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BtoB企業がやるべきブランディング | マーケティングの正論と本音

この記事は、株式会社unname提供のPodcast番組「マーケティングの正論と本音」の収録をもとに記事化しています。

MC:宮脇 啓輔 (代表取締役)
スピーカー:中本 裕之 (取締役)

宮脇: マーケティングの正論と本音、第29話です。 今回もunname取締役の中本さんにお越しいただいています。

中本: よろしくお願いします。

宮脇: 今回は私から聞きたいテーマを持ってきました。 ぼんやり思っていたテーマなのですが「BtoB企業のブランディングってどこまでやればいいの?」という話です。BtoCだと「ブランドを作る」というのは定石ですが、BtoBの場合はどこまでリソースを割くべきか悩みどころなんじゃないかと。また、ブランディングでやるべきことが全然違うのではないかと思っています。しかし、いくら合理的に意思決定するBtoBだとしても「価値が伝われば白黒のWebサイトでいい」わけではないと思っています。しかし、かと言ってCMを打つ必要があるかと言えばそうでもない。「ここまでやったら及第点」みたいな基準について議論できればと思います。

中本: なるほど。答えがあるかは定かではありませんが、私なりの失敗談も含めて「ここらへんが落とし所だろう」という話をしていきたいと思います。


【おさらい】 ブランディングの起源は「牛の焼印」

中本: 本題に入る前に、少しだけセオリーの話をさせてください。 私、実はブランド論がすごく好きでして。デビッド・アーカーさんの理論とかも勉強したんですが、そもそもブランド戦略というのは、経営戦略や事業戦略とほぼ同義なんですよね。

宮脇: 現代では、単なるデザインやコンセプト設計の話だと思われがちですよね。

中本: そうです。ブランドの起源を辿ると、「牧場で牛に焼印を押すこと」から始まっているんです。「これは俺が育てた牛だ、隣の牧場の牛とは違うぞ」と区別するための印(Burned)ですね。 だから、本来の機能は「他との識別」なんです。そこに「松阪牛だから美味しい」「あの牧場の牛なら安心だ」というイメージや価値が紐付いていく。この原理原則を押さえておかないと、現代の企業ブランディングはただおしゃれなロゴを作って終わり、になってしまいます。


BtoB企業のブランディングでやるべき3つのこと

宮脇: では、BtoB企業が具体的にやるべきこととは何でしょうか? 特に「これから大手企業と取引したい」と考えている企業の場合で教えてください。

中本: 私が考える必須要件は、以下の3つです。

1. 「取引実績・事例」を作る
中本:
何よりもまず、大手企業との取引実績を作ることです。これがBtoBにおいて最強のブランディングになります。 どんなにかっこいいWebサイトを作るよりも、「あの大手企業〇〇社が導入している」という事実のほうが、信頼性を担保してくれます。

宮脇: Goodpatchさんが、創業期のGunosyのUI改善をほぼ無償(あるいは破格)で引き受けたという話がありましたよね。

中本: ありましたね。当時、アプリ市場が爆発的に伸びる市況の中で、Gunosyという象徴的なアプリの実績を作ったことで、「アプリのUIならGoodpatch」というブランドが一気に確立されました。 最初の1社目は、利益を度外視してでも「事例」を取りに行く。この投資判断ができるかどうかが重要です。このあたりの判断は経営者じゃないと難しいかなと思います。

2. 「柔軟な対応力」を見せる
中本:
SaaSのようなパッケージ製品を売る場合でも、大手企業相手だとそのままでは導入できないことが多いです。 「この機能を追加してほしい」「セキュリティ要件に合わせてほしい」といった個別の要望に対して、「うちはパッケージなんで無理です」と断るのではなく、ある程度のカスタマイズや労働集約的なサポートも厭わない姿勢を見せること。 この「柔軟性」自体が、大手企業から選ばれるためのブランドになります。

宮脇: 弊社自体がそうですよね。やることをカチッと決めすぎず、「御社の課題に合わせて柔軟に対応しますよ」というスタンスが、逆に安心感に繋がって発注いただけることが多いです。

3. ターゲットに合わせた「トンマナ」を整える
中本: 最後に、相手が好む「トンマナ」に合わせることです。 大手企業を狙うなら、Webサイトの文章を少し硬めにしたり、資料のデザインをスタイリッシュにしたりして、「ちゃんとしている感」を演出する必要があります。 逆に中小企業向けなら、親しみやすさや泥臭さを出し、現場の生々しい課題解決事例を載せたほうが響く場合もあります。このような努力もBtoB領域ならではのブランディング活動と言えるでしょう。


ブランディングの3つの大原則

中本: ブランディングの大原則として、私が大事にしている3つの言葉があります。 それは「意図しているか」「一貫しているか」「継続しているか」です。

意図: 「誰に」「どう思われたいか」という狙いが明確か。
一貫: Webサイト、営業資料、担当者の振る舞いまで統一されているか。
継続: それをしつこくやり続けられているか。

特に「継続」と「一貫性」が難しいんですよね。 最初は張り切ってルールを作っても、半年後には営業担当者が勝手に作ったボロボロの資料を使い始めたりする。これではブランド毀損です。

宮脇: 展示会に行くとよくわかりますよね。 コンパニオンのお姉さんを並べて、手当たり次第に名刺交換しているブースを見ると、「あぁ、意図も一貫性もないな」って思っちゃいます。 それよりは、社員が汗をかいて必死に説明しているブースの方が、「実直な会社だな」という良いブランドイメージが残ります。

中本: その点、SKY株式会社さんはすごいですよね。 品川駅や新幹線駅構内の広告も、テレビCMも、営業マンのスタイルも、何年もずっと一貫している。「何をしている会社か」が刷り込まれるレベルで継続しているのは、本当に凄まじいと思います。


【結論】 まずは「営業資料」と「メール」から

中本: 結論として、BtoB企業が「どこまでやるべきか」と言われたら、まずは「営業まわりのツール」を整えるところから始めるのがおすすめです。 マス広告を打つ前に、営業資料や提案書のフォーマット、メールの署名など、顧客との接点になる部分のトンマナを統一する。 BtoBにおいて、営業担当者は「歩くブランド」そのものです。彼らが使う武器を磨くことこそが、最も費用対効果の高いブランディング活動になります。

宮脇: なるほど。デザインやコピーライティングに凝る前に、やるべき足元の施策があるということですね。BtoBにおいて「事例」こそが最強のブランディングであり、営業現場のツール統一が第一歩であるという話、非常にリアルで納得感がありました。本日はありがとうございました。

中本: ありがとうございました。

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