ファイナンス理論で理解するリスクの数値化方法
物事を判断する際、「リスクが高い」「リスクが低い」といった言葉をよく耳にします。
しかし、そのリスクとは具体的に何を意味し、どのように数値化されているのでしょうか。
本記事では、ファイナンス理論に基づき、リスクを数値化するための3つの手順を解説します。
この手順を覚えると、意思決定の際、リスクを客観的に評価できます。
リスクとは何か
まず、ファイナンスにおけるリスクの定義を確認しましょう。
一般的には「リスク」というと、損失や悪い結果を想像しがちです。
しかし、ファイナンスでのリスクとは「収益の不確実性」、つまり期待値からの上下のブレを指します。
ファイナンスでは期待以上の良い結果も、期待を下回る悪い結果も同様にリスクと捉えます。
この上下のブレをそれぞれアップサイドリスク、ダウンサイドリスクと呼びます。
• アップサイドリスク:期待以上の良い結果
• ダウンサイドリスク:期待を下回る悪い結果
これらのブレの大きさがリスクであり、その幅を数値化すれば、意思決定に役立てることができます。
具体例で考えるリスクの大きさ
では、具体例で考えてみましょう。
もし、あなたが次の3つの運用商品を選べるとして、1年限りの運用をする場合を考えてみましょう。
運用A:好景気でも不況でも収益率は1%
運用B:好景気なら3%、不況で1%
運用C:好景気なら7%、不況で2%
運用A:リスクフリーの投資
運用Aは、景気に関わらず収益率が一定です。このように収益に不確実性がない投資を、ファイナンス理論では「リスクフリー」と呼びます。
運用Bと運用C:リスクのある投資
運用Bと運用Cは、景気によって収益率が変動します。この変動がリスクであり、不確実性の幅が大きいほどリスクは大きくなります。
• 運用Bの不確実性の幅:3% - 1% = 2%
• 運用Cの不確実性の幅:7% - 2% = 5%
したがって、運用Cの方が運用Bより「リスクが高い」と言えます。
現実世界でのリスク評価
現実では、将来の収益率を正確に知ることはできません。
そのため、過去のデータを基にリスクを推定します。
これは統計学の「標本抽出(sampling)」の考え方を利用します。
標本抽出によるリスクの推定
例えば、パソコンを起動しても数回に一度は立ち上がらない場合、パソコンが壊れているのではないかと疑っているとします。
ただ、パソコンの中を確認することができない場合、実際にパソコンの立ち上げを100回試みて、正常に立ち上がらない回数が50回を大きく超える、といった事象が分かれば、「このパソコンは壊れているのではないか」と推測ができます。
統計学では、このような実際の作業を「標本抽出(sampling)」と呼びます。
これは、実態を調べることが難しい場合、類推するための有効な手法です。
同様に、前述の運用A〜Cについても、実際は未来の収益は誰にも分かりません。
そのため、「類似の運用が過去にどのような結果であったか?」を、標本抽出(sampling)の結果と考えて、そのリスクを推定します。
リスクを数値化する手順
では、リスクを数値化する方法を説明します。
基本的には以下の手順になります。
手順1:平均との差を計算
手順2:差の2乗を計算
手順3:差の2乗の平均を求める(分散)
リスクを客観的に評価するには「分散」という統計学の概念を用います。
では、例をもとに計算してみます。
手順1:平均との差を計算
過去の実績数値が、下の表の運用商品X,Y,Zがあったとします。

まず、運用X,Y,Zの12ヶ月間の平均値を計算します。
運用X:平均1.0%
運用Y:平均2.0%
運用Z:平均2.0%
運用YとZの平均値は同一(2.0%)です。
次に、各月の収益率から平均収益率を引いて、その差を求めます。
各月の差の計算
差 = 各月の収益率 - 平均収益率

手順2:差の2乗を計算
次に、手順1で求めた各月の差を2乗します。
差を2乗することで、マイナスの値がプラスに変換されます。
つまり、平均からの乖離の大きさをすべて正の値で表現できます。
また、平均との差の幅が大きいほど、差の2乗も大きくなります。
差の2乗を計算したら、その合計値を出しておきます。

差の2乗の計算
差の2乗 = (各月の差)^2
※2乗すればマイナスもプラスになる
• 差が+3%の場合、差の2乗は0.0009
• 差が-3%の場合も、差の2乗は0.0009
→つまり、平均からの差は同じです
手順3:差の2乗の平均を求める(分散)
最後に、手順2で求めた差の2乗の合計を、データ数から1引いた数で割ります。
今回のケースでいえば、12ヶ月から1を引いた「11」で割ります。
これが「分散」です。

今回の運用X,Y,Zの収益率の変動の大きさ、つまりリスクの数値化ができました。
分散の計算
分散 = 差の2乗の合計 / (データ数 - 1)
※なぜデータ数から1を引くのか?
→ 統計学的な理由で、母集団の分散を推定する際の補正のためです。
このように、分散を計算すれば、平均値は同じでも、数値の大きい方(今回のケースでは運用Z)がリスクが高い(変動幅が大きい)と考えられます。
まとめ
リスクを数値化する手順を理解すれば、判断の質が向上します。
分散を用いたリスク評価をマスターすると、今回の事例のような資産運用だけではなく、様々な事象について成功確率の改善につながると思います。
<本記事の要点>
• ファイナンスにおけるリスクとは収益率の不確実性
• 分散を用いてリスクを数値化する
皆さんもぜひ、リスクの数値化手法を活用して、より賢明な判断を行ってください。
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