「銅」のスーパーサイクルが始まる。需要は爆発しているのに供給は増えない?
S&Pグローバルは、2040年までに世界の電力消費量が現在より40%増加するとしている。発電、送電、配電のすべてに銅は不可欠であり、電力が進むほど銅の需要と使用量も増えていく。問題は、需要は爆発しているのにさまざまな理由で供給をすぐに増やすことができないことだ。銅は常に不足する未来がある。(鈴木傾城)
▼ 銅鉱山株が上昇基調に入っている
ゴールドやシルバーの上昇が大きな注目を浴びているのだが、2025年の下半期あたりから、銅価格と、銅を主力とする鉱山株が明確な上昇トレンドに入っている。
たとえば、銅を生産する鉱山企業の株式に投資するテーマ型ETFの【COPX】のチャートを確認すると、価格は2025年春以降、安値と高値を切り上げながら推移し、足元では90ドル近辺まで上昇してきている。
上昇は断続的で、数日で十数%上がるような動きではないが、調整局面でも大きく崩れず、移動平均線に沿って水準を引き上げてきた事実がある。
出来高についても変化が見られる。2025年の前半は低水準で推移していたが、年末から年明けにかけて売買量が増加し、直近では1500万株を超える日が出ている。過去数か月と比べれば明確な増加であり、市場参加者が増えたことは数字で確認できる。
銅価格そのものは日々変動しているが、鉱山株はそれ以上に中長期の需給を反映する。背景にあるのは、銅の需要が「今後数十年にわたって増え続ける」という事実が、市場で共有され始めたことだ。
S&Pグローバルは、2040年までに世界の電力消費量が現在より40%増加するとしている。発電、送電、配電のすべてに銅は不可欠であり、電力が進むほど銅の需要と使用量も増えていく。
銅は足りないからと言ってすぐに採掘して増えるわけではない。新しい銅鉱山を開発し、安定生産に入るまでには平均で15年以上かかる。許認可、環境規制、水資源、地域住民との調整といった要素は短縮できない。
世界最大の銅生産国であるチリでは、既存鉱山の老朽化と鉱石品位の低下が進み、生産量は伸び悩んでいる。供給が急増する環境にない。供給は少なく、需要は大きい。これはまさに長期的な価格上昇を招く大きな要因である。
今後、銅に投資したら大きく儲かるチャンスがある。
▼ 需要が同時多発的に増えている
それにしても、なぜ「今」になって銅が不足しつつあるのか。それは、EV、再生可能エネルギー、送電網、データセンター、防衛装備で、需要が同時多発的に増えているからだ。
これらはいずれも電力を大量に使い、電力を安定して流すために銅を必要とする分野である。IEAの推計では、電力網への投資額は2030年までに現在の約2倍に拡大する。送電線や変圧器の主材料は銅であり、代替は限定的だ。
AIバブルによるデータセンターもまた銅を莫大に消費する。
AI向けサーバーは従来型より消費電力が大きく、配線密度も高い。データセンター1棟あたりに使われる銅の量は一般的な商業ビルを大きく上回る。
米国ではデータセンター向け電力需要が2030年までに2倍以上になると見積もられており、それに比例して銅の使用量も増える。需要は特定の景気局面に左右されず、設備として積み上がっていく性質を持つ。
防衛分野も無視できない。ミサイル、装甲車、通信設備、レーダー。これらはすべて高い電気伝導性を必要とし、銅が使われる。各国の防衛費は2022年以降いっせいに増加しており、削減に転じる兆しはない。
民需と軍需が同時に銅を消費する状況は、過去には限定的だったが、今は同時並行で需要が増えているのだ。
それなのに、供給は硬直的だ。新規鉱山の開発には平均で15年から20年かかる。既存鉱山では鉱石品位の低下が進んでおり、同じ量の銅を得るために掘る岩石の量は増えている。コストは下がらない。
銅の採掘には水を大量に使うのだが、チリを含め、各所で淡水を大量に使う従来型の採掘は難しくなって、海水淡水化設備への投資が不可欠になった。ペルーやメキシコでも地域住民との対立や政権の資源政策が影響し、生産計画は予定通り進まない。
需要は確定してのに、供給ができない。しばらく解消されることはない。
▼ それぞれの個別企業は個性が違っている
投資家目線で見れば、それならば銅に投資すれば長期的な視点では大きな利益が取れるのではないか、と考えられるはずだ。銅に投資するのであれば、いくつかの投資先がある。
個人的には【BHP】【SCCO】【FCX】、そして【COPX】は面白いと感じている。【BHP】【SCCO】【FCX】は銅を採掘する個別企業であり、【COPX】は銅鉱山企業をパッケージ化したETFとなる。
【BHP】BHP Group
【SCCO】Southern Copper
【FCX】Freeport-McMoRan
【COPX】Global X Copper Miners ETF
それぞれの個別企業は個性が違っている。
たとえばBHP Group【BHP】は、銅だけでなく、鉄鉱石、石炭、ニッケルなどを含む分散された事業を持っている。銅は重要だが唯一ではない。銅価格が上がっても株価は跳ねにくいが、下落局面でも崩れにくい特徴もある。
Southern Copper【SCCO】は対照的だ。売上と利益の大半が銅に依存し、コスト競争力が高い。銅価格が上昇すれば業績は直線的に改善する。その一方で、ペルーやメキシコという地域リスクを抱え、政策や社会情勢の影響を受けやすい。ある意味、「銅不足をもっとも純粋に反映する企業」でもある。
Freeport-McMoRan【FCX】は、銅価格への感応度がさらに高い。グラスバーグ鉱山を中心に、銅と金を大量に産出するが、設備投資と景気の影響を強く受ける。過去には拡張局面での判断ミスも経験している。銅不足の加速局面でもっとも動くが、安定性は低い銘柄でもある。
こうした個別銘柄をパッケージ化し、個別企業特有のリスクを軽減させたものがGlobal X Copper Miners ETF【COPX】である。特定の経営判断や地域リスクを薄めるが、ETFなので爆発的な上昇を享受できるわけではない。
▼ 銅のスーパーサイクルが始まる
巨大な資産を運用する投資家スタンレー・ドラッケンミラーも、銅についてはこのように語っている。
「これはシンプルな話だ。銅を生産するのに、開発から採掘まで約12年かかる。にもかかわらず需要は大きい。EV、電力網、データセンター、そして信じられないかもしれないが軍需品も莫大な銅を必要とする。ミサイルにはすべて大量の銅が含まれていて、世界が熱くなっている今、我々は今後5~6年間の需給状況が信じられないほどだと考えている」
2040年までに銅の需要は4000万トンに達すると予想されている。銅は少なくとも10年以上にわたる強気相場に入ったのではないかというのがスタンレー・ドラッケンミラーの考察だ。
確実に供給不足がくる。まさに銅のスーパーサイクルが始まる。スーパーサイクルとは、価格が一時的に上がる現象ではなく、資源の制約が長期間にわたって市場に影響を与える状態を指す。
その流れを早い段階で理解し、適切な形で取り込めた投資家は、結果として大きな資産形成につながる可能性が高い。
スタンレー・ドラッケンミラーがどういう投資家なのかは以前にも書いた。(スタンレー・ドラッケンミラー。「堅実に」ではなく大きく儲けるための投資哲学)
1兆円近くを運用するこの稀代の投資家は市場の「兆候」を読んで、そこに大きな投資をして莫大な利益を上げるタイプでもある。この「兆候を読む」部分に鋭い才能を持っている。
そうした人物が「銅」のスーパーサイクルに着目しているのは興味深い。

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