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経理は「数字を合わせる仕事」ではない──“説明できる状態”を作る仕事である

経理という仕事に対して、世の中にはあるイメージがある。

数字を入力する。
伝票を処理する。
請求書を確認する。
最後に数字を合わせる。

もちろん、それも間違いではない。

実際、数字は合わせないといけない。
1円でもズレれば確認する。
月次も決算も締切がある。

ただ、経理の本質はそこだけではないと思う。

経理は、単に数字を合わせる仕事ではない。

むしろ本当に大事なのは、

「なぜその数字になったのかを、後から説明できる状態にしておくこと」

だと思う。

数字は「合っているだけ」では足りない

たとえば、売上が1,000万円だったとする。

では、その1,000万円はどう作られたのか。

どの取引なのか。
いつ計上したのか。
証憑はあるのか。
契約内容はどうなっているのか。
なぜその勘定科目なのか。
消費税区分は正しいのか。

ここまで説明できて、初めて「合っている」と言える。

逆に言えば、

数字だけ合っていても、根拠が分からない状態はかなり危ない。

経理では、
「たまたま合った」
にはあまり意味がない。

経理は「後から確認される仕事」

ここが経理の特徴だと思う。

営業は、売上を作る。
企画は、新しい施策を考える。
現場は、商品やサービスを動かす。

一方で経理は、
後から見返される仕事
だ。

上司が確認する。
監査法人が確認する。
税務署が確認する。
金融機関が見る。
場合によっては数年後に確認される。

つまり経理は、

「今この瞬間に処理が終わればOK」

ではない。

数か月後。
数年後。
担当者が変わった後。

そのタイミングでも、

「なぜこの処理なのか」

を説明できる必要がある。

ここがかなり重要になる。

証憑は「保存義務」だけではない

経理をやると、証憑保存という言葉がよく出てくる。

請求書。
領収書。
契約書。
発注書。
納品書。

こういうものだ。

最初は、「法律上保存しないといけないから保管するもの」くらいに見えやすい。

でも実際には、証憑はもっと重要だ。

証憑は、

「この処理には根拠があります」

という証明になる。

つまり経理における証憑は、単なる紙ではない。

数字の裏側を支える材料だ。

経理の数字は、証憑があって初めて強くなる。

逆に、証憑がない数字はかなり不安定だ。

「なぜこの科目なのか」を説明できるか

経理では、勘定科目を選ぶ場面が多い。

消耗品費なのか。
修繕費なのか。
広告宣伝費なのか。
雑費なのか。

処理そのものは入力すれば終わる。

でも重要なのは、

なぜその科目にしたのか

を説明できるかだ。

特に微妙な取引ほど、この感覚が大事になる。

金額が大きい。
継続性がある。
税務に影響する。
判断が分かれる。

こういうものは、「なんとなく」で処理すると後で苦しくなる。

経理は、入力作業というより、判断の積み重ねに近い。

月次決算が早い会社は、「説明できる状態」が早い

経理でよく言われるのが、月次決算の早さだ。

月次が早い会社は強い。
これはかなり本当だと思う。

ただ、ここで大事なのは、

単に締め作業が速いことではない。

早く数字を出せる会社は、

数字の根拠整理も早い

ことが多い。

証憑が整っている。
業務フローが整理されている。
確認ポイントが決まっている。
誰が何を承認するかが明確。

つまり、

「説明できる状態」

を作る仕組みができている。

逆に月次が遅い会社は、

数字そのものより、

「なぜこうなっているのか分からない」

で止まりやすい。

経理で本当に怖いのは、「分からないけど前任者がやっていた」

経理では、かなり危ない言葉がある。

「前からこうやってます」

これ。

もちろん、前年踏襲が必要な場面もある。

でも、

なぜそう処理しているのか分からない。
でも前任者がやっていた。
だから同じようにやる。

これはかなり危険だ。

経理は、処理が継続される仕事だ。

一度入った処理が、何年も続くこともある。

だから最初の判断理由が消えると、後からかなり困る。

特に担当者変更時は危ない。

「あの人しか分からない」

状態になる。

これは会社にとってもリスクだ。

会計監査や税務調査で見られるのは「説明」

監査や税務調査でも、本当に見られているのは説明だ。

数字だけではない。

なぜこの処理なのか。
なぜこのタイミングなのか。
なぜこの科目なのか。
なぜこの契約形態なのか。

ここを説明する。

つまり経理は、

「説明責任」の仕事

でもある。

だから、経理で強い人は、

単に入力が速い人ではない。

根拠を整理できる人。
過去の流れを追える人。
資料を残せる人。
判断理由を言語化できる人。

こういう人だ。

AI時代でも残るのは「説明」

最近はAIで経理がなくなるのでは、という話もある。

たしかに、入力作業や単純処理はかなり自動化されると思う。

請求書読込。
仕訳提案。
経費精算。
データ整理。

このあたりはどんどん進む。

ただ、その一方で、

「なぜその処理なのか」

を説明する仕事は残る。

AIは候補を出せる。
でも責任を取るわけではない。

最終的に、

その処理で問題ないか。
例外はないか。
税務リスクはないか。
監査で説明できるか。

ここは人間が見る必要がある。

つまりAI時代でも、

説明できる人

の価値はかなり残ると思う。

「数字に強い人」より、「数字の背景を見られる人」

経理に興味を持つと、

数字に強くなりたい。
計算に強くなりたい。

と思う人は多い。

もちろん大事だ。

ただ実際の経理では、

数字そのものより、
数字の背景を見る力
の方が重要なことが多い。

なぜ売上が増えたのか。
なぜ利益率が下がったのか。
なぜこの費用が急増しているのか。
なぜ資金繰りが悪化しているのか。

数字だけ見ても、理由は分からない。

背景を見る必要がある。

つまり経理は、

「数字を作る仕事」

というより、

「会社の動きを数字で説明する仕事」

に近い。

経理は地味だけど、「会社の記録」を作っている

経理の仕事は派手ではない。

表彰されることも少ない。
売上を直接作るわけでもない。
目立ちにくい。

でも、会社の記録を作っている。

どんな取引をしたのか。
どこにお金を使ったのか。
どれくらい利益が出たのか。
どんな判断をしたのか。

これを残している。

つまり経理は、会社の「過去」を整理する仕事でもある。

そして、その整理された過去が、

経営判断。
税務申告。
監査。
融資。
投資判断。

全部につながる。

かなり重要だ。

地味だけど。

本当に地味だけど。

経理はだいたい、「ミスがないと誰も褒めないのに、ミスすると急に全員見てくる」という、不思議な職業でもある。人類の評価システム、だいぶ偏っている。

結論:経理は「説明可能性」を作る仕事

経理は、数字を合わせる仕事ではない。

もちろん数字は正しくないといけない。
でも、本当に大事なのは、

その数字を後から説明できること。

なぜその処理なのか。
どんな根拠があるのか。
誰が承認したのか。
どの証憑に基づいているのか。

これを整理し、残し、説明できる状態にする。

それが経理の本質に近いと思う。

だから経理は、

単なる入力作業ではない。
単なる事務でもない。

会社の活動を、
「後から見ても分かる形」に翻訳して残す仕事だ。

数字を作るだけでは足りない。

説明できて、初めてその数字は意味を持つ。


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