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地銀が債権放棄をしないから、地方経済は蘇らない:法的整理と私的整理

「地方の企業が倒産し、シャッター街が増えている」

テレビや新聞で何度も繰り返されるこのフレーズ、聞き飽きた人も多いのではないでしょうか。

実は、その背後には地方銀行の「債権放棄」への消極姿勢が大きく関係しています。

銀行の都合により、もしかするとあなたの地元で、本来ならば再生できたはずの企業が、あえなく法的整理(倒産)に追い込まれているかもしれません。

今回は、地方経済の復活を阻害する「地銀の悪しき影響」についての記事です。



なぜ「債権放棄」が必要か?

地方の、特に中堅・中小企業では、売上減少や後継者問題、設備投資の遅れなどで財務状況が悪化しています。

このようなケースでは、銀行が一部の貸付金を放棄し、返済負担を軽くしてくれる(いわゆる私的整理に基づく債権放棄)なら、企業は息を吹き返す可能性があります。

債権放棄によって
→雇用が維持される
→地域の取引先が連鎖倒産を免れる
→企業が再建され、再び正常な貸出先に戻る

つまり、地方銀行が「債権放棄」という大胆な決断をすれば、企業が立ち直り、地域全体が活性化する可能性があります。


私的整理と法的整理:どこが違うのか?

企業が厳しい状況に陥ったとき、再建する方法は大きく分けると2つあります。

「私的整理」と「法的整理」です。


私的整理とは

私的整理とは、主な関係者である債権者と企業が「私的」に交渉し、返済猶予や一部債権放棄などの再建計画を作成することです。

裁判所を通さないので、スピーディーかつ柔軟に進められます。

<メリット>
・倒産というイメージを与えないため、取引先や従業員の動揺が比較的少ない
・合意が得られれば比較的短期間で再建ができる

<デメリット>
・銀行(債権者)の合意が得られない場合は頓挫する
・債権放棄を伴うケースでは、銀行は損失を計上しなければならず、抵抗を生みやすい

合意形成に失敗すると、最終的には「法的整理」へ移行することが多くなります。


法的整理とは

法的整理とは、民事再生や会社更生など、裁判所を通じて進める手続きです。

債権者(銀行)は法律上のルールに従い、債権放棄や返済猶予を受け入れなければいけません。

<メリット>
・銀行など債権者間での合意形成が難しくても、裁判所命令で強制的に整理できる
「スポンサー型M&A」の入札方式を取りやすく、買い手がつけば事業のみを安価に取得することも可能
・負債や不要資産を切り離して再出発できる

<デメリット>
・倒産(破産)とみなされるため、企業の社会的信用が一気に落ちる
・従業員・取引先が離れ、連鎖倒産を招く可能性もある
・手続きが煩雑で、時間と費用がかかる

法的整理は「倒産」と扱われるので、ブランド・信用は大きく傷つきます。

また、従業員はリストラされる可能性が高く、債権を回収できない取引先などの連鎖倒産を引き起こす可能性もあり、地域にとって良いことはあまりありません。

そして銀行も結果的に回収率が低下し、大きな痛手を負ってしまいます。

本来、地域や銀行自身の利益を考えれば「私的整理」の方がメリットが大きいケースが多いはずです。

それでも、なぜ地方銀行は債権放棄に二の足を踏むのでしょうか?


地方銀行が私的整理に消極的な理由

短期的な財務インパクトを避けたい

私的整理で債権放棄をすれば、年度内に損失を計上しなければなりません。

銀行の経営陣は「今期の決算を悪化させたくない」と考えるため、損失計上を後回しにする心理が働きます。

つまり、問題を先送りして、企業がより悪化した段階で法的整理に追い込まれるというケースが多くなります。

結果的に、法的整理でより大きな損失を被りますが、その時の経営陣はすでに交代している可能性が高く、責任回避できます


審査担当の評価は「不良債権を増やすな」

地方銀行の審査部門は、「貸出金を焦げ付かせずに、回収すること」が評価基準になります。

「債権放棄=回収できなかった融資」であり、審査の失敗と見なされ、人事評価に悪影響を及ぼします。

そのため「とにかくリスケ(返済条件の変更)で延命しよう」とします。

しかし、延命しただけでは根本解決にならず、最終的に法的整理に進むケースが多いです。

つまり、銀行内の評価制度が「企業の再生よりも、貸倒れを出さないこと」を優先してしまっているのが実態です


「債権放棄すれば、他も要求してくる」という懸念

銀行は「もし債権放棄すると他の取引先企業も同じ条件を求めてくるのでは」というモラルハザードを警戒します。

「あの会社は債権放棄してもらったのに、なぜうちはダメなのか?」という不満が広がる可能性もあります。

地銀は地域内の企業との関係が密接なため、このリスクを過度に恐れている傾向にあります。

結果として、1社も救わずに、多くの取引先を法的整理に追い込んでしまう可能性もあります。


法的整理なら「銀行の責任ではない」と言い訳ができる

私的整理は「銀行が主体的に債権放棄を決める」必要があるため、責任を伴います。

一方、法的整理の場合「裁判所の決定なので仕方がない」と説明できます。

経営陣としては、「自分たちの判断ミスではなく、制度や仕組みのせい」にできる方が楽でしょう。

銀行は重要な意思決定を避け、事態を悪化させていると思います。


結局、法的整理になると銀行は大損

「債権放棄なんて無理だ」と銀行が渋れば、企業は法的整理(倒産)に追い込まれるケースが多くなります。

もちろん、担保で押さえている不動産などの処分によって回収できることもあります。

しかし、倒産してしまえば、銀行は強制的に大幅な債権カットを受け入れ、回収不能になる可能性が高くなります。

さらに倒産企業の関連会社や下請けも倒れ、地域経済がごっそり消失する恐れも…。

短期的な貸倒リスクを嫌って先送りすればするほど、長期的に見れば銀行も大損につながります。


結論:腹をくくれ、地方銀行

地方銀行が「地域の企業を助けるために積極的に債権放棄しよう」と明言するのは、現状では難しいかもしれません。

しかし、地域経済の再生には避けて通れない道です。

債権放棄をすれば、目先の損失は確かに発生します。しかし、法的整理に追い込んだ末に、企業や雇用、サプライチェーンまでもろとも潰してしまうほうが、はるかに大きな損害を出すことが少なくありません。

「債権放棄は悪」、その固定観念を打ち破ってこそ、地方銀行は真の意味で地域を支える存在になれるのではないでしょうか。

地方経済が蘇るかどうかは、結局のところ銀行の経営陣がどれだけ勇気を持って行動できるかにかかっていると思います。

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