ARR130億円の舞台裏。かつて「お願い営業」に奔走していた私が、PartnerPropで実現したいこと
本投稿は #パートナーマーケティングnoteリレー の一環として行われており、5日目を担当させていただきます!
はじめまして!株式会社パートナープロップ アライアンス責任者の名倉と申します。
少し自己紹介をさせて頂きますと、キャリア26年でずっとICTベンダー側におりまして、日系コンピューターメーカーからキャリアが始まり、CiscoSystemsなどの外資系ベンダーでキャリア前半期は奔走しておりました。
その後、LINE WORKS社にてサービスリリース時から参画し、パートナーのリクルートや育成、販路づくりを通じて営業執行役員として事業成長を支えてきました。現在はパートナープロップにてアライアンス部門を管掌しています。
現場での試行錯誤や失敗も含め、「なぜパートナービジネスはうまくいかないのか」「どうすれば再現性を持たせられるのか」といった視点を、このnoteでは等身大で綴っていきたいと思います。
はじめに:なぜ、多くの企業がパートナービジネスで苦戦するのか
なぜ、多くの企業が良い製品を持ちながら、パートナービジネスで苦戦するのでしょうか。
その原因は、、「契約すればパートナーは勝手に売ってくれる」という誤解と、「立ち上げには相応の時間(半年〜1年単位)がかかる」という時間軸への認識不足、「アナログ管理(Excelと電話)」の限界にあります。
立ち上げ期に必要な「Give」の欠如、拡大期に訪れる「可視化の壁」、そして業界特有の「お作法」や「暗黙のルール」。これらを知ってるかどうかは非常に大事かと思います。
LINE WORKS社はARR100億円到達時におよそ95%がパートナー様経由での売上でしたが、決して最初から順風満帆だったわけではなく、特に最初の1年は挫折と試行錯誤の連続。
今でこそTop3以内の売上を誇るパートナー様との契約に至るまでにも丸1年の時間を要したり、別のパートナー様では現場の部長さんは『これは絶対売れるよ!』と確信してくださっているのに、上層部の『実績がないものはうちは扱えないよ』という壁に跳ね返されることも度々。
本noteでは、私がLINE WORKS時代に直面したこれらの「泥臭い現実」と、その経験から導き出した「パートナービジネスの勝ち筋」についてお伝えします。
1. 「お願い営業」では売れない。最初は「Give」から始まった
「パートナービジネス」といえば、最初は代理店に「お願い」して売ってもらうものだと思っている方が多いですが、立ち上げ初期はそれほど甘いものではありません。
まだ製品の知名度も実績もなかった頃、パートナー企業を回っても、最初はなかなか動いてくれませんし、リソースも割いてはくれません。そこで決断したことは、「ベンダーとして自らの退路を断ち、パートナーへの『本気』を証明すること」でした。
具体的には、エンドユーザー様との「請求書払い(掛け払い)」という選択肢を、自社から一切排除したのです。
通常、スタートアップ企業は直販での売上を優先したがるものです。しかし、請求書払いを希望されるすべてのお客様を、パートナー様経由の契約へと一本化しました。(例外はオンラインでのクレカ払いのみ)
これは、自社の直接利益を一時的に手放す先行投資を意味します。しかし、この「徹底したパートナー優先」の姿勢こそが、懐疑的だったパートナー企業の皆様に「WorksMobile(当時社名)は本気で自分たちに賭けてくれている」と確信させる一手となりました。
「お願い」して売ってもらうのではなく、まずはベンダー側が最大級の「Give」を行い、信頼という土台を築き上げる。
それが、結果として爆発的な普及への第一歩となったのです。
冒頭から極端な例を出してしまいましたが、実はこうした「パートナーを介さない直販をあえて行わない」という仕組みやルールは、外資系テックベンダーの世界では割と一般的な手法でもあります。
たとえば、すべての案件を必ずMD(総合一次代理店/ディストリビューター)経由に集約し、自社で直接取引を完結させないモデルなどがその典型です。ちなみに過去私が在籍した米系外資ベンダー3社はたまたまかもしれませんが全てこのモデルでした。ただ3社ともARR per Employee(従業員一人当たりARR)では1億円を超えていました。
一見、自社の利益効率を下げるように見えるこの「縛り」こそが、実はパートナーエコシステムを強固にし、結果としてマーケットシェアを最大化させるための、洗練された戦略的定石なのです。
しかし、単に「仕組み」を整えるだけでは、まだ不十分です。信頼の土台の上に、具体的な「成功体験」という果実を乗せる必要がありました。
それは「自ら直販(ハイタッチ)で案件を作り、その案件をパートナーに紹介(トスアップ)し一緒にCloseする」 ことでした。
直販のように自分でお客様を開拓し、「実はこういう案件があります。これを御社と一緒にやりたいんです」と、パートナーに案件ごと持ち込んで交渉する。 パートナー側からすれば、すでに案件があるので必ず話を聞いてくれますし、初回から役員層が出てきてくれることも多くあります。前述の実績がないとダメだと断られた役員さんにもこの手で良好な関係を築けています。
また、既に案件化していることでサービスに対するお客様の好意的な反応をパートナーに直接体験してもらうこともでき、その成功体験を社内の役員会に持ち帰ってくれることもありました。
そうしてまず1社の実績を作り、その過程で発生する受発注処理やサポート体制といったオペレーションまでも同時に整えてもらう。「Give」から入り、協業のきっかけを作りにいったわけです。
2. 経験から導き出した「勝利の方程式」
立ち上げ初期の泥臭い経験の中で見つけた「法則」があります。 いきなりパートナー様の会社全体を動かそうとしても無理です。なので、まずは各支社のたった1人の営業担当者に火をつけることにこだわりました。
当時KPIとして追っていたのは、1人のパートナーの営業さんが、まずは3件の案件を作ること。
なぜ3件か。1件目は「偶然」、たまたま顧客指名買いだったり運良く決まることがあります。2件目は「再現」、1回目を踏まえて自力で動いた証拠とも言えます。そして3件目は「必然」、つまりその人の中に「売り方の型」が定着したと言えるからです。
そして、そんな戦友を各支社に「13人」集めること、が次の目標。
1クォーター=13週。毎週どこかで必ず歓喜の報告が上がる……そんな「持続的な状態」を理論上も維持するために、特に1年目はこの数字を追いかけていました。
「あの人が売れてるなら」と隣の人に火がつき、それが部署へ、やがては支店全体へと広がっていきます。その次に必ず起こるのは「あの支店、あの支社には負けたくない」です。
組織図には決して描かれていない「パートナー企業様の中の支社同士のライバル心」。これ、大手のパートナー様は例外なく存在します。または誰と話をすればxx支社長にアプローチできるのか。これを知っているか、聞けているかで支社アプローチの順序と時間軸が変わります。パートナービジネスがロールプレイングゲームといわれる所以です。
まとめると、いきなり全社を動かそうとするのではなく、「1人の熱量」を上げ、それをどういう順番で伝播させるか。 これこそが、パートナービジネスを成功させるための重要なステップです。
この次のステップとしては、「パートナー企業の営業評価項目に自社商材の販売目標を加えてもらう」というのがある意味究極形であるのですが、これはまた別の機会に話します。
3. 「全拠点の営業担当者」をリスト化したExcel地獄
さて、徐々に案件が増えてくると、次にぶつかった壁が「可視化」でした。 売れているパートナーは把握できても、「誰が」「どうやって」「なぜ」売れているのか、解像度をあげきれない。これでは戦略に再現性を持たせることができません。
当時、私はどうしていたかと言うと、「パートナー企業の全営業担当者を支店単位でリスト化し、Excelで管理」していました。当時は、全国に支店を持つパートナーとの協業に注力しており、全支店ごとに所属している営業担当者を全部入力し、支店ごとの提案率をKPIにし算出していたわけです。
なお、この手法自体は煩雑ではありましたが、次の打ち手を分析するためには今振り返っても間違っていなかったと確信しています、実際にPartnerPropの中でもダッシュボード機能を使うことで支店単位、個人レベルでの提案率などを出して成果を上げられているお客様も多くいらっしゃいます。
とはいえ当時は出張を重ね、足繁く支店に通い飲み会を企画し、役員秘書さんとも仲良くなり、情報を常にアップデートする。 アナログ極まりない方法ですが、当時はそうやって「個人の顔」が見えるまで解像度を上げなければ、数字を作ることはできませんでした。
しかし、事業が拡大するにつれて、この「力技」のやり方にも物理的に限界がきました。まだ立ち上げ期なのでメンバーリソースにもすぐに限界が来ます。
「この案件、どうなってたっけ?」「10分後に商談だから最新の資料、至急ください!」 商談中にも鳴り止まない電話、埋もれていくメール、そしてどれが最新版かわからないスプレッドシート。バッティング事故(代理店同士の案件重複)も起きてもおかしくない状況。
元よりExcel管理は属人化しやすい手法なので、情報のアップデート頻度や精度にメンバー間で「濃淡」が出始め、いつしか全体像を正しく捉えることは不可能になっていました。 かつては「気合いと根性」で無理やり抑え込んでいた綻(ほころ)びが、スケールの拡大とともに、組織の成長を阻む致命的な機能不全へと変わっていったのです。
4. 「営業」ではなく「マーケティング」だと気づいた瞬間
私がパートナービジネスに魅了され続けている理由。それは、直販(ハイタッチ)では決して味わえない、独特の高揚感――脳を突き抜けるようなドーパミンが出る瞬間があるからです。
直販の営業がもたらすのは、「このビッグディールを獲ったぞ!!」という「大木を切り倒した」達成感です。
もちろん、それは営業として得難い喜びであり、私も30代半ばまでは、外資特有の過酷なウィークリー・フォーキャストに耐え、それを原動力に数字を追いかけていました。
しかし、パートナービジネスの醍醐味はまた少し違います。 自分が仕掛けた施策や仕組みが歯車のように噛み合い、「あそこのサービス、驚くほど売れるらしい」という熱狂がパートナーの間に伝播していく。その連鎖がある臨界点を超えたとき、まるで「確変」に入ったかのように、こちらの想像を遥かに超えるスピードで数字が跳ね上がる瞬間が訪れます。自分が支援している全国のパートナー様の手によって次々と受注が決まっていく。この「面」で市場が動く感覚、「森を開拓する醍醐味」こそが、この仕事の真髄です。
「波」が起き、連鎖反応が始まるー「これは、営業(セールス)ではない。マーケティングだ」と、気づきました。
個別に頭を下げて回る「お願い営業」にはどうしても限界があります。しかし、市場全体に「売れる仕組み」と「売りたくなる動機」を仕掛けることができれば、1人の営業が1000人の力を発揮することができます。
5. PartnerPropが目指す「パートナーマーケティング」の世界
私がPartnerPropに参画した理由は、この「パートナーマーケティング」を誰もが再現性をもって実践できる「仕組み(プラットフォーム)」を作りたかったからです。
多くの企業は、パートナービジネスを「気合いと根性」で回そうとして疲弊しています。かつての私がExcelや電話、飲み会で戦っていたように。誤解なきよう添えると、出張や会食を通じたウェットな関係構築は、ビジネスの節目において極めて重要な役割を果たします。これらは、今も昔も数値化できない「関係の質」を決定づけるものだからです。
例えば、地方出張の際にパートナー様の社用車で移動する「同行」のひととき。私はこの往復1時間の車中では、あえて案件の進捗確認などはしません。 代わりに、その営業担当者が今何に悩んでいるか、何をもって評価されるのか、あるいは支店全体の空気感や、他カテゴリーの商材だと何に注力されているのかといった「生の情報」です。私からも他支社での成功事例を共有するなど、車中は極めて濃密な情報交換の場となります。
この「案件以外の会話」から得られる多角的な視点こそが、実は次の戦略を立てる上での大きなヒントになるのです。ちなみに競合製品の動向だけでなく一見何のバッティングもない他カテゴリーの注力商材の動向も大事です。パートナーさんの時間や工数も有限ですからマインドシェアの奪い合いという意味ではウォッチしていなければいけません。同時期にどこのベンダーのキャンペーンが走っているか、とかも把握している必要があります。
ただ、こうした「人間にしかできない深い対話」に時間を使うためには、それ以外の業務を徹底的に効率化し、同時に可視化しておかなければなりません。
しかし、適切なツール(PRM)と戦略があれば、この業務を「科学」することができます。
① 情報の可視化:誰がどこで動いているかをデータで捉える
「誰が資料を見たか」「誰が案件を作ったか」をリアルタイムなデータとして捉えることで、ファクトベースで支援先を決めることが可能になるのです。
② テックタッチによる育成:ポータルを通じて、全国の営業担当者に一斉に最新のナレッジを公平に届ける
資料はメールで送るのではなく、ポータルに常に最新のものがある状態を作る。それだけで、パートナー様は好きな時に学習し、自己解決できるようになります。
③ エコシステムの構築:企業間の壁を超えて、共創の「波」を起こす
最も重要なのがこれです。
パートナーチャネルに対して「売れる仕組み」や「動機(インセンティブ)」を仕掛け、彼らが自律的に動く環境(エコシステム)を作ります。
その結果として生まれる「市場の景色が変わるような大きなトレンド(波)」は、まさに自社とパートナーで起こす「共創の波」。これこそが、私たちが目指すエコシステムの姿です。
おわりに
良い製品を持っているにもかかわらず、多くの企業が「売り方」の壁にぶつかっています。リソースが限られているからこそ、外部の仲間(パートナー)と組むべきですが、その「戦略」や業界特有の「お作法」を知らないために失敗しているケースがあまりに多いと感じています。
今回は文字数の関係ですべては書ききれませんでしたが、例えば以下のようなテーマは、多くの企業が頭を悩ませるポイントではないでしょうか。
SaaS企業における「契約更新時の商流変更」は認めるべきか?
これは事業フェーズやその時の最優先事項によって答えが変わります。
パターンも大きく3パターンあって、どれが正解かというのは一概には言えませんが私は3パターン全て経験したのでそれぞれProsConsはお伝えできます。
あるいは、
価格改定(値上げも値下げも)の際、パートナー様を離反させず「味方」につけるお作法とは?
一定事業が軌道に乗り、パートナービジネスが成熟したフェーズになるとこのような悩みも出てくるかもしれません。
こうした「現場のリアルな解」についても、今後また別の機会にお伝えできればと思います。
さて、最後になりますが、かつての私のようにメールやExcelでの管理に忙殺され、本来やるべき「人との関係構築」に時間を使えていない担当者がまだたくさんいます。
私は、PRMという「ツール」と、これまでの経験に基づいた「コンサルティング」を通じて、この「もったいない」状況を打破したいと考えています。
重ねて誤解なきよう添えると「泥臭い」関係構築が不要になるわけではありません。むしろ、それを支える強固な「仕組み」があるからこそ、もっと早く、もっと遠くまで行けるのです。
「お願い営業」から脱却し、データとテクノロジーでパートナービジネスを科学する。
PartnerPropは、そのためのエンジンになります。ぜひ一緒に、日本のパートナービジネスを次のステージへと進化させていきましょう。
