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【かがみ】楽曲分析レポート〜TikTok今週の1曲[No.21 - 25/3-2]

こんにちは!
今回は「かがみ/ FRUITS ZIPPER」についてのレポートになります。

「かがみ」に注目すべき理由

そもそもなぜこの曲に注目すべきなのか?という話ですが、
本楽曲は2024年から特に顕著にヒット傾向を見せたアイドル楽曲ジャンルに属する楽曲であり、UGCはリリースから2ヶ月経った現在で約4万です。

※UGCとはUser Generated Content の略で、特定の楽曲を使って不特定多数のユーザーが投稿した動画の数を指します。

そしてこの4万という数字は過去のアイドルヒット曲と比較するととても大きな数字とまではいえないのですが…
(例えばかわいいだけじゃだめですか?/ CUTIE STREETはリリースから約2,3ヶ月で15万UGC)

しかしだからこそ、4万という一定のラインまで伸びている理由と、過去の特大ヒット曲ほど大きくなっていない理由、どちらの側面から分析できる非常に面白い事例だと言えるでしょう。

今回のレポートをご覧いただくことで「アイドル曲ヒットに必要な要素」をより深く理解できますので、興味がある方はぜひお楽しみいただければと思います。

@fruits_zipper

【MV Teaser】FRUITS ZIPPER 『かがみ』 1/17(金)配信リリース Lyrics/Composer:Yamamoto Sho Choreographer:Kanna Director:Shota Nakano Producer:Daiki Haraguchi・Minami Kase KAWAII LAB. Producer:Misa Kimura #FRUITSZIPPER #ふるっぱー #フルーツジッパー

♬ かがみ - ますかるのゆあ ver. - FRUITS ZIPPER


「かがみ」が一定のヒットを生んだ大きな理由

そもそもUGCが伸びるということは、楽曲が動画に使われて広がる過程 (UGC拡大経路) のどこかでそれだけの規模に広がっていくターニングポイントがあったと言えます。

例えばどこかで影響力のある人がその曲を取り上げれば一気に多くのクリエイターが使うようになり、UGC数はグンと伸びることもあります。
そしてそういう「拡大の分岐」がどれだけ多く起こるかが、UGC数の伸びに直結しています。

今回はそのターニングポイントが1つ存在し、それを生み出したのはやはり「楽曲が持つ哲学」だと踏んでいます。
そして興味深いことに、UGCが現状では爆発的に伸びていない大きな理由もその哲学にあると考えています。

ですので今回も、UGC拡大経路を分析していく中で
・どこが拡大の分岐になったのか?
・なぜその分岐が起こったのか?(なぜそのクリエイターが楽曲を使い、動画が伸びたのか?)

この2点に着目して進めていきましょう。


1、UGC拡大経路から見極めるターニングポイント

では早速前章で触れたUGC拡大経路を追いながら、ヒットのターニングポイントを見ていきましょう。

本レポートシリーズではお馴染みですが、弊社ではこれを【イノベーター理論】を用いて分析をしております。
イノベーター理論とはサービス等の市場での普及率を示すマーケティング理論の一つになります。
※詳しくは以下のサイトを参照ください。

今回もそれに倣い拡大経路の順を以下の3つに区分してリサーチいたしました。
それぞれの区切りは本家リリースから投稿までの期間で判断します。
ざっくり以下の通りの認識で今回は分析します。

(1) イノベーター (一番最初に広まったきっかけ)
 →今回はリリース同日〜約2週間以内で投稿されたもの
(2) アーリーイノベーター (初期段階で拡散されたきっかけ)
 →今回は約1ヶ月以内で投稿されたもの
(3) アーリーマジョリティ (早期段階でさらに拡散されたきっかけ)
 →今回は約1ヶ月以降で投稿されたもの


(1)イノベーター

まずはこのイノベーターが最初に楽曲が広まるきっかけになりますが、今回のイノベーターは【本家】であり、リリースと同時に複数の動画を投稿し数十万再生〜100万再生超えを連発しています。

@fruits_zipper

【MV Teaser】FRUITS ZIPPER 『かがみ』 1/17(金)配信リリース Lyrics/Composer:Yamamoto Sho Choreographer:Kanna Director:Shota Nakano Producer:Daiki Haraguchi・Minami Kase KAWAII LAB. Producer:Misa Kimura #FRUITSZIPPER #ふるっぱー #フルーツジッパー

