素晴らしき哉、映画祭人生!
毎月15日が近付くと、ひと月分の海外映画祭応募枠についてプロデューサーとの打ち合わせが始まる。
2024年以降は過去作の海外映画祭への露出は減らし、最新作『未来の記憶/Memories of the Future』(2024年)の展開をメインにしているが、過去作『星を継ぐ者/Inherit The Stars』の海外向け再編集版『The Stars My Destination/星を継ぐ者』(2018年)へのオファーも依然として多い為、その辺りの調整が毎月、悩みの種に為るのだ。

そもそも「商売の足しにする為に映画祭へ出す」なら、その効果がある映画祭はトップランクの数ヶ所に限られている。
そして、そういった映画祭に「超低予算で作られた日本映画」の席は殆ど「無い」と言って良い(経験上、アメリカはまだ少しある)。
自分は海外映画祭を直接、商売に結び付ける気は無いので(行っただけで簡単にそんな美味い展開に為りゃしないのは、一度でも現地入りすれば解る)、よくある「海外映画祭で賞を獲れば国内展開に有利じゃないか」みたいな動機で出す事はしない。
じゃあどんな動機なのかと聞かれた場合、答えられるとすれば、これはもう「良い仲間との出会い」の探求に尽きるだろう。
もう1つは「いつも世界のどこかの国や地域で、自分の映画が掛かっている様な1年にしたい」というのが、自分にとって大切な動機だと言える。
コンペティブ(賞レース)な映画祭での賞獲りは、貰えたら当然嬉しいが、それに関しては正直「スタッフ・キャストのハク付けに役立ってくれたら良いな」くらいにしか考えていない。
もし賞獲りが映画の宣伝に貢献してくれる事があったとしたらラッキーだが、あくまでオマケみたいなものだと思った方が良い。
カンヌ・ヴェネチア・ベルリンの様な世界15大映画祭と、それ以外の映画祭では、映画祭が持つ存在意義と、そこへ出す目的自体がそもそも違う、という事を間違えてはいけない。

「どこへ行って何をやるのか」「何をやる為にどこへ行くのか」という「行く意味」を考えて、行くべき所へ行くのが、海外映画祭へ参加するという事なのだ。
だから、出さなくて良い時には別にムリして出さなくても良いのである。
映画監督の故・原田眞人さんは著書『原田眞人の監督術』(雷鳥社)の中で「監督が成長していくのも、映画祭の旅である」とした上で「この場合、ベルリン、カンヌ、ヴァネチアの三大映画祭よりも、地域社会に密着した小規模の映画祭の方が重要になってくる。より密接に世界の反応と出会えるからだ」と書いている。
その通りだと思う。
映画祭でしか行けない様な国や地域で、良い仲間と出会い、良い酒を飲み、良い映画を観て、互いの国へ帰ったら頑張って、場合に因っては一緒に映画を作り、そしてまたどこかの国で会う。
僕はそういった「映画人との出会い」が、自分の映画ライフに大切だと思っているから、海外の映画祭へ行くのだ。
有難い事に、海外の映画祭で出会った人達が自分の映画にキャストやスタッフとして参加してくれたり(2017年の『冷たい床/Cold Feet』)、逆に映画祭の開催国コソボで監督を依頼(しかもドキュメンタリー)されたりと、僕の場合は海外映画祭での出会いが直接、映画制作に繋がっている。

だが、それは現地でただ幸運を待って得た結果ではない。
他にも海外映画祭での上映や受賞を、次の展開へつなげている人はいるが、そういう人はただ行くだけでなく、やるべき事をちゃんとやっている。
だから「どこへ行って何をやるのか」「何をやる為にどこへ行くのか」という「行く意味」を考えて、行くべき所へ行くのが、海外映画祭へ参加するという事というのが結論。
もしも「海外の映画祭=儲けに繋がる」と安直に考えているなら、他の展開にお金と時間を割いた方が良い。
海外の映画祭って、全プロセスを合算したら毎回ドエラい額のお金が飛んで行くんだから(笑)。
そんな事を思う今日この頃。
さて。
ここに掲載している写真は、トルコ出身のクルド人映画監督で、現在はフランス在住のビュレント・ギュンデュスさんと、2017年にニース国際映画祭の受賞式で撮った1枚。

彼とは2016年にコソボの映画祭で初めて会い(ヘッダー写真を参照)、2017年にフランス・ニースで再会、翌2018年にはカンヌでも会っている。

こういう映画ライフを、僕は愛している。
