけ見ると大きな不利で、過怠金レベルなのだが、制裁はゼロ。レーベンスティールのルメールがレース後斜行に触れているわけでもなく、これはもう脚色がなかった分の裁定なんだろう。
ムチでここまで左右にフラフラするんだから、見ての通り馬に余力が残っていない。
実際レース後、北村友一くんも「休み明けで直線余力がなくなってフラついていた」と話している。
それでもマイペースで逃げたメイショウタバルを差し切るんだから凄い。先程着差以上に差があると書いたが、これもそう考える要因の一つだ。
そもそも大外枠から内に入れるところがなく、ダノンデサイル対策で外から早めにブロックにも行っている。かなり厳しい形の競馬。見た目以上に強い。
早めにブロックに行けるように、コーナーでも動けるのがこの馬のいいところ。直線ヨーイドンでは若干分が悪いが、以前から書いているように本当にレースが上手い。
そして今回目立っていたのは馬体。レース当日の体重は前走比+10kgの522kg。新馬が480kgだったから、そこから42kg増えていることになる。
「本当に違う馬になっている」とは聞いていたが、実際パドックに出てきたのは以前のクロワデュノールとはまるで違う馬。
以前はむしろもっと体重が欲しかったんだよ。500kg近いとは思えない線の細さもあって、いかにも歳を重ねて良くなるキタサンブラックという感じ。これがキタサンブラックの成長力。
それでも2歳GIを勝ってしまうのは能力が高いが故。そんな身体能力、心肺機能に、ようやく身体がついてきた。
今まではエンジンの良さである程度やってきたような馬。シャーシが完成されてきて、本当にいい馬になってきた。
これはXのパドック評でも触れたが、ちょっと太かったんだよな。レース後、陣営もその点に言及していた。
それもあって陣営が敢行したのがレース当日の早朝の坂路入れだ。日曜朝の5時あたりに坂路を軽く上がっている。
4F73秒だからジョギングに近いレベル。とはいえ、なかなか当日坂路を上がってGIを勝つ馬はいない。
「やや太いと感じたから」という理由のようだが、そんな状態でGIを勝ってしまったと言えるし、レース当日に坂路に入れられるくらい身体が完成してきたとも言える。
3200については何とも言い難いが、陣営の言うように使って更に良くなる。それはダービーの仕上がりで確認済。叩いた次が楽しみだね。
レース前、ジョッキー関連で色々揉めたことも話題になった。まー、これは大阪杯の回顧であって、レース前のジョッキーのドタバタについては割愛する。
皐月賞の2着に関しては展開的にジョッキーも仕方ない動きだったと思う。ただ凱旋門賞の乗り方は下ろされても仕方ないところもあった。
そもそもジョッキーはオーナーサイドが決めるものだと理解しているし、日本でもお馴染みのあのイタリア人が乗ったら更に違う味が出て、より数字が上がってくる可能性もあると見ている。
ただ一つ言えるのは、これだけのレベルの馬だ、違うところで揉めている場合ではないだろう。
なかなかこのレベルの馬は出てこない。能力だけで走っていた昨年とは違う馬になってきた。
今後関係各所全員のベクトルが同じ方向を向くことを祈る。
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