♬ かがみ - ますかるのゆあ ver. - FRUITS ZIPPER

https://vt.tiktok.com/ZSr8xfLge/

@manafy_fz0422

新曲 かがみ リリースされました🪞✨ いっぱい聴いて踊ってね🤍 💿@FRUITS ZIPPER 👗@LARME official #かがみ #fruitszipper #ふるっぱー #フルーツジッパー #新曲

♬ かがみ - ますかるのゆあ ver. - FRUITS ZIPPER


また、同じ事務所のアイドルグループ「CUTIE STREET」のメンバーも投稿をし、これも60万再生と拡散を手伝うことになります。

https://vt.tiktok.com/ZSr8xUkM5/


このように初期は本家をメインとした「自身で楽曲を使用するのがごく自然な場所」から拡散が始まりました。
ここはまだヒットに繋がる最も大きなターニングポイントとは言えないですが、重要な初動を作ったフェーズとしてその動画が伸びた理由を解説したいと思います。


①可愛い女の子が踊る絵はわかりやすく本能に刺さるコンテンツ

「可愛い女の子の可愛い動画」は視聴者に「目の保養」「癒し」、時に女性であれば「憧れ」といった感情を与え、総合して本能的に「この子可愛い…!!」
で手を止めてしまいがちなコンテンツです。

この手のものはTikTokが始まった2017年からありふれている恒久的な需要があるコンテンツですので、そこまで複雑な解説はいらないと思いますが、前提となるポイントとして記させていただきました。
※コメント抜粋例

②視聴限度回数の高い = 同じ投稿を複数回しても伸びる

もう一つの着眼点として、同じような動画を複数回投稿しても毎回安定して再生数が回っている、いわゆる「視聴限度回数の高さ」もポイントです。

この言葉は本レポートシリーズで度々登場しているものになりますので、詳細は以下のnoteの”第一章「バズの拡大経路」(1)イノベーター”の②をご覧いただければと思いますが、

端的には…

「同じ企画を繰り返し投稿しても見てもらえるかどうか」というところがあり、アイドルの楽曲・ダンス動画は「可愛さ」という繰り返し見ても満足感が得られる訴求であることや、毎動画メンバーや画角が異なることで、その可愛いにも変化が見られることからこの視聴限度回数が高いという特徴があります。

これにより「自身がイノベーターとなり再生数を底上げするのに相性の良い構造」になっているというわけです。


③影響力のあるアイドルグループ = 一定の伸びが保証されやすい

ここまで解説してきた二つの理由は「可愛いコンテンツが伸びやすい根本」ではありますが、一方でこういったコンテンツが飽和してきた際に他の動画を差し置いてその動画が伸びる理由の説明にはなっていません。

ただここに関しては、「元々影響力のあるグループだから既に知っている人が多く、定番の可愛い動画を出せばある程度の再生数が保証されている状態だった」というのが大きいと思っています。
あとTikTok内で影響力のある女性アイドルを複数事務所内で抱えているというASOBISYSTEMさん座組みがシンプルながらPH的にハマってて強いです。

2024年前半から特にこういったアイドル系のヒット曲が増え、その需要は2025年現在も健在であるものの、やはり一定数「ああまたこういう感じね」と思う視聴者が増えてきているだろうという推測もしていて、現に今回の本家動画もそこまで大きく回っているわけではありません。

ですので、この楽曲や動画だけが持つ「特異性」があってイノベーターが生まれた、というよりは「影響力のあるグループが求められるものをしっかり提供し、安定に伸びた」くらいの感覚が近いと思っています。

(じゃあどうすれば頭一つ抜けたヒットができるの?という点に関しては後の【じゃあどうすればもっとバズるのか?】で触れますのでそちらも参照してみてください。)

さて、上記がきっかけで初期の拡散が生まれたわけですが、その後はどのような分岐が生まれていくのでしょうか?




(2)アーリーアダプター

まず大きなターニングポイントが生まれる前に「3つ」の界隈に波及したため、その紹介と理由をまとめていきます。

①流行敏感女子界隈 / 別系統ガールズアーティスト

@ryoka_720

聞いた瞬間ぜったい撮ると決めた🥹💜🪞

♬ かがみ - ますかるのゆあ ver. - FRUITS ZIPPER

まず「流行敏感女子界隈」と「別系統のガールズアーティスト」で比較的大きなバズが起こりました。

この2つは異なる界隈ではありますが、本質的な欲求は同じ「もっとバズりたい!」です。

こちらもよく紹介している内容にはなりますが、彼女らはトレンドになりそうなものにはいち早く飛びつく傾向にあり、それを前提とした上で自身の”可愛さ”で認知を取りたいという欲求があります。
その欲求に対して「可愛いアイドル曲」というのはやはり相性が良いと言えます。

さらにそういった「女の子の可愛さ」がブーストされる動画が伸びやすいのは前述したとおりですので、ここでこの曲がクリエイターに使われ、視聴者目線で再生数が伸びるのも至極妥当と言えるでしょう。

ーーーそしてほぼ時期を同じくして、今度は少し変化球的な動画が伸びることになります。

②ネタ動画界隈

少し変化球的立ち位置としてこういったネタ系の動画も散見されるようになりました。

例えば本楽曲の「ふるふるる」という歌詞と「モンハン (モンスターハンター) というゲームに登場するモンスター”フルフル”」の語感が似ていることからちょっとしたミーム動画が作られたり、突発的に発生したものになります。

ただこれに関しては動画単体で伸びても、その後他のクリエイターがUGCをしたいと思う動機になりづらい (実際にここから波及したUGCがほぼ見られない) ことからあまり本質的なヒットの理由には繋がりにくいので、純粋な事例としての紹介にとどめさせていただきます。

③推し動画界隈

https://vt.tiktok.com/ZSr8x36cp/

https://vt.tiktok.com/ZSr8QP9pY/

程なくして上記のような「推し動画」も見られるようになります。
このような動画は特定の人物に対して思い入れのある層が、それに対する愛情 (可愛いやかっこいいものを広めたいという感情) をもって使うケースが多いです。
つまり視聴者同士でその人物の魅力を堪能する一つの手段として、互いに動画を作成して共有し合ったり、それを見てその可愛さや尊さを再認識するといったアクションが生まれるので、こういった動画がバズるようになっています。
本家動画を見ることで得られる「癒し」を別の角度で摂取できるのがこういった動画と言えるかもしれません。

ーーーーー

さて、ここまで確かに複数の界隈で動画がバズり、既にもっと大きく波及していってもおかしくないと思える流れですが、実際はここまでで紹介した事例から大きくUGCが伸びた印象はありませんでした。
しかしここである一人の有名人にUGCされることで、先ほどからお伝えしていた本楽曲ヒットの「1番のターニングポイント」が生まれることとなります。


(3)ターニングポイント

【森香澄】

複数の界隈でUGCされるもイマイチ波及しない中、流れを作ったのが「森香澄」さんです。
早速解説していきます。

まず彼女は多くの人々に注目される立場ですので、自身のブランディングにかなり気を遣って選曲をすることが想定できます。噛み砕くと、UGCする動機としては「これを私の曲として使った時にいかに自分のしたいブランディングができるか」だと言えます。
(これはどのクリエイターもおおよそ共通していますが、有名人ほどこの基準に敏感な傾向にあります)

極端な例でいえば、歌のおにいさん横山だいすけさんが「粛聖!!ロリ神レクイエム☆」を踊った際炎上しTikTokを削除する事になりました。
削除まではいかないしにしても、沢山の人に見られることが保証されており社会的立場もある芸能人系のクリエイターさんは特に自分がやることの必然性や炎上リスクがないものしか取り上げない傾向にあります。

そうなった時に重要となるのが「楽曲の哲学・メッセージ性」です。

この曲の場合は歌詞にもあるように「可愛くなりすぎちゃったかも」とかなり自己肯定感の高いコンセプトとなっており、人によっては少し卑しい見え方をするというか、「その曲を使った時に自分がどう見られるか」という視点で見た時に少しとっつきにくい楽曲と言えるかもしれません。
ここまでUGCが広く波及しなかったのもそれが一つの原因だと考えているのですが、森香澄さんにおいてはむしろこの哲学が「ハマった」のではないでしょうか。

具体的には彼女はあざといキャラのイメージが強く、それによるアンチも一定数存在しますが、その中でも自分の芯を通すことで強力なファンを獲得している側面が大きいです。故に今回のある種「自信満々・煽るような哲学」は彼女のセルフイメージと合っていたと考えられます。

故に他の大手クリエイターのUGCが少ない中でも、単独で楽曲使用したのではないでしょうか。

ーーーそしてこの動画は170万再生を記録し、以降のUGC波及に大きな変化をもたらします。

これは彼女がTikTok内影響力が高い、と言うことです。
この話は前回のレポートでも触れましたが、彼女の場合軸足は芸能人的側面におきつつもSNSでもフォロワー数が多いと言う点が内部影響力が高い理由です。

つまり、TikToker達からすると"TVの人"とは例えフォロワー数が少なくとも憧れの人というみられ方をする傾向があり、そんな中TikTokでも影響力が強い……となればそれはