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ペプシコが追いつめられている。ジャンク忌避の社会でペプシコは変われるのか?

社会が健康志向に変わり、苦境に落ちているペプシコに、アクティビスト投資家エリオット・インベストメント・マネジメントも乗り込んで来ている。エリオットはペプシコを「劇的な低迷企業」と呼び、「経営を変えろ」とペプシコの経営陣に圧力をかけているのだった。ペプシコは変わらざるを得ない。(鈴木傾城)

ペプシコは不利な立場に立たされている

ペプシコ【PEP】は私が愛する銘柄でもある。だが同社は、急激に健康志向に変わりつつある社会、そしてGLP-1受容体作動薬の登場によって「ジャンクフード」「砂糖入り飲料」が忌避される社会の中で不利な立場に立たされている。

私はジャンクフードを愛しているが、社会はジャンクフードを蛇蝎のごとく嫌いだしている。我が愛するペプシコも、これで窮地に落ちている。

ペプシコは2025年10月9日に、新たな最高財務責任者(CFO)としてスティーブ・シュミット氏の任命を正式発表し、2025年11月10日より就任することが決定した。

このシュミット氏だが、ウォルマート米国事業のCFOを務めており、数十億ドル規模の全方位型の販売・顧客接点戦略を財務面から統括してきた経歴を持つ。言ってみれば、販売戦略のプロである。

小売の最大手で培った経験は、複雑な供給網をどう効率化し、消費者の多様な購買行動に対応するかという課題に迅速に対応できる能力をペプシコでも発揮できるということでもある。

シュミット氏のこれまでのキャリアを振り返ると、ウォルマートのEコマース事業、会員制事業、量販部門など多岐にわたる分野での財務統括に携わってきたことがわかる。その前にはヤム・ブランズやUPSでの経験もある。

巨大で複雑な組織の財務運営を支えてきた点は、売上規模が年間約910億ドルに達するペプシコにとって強みとなる。CFOは単なる数字の管理者ではなく、経営戦略全体を支える役割を担うため、この人事は今後の方向性を大きく左右する。

今回の人事は、長年CFOを務めてきたジェイミー・コーフィールド氏の引退に伴う交代劇でもある。コーフィールド氏は30年以上ペプシコに在籍し、財務基盤の安定と株主還元の強化に尽力した人物だった。

彼の退任は一つの時代の終わりを意味し、同時に新しい挑戦の始まりでもある。


アクティビスト投資家エリオットの圧力

社会が変わり、苦境に落ちているペプシコに、アクティビスト投資家エリオット・インベストメント・マネジメントも乗り込んで来ている。エリオットは2025年9月2日、ペプシコ株式約40億ドル(約6000億円)を取得したことを公表している。

そして、経営改革を求める取締役会宛ての書簡を送付した。エリオットのようなアクティビスト投資家は「株主価値の最大化」を掲げ、経営陣に大規模な変革を迫ることで知られる。

このエリオットはペプシコを「劇的な低迷企業」と呼び、「経営を変えろ」とペプシコの経営陣に圧力をかけているのだった。

ペプシコの北米飲料事業は、年間約290億ドルの売上を誇る最大部門であるにもかかわらず、利益率や成長速度でコカ・コーラなどの競合に劣っている。とくにブランドが過剰に増加し、経営資源が分散して重点分野への集中を欠いている点が批判の中心に据えられた。

ブランドの乱立は小売現場での在庫管理を複雑にし、販促活動の効率を低下させている。エリオットはこれを「戦略的焦点の欠如」と断じ、事業ポートフォリオの整理と利益率の改善を強く求めている。

これに対し、ペプシコは「現行戦略に自信を持っている」とも明言し、イノベーションの推進、商品ポートフォリオの刷新、生産性向上を軸とした路線を維持する姿勢を崩していない。

だが、アクティビスト投資家の影響力は無視できない。上場企業にとって、短期的な株主還元と長期的な成長投資の両立は避けられない課題だ。エリオットの介入によって経営陣はとにかく結果を出さなければならない状況に追い込まれている。

エリオットの主張する「競合との比較での成長と収益性の劣後」は事実である。

北米飲料部門は食品部門に比べ改善が遅れ、既存ブランドへの依存度も高い。ペプシコはこの現実に対して、数字で成果を示す以外に正当性を証明する手段を持たない。新CFOの就任は、その第一歩として透明性と実行力を市場に提示できるかどうかを測る重要な局面となる。


ペプシコも「健康飲料」にフォーカス

ペプシコの北米飲料部門で注目を集めているのが、ゲータレードを中心としたブランド再生の取り組みである。

ちなみに、ゲータレードはずいぶん前に日本では販売が停止されている。ゲータレードの毒々しい包装が日本人受けしなかったのかもしれない。どう見ても身体に悪そうな毒物に見えた。

このゲータレードはスポーツ飲料の代名詞として知られ、今でも日本以外では売れているのだが、近年は成長が鈍化し、例によって低糖質や機能性飲料に強みを持つ競合にシェアを奪われるようになってきた。

ペプシコは、早急にこうした状況を打開する必要がある。

ペプシコはどう打開するつもりなのか? ゲータレードは従来、甘味と即効性を重視した高糖質飲料として支持されてきた。だが健康志向の高まりを受け、糖分を75%削減した「ゲータレード・ローシュガー」を投入する計画を明らかにした。

この商品は人工甘味料を用いず、自然由来の成分で構成される。さらに、タンパク質補給を目的とした新商品群や、携帯性を重視した粉末ミックスの販売拡大も進めている。これにより、スポーツ選手や一般消費者がより多様な場面でゲータレードを選択できるようになる。

健康志向と言えば、ペプシコはプレバイオティクス炭酸飲料のPoppiを約20億ドルで買収している。腸内環境の改善をうたうこのブランドは、健康志向の若年層に支持されており、新たな成長エンジンとして期待されている。

また、同年夏にはエナジードリンク市場で急成長するセルシウスへの出資比率を高め、同ブランドをペプシコの主力エナジードリンクと位置づけた。セルシウスもまたミレニアル世代やZ世代のジム利用者を中心に高い人気を獲得している。

もう、毒々しい砂糖入りの飲料はウケない。しかし、機能性飲料や低糖質飲料は2桁成長を続けている。特にスポーツドリンク市場では、消費者が「健康」や「パフォーマンス向上」といった付加価値を求める傾向が顕著になっている。

ペプシコも「健康飲料」にフォーカスしつつあるのがわかる。


ペプシコの方向性は間違っていない

ペプシコの北米飲料部門は年間約290億ドルの売上を誇る最大の事業領域であり、その成果は企業全体の業績に直結する。だがペプシコは、肝心なこの部門で競合に比べ利益率が低かった。

今回のゲータレード再生や新ブランドの拡充は、こうした弱点を克服できるかどうかを試す実験でもある。経営陣が掲げる「ポートフォリオ変革」という言葉が実態を伴うかは、売上成長率や利益率の改善に表れるしかない。

もし、この経営陣の改革が失敗して売上が落ちたり、今と何ら変わらない数字だと、ますますエリオットの圧力は強くなり、経営は混乱していくことになるだろう。そういう意味で、新CFOのスティーブ・シュミット氏が担う役割は重大だ。

個人的には、ペプシコの「ジャンク一辺倒」から「健康に配慮」の方向転換は、それなりにうまくいくのではないかと期待を込めて見ている。

炭酸飲料の消費はたしかに伸び悩んでいるのだが、エナジードリンク市場は年率で10%を超える成長を記録している。低糖質飲料や機能性飲料の需要拡大も続いていて、従来型の清涼飲料とは違う光景がそこにある。

ペプシコの方向性は間違っていない。

私自身はジャンクな飲み物、ジャンクな食べ物が大好きだが、私も今年は冠動脈狭窄で3度も入院手術をする羽目に陥った。もうジャンクフードを好き放題に食べられるような身ではなくなった。

食事制限も厳しくて、歯が溶けそうな砂糖まみれの飲料もドクターストップがかかっているし、ペプシコが出しているポテトチップスも塩分が多すぎて、そんなものを食べるのは自殺行為になってしまった。

ペプシコも私も、もっと早く変わるべきだったのかもしれない。私が変われるのかどうかは不明だが、ペプシコは長い歴史の中で数多くの挑戦を乗り越えてきた企業だ。今回も、ブランド刷新と財務戦略をうまく進められることを期待している。


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