マイヨーロピアンダイアリー2009#20
自由の中で見つけたもの
最終章🎨フランス編:南仏とパリ
ニース〜マティスの色に抱かれて〜
海の風を感じながら、私はマティスに会いにニースを訪れた。
ロザリオ礼拝堂に足を踏み入れると、晩年のマティスが「肘掛け椅子のような作品」を目指したという言葉が、優しく空間に染み込んでいた。自分を貫いた彼の姿勢に、静かに感動した。
夜はビーチで久しぶりに羽を伸ばす。波の音と共に過ぎていく平凡な時間が、何よりも贅沢に思えた。
エクス=アン=プロヴァンス〜セザンヌの風の中で〜
次に向かったのは、セザンヌの故郷。私は彼が通った道、描いた山、見つめ続けたリンゴを追いかけた。
アトリエに立ち、彼が格闘したモチーフたちを前に、自分がなぜ描き続けてこられたのか、その答えがはっきりした。
「私はセザンヌの思想に出会ったことで、自分を育てることができた。」
この旅の中で、最も自分と向き合った時間だった。

マルセイユ〜通過の笑劇〜
マルセイユでは乗り継ぎのため列車を使っただけだったが、思わぬ出来事が。
列車内で向かいに座った紳士に「EAT?」と声をかけられる。どうやら私は物乞いに見えたらしい。鏡を見直すいい機会だった(苦笑)。

アルル〜ゴッホの残像と出会いと別れ〜
ローマ時代の遺構が残る街で、ゴッホのカフェを訪ねた。
宿ではSくんという若者と出会うが、初ドミトリーの彼は騒がしく、他の宿泊者から注意を受けていた。
「コイツらってわがままですよね。」と呟いたSくんに、私は戸惑った。おそらく、もう会うことはないだろうと思った。
翌日、明るいフランス人女性たちとの出会いがあり、そのギャップに少し救われた。
パリ〜自由という空気の中で〜
ついに最終目的地、パリへ。
ルーブル、オルセー、ポンピドゥーセンター…。芸術の宝庫で、自分が芸術家であることを実感できる場所だった。
街そのものがキャンバスのようで、「人間は自由なんだ」と、心から感じた。
縛られすぎてきた私たち日本人には、信じられないほどの“自分らしさ”が許される街。私はたった一週間で、新しい自分に出会っていた。
旅の終わりには、さまざまな出会いがあった。
ポーランドのアレックス、アメリカのジャーナリスト・ジェシカ(彼女が撮ってくれたポートレートは、生涯の宝物)、アルゼンチンのガブリエラ、ブラジルのアンナ、スペインのエスクデー…
彼らとアレックスと共に夜通し飲み、笑い、語り合った。最後はアレックスが酔いつぶれてしまったのも、愛すべき旅の一コマだ。

🎒 Epilogue:「また、きっとどこかで」
この旅で私は、アートをめぐる以上の何かを見つけた。
言葉にできない感情、違いを超えるつながり、自分自身との対話。
ルーマニアでの恐喝事件、ローマでのスリ事件――予定より早く帰国せざるを得なかったけれど、
私は最後まで、自分の目と足でこの世界を歩いた。
「また必ず戻ってこよう」
そう心に深く刻みながら、パリの空を見上げた。
終わり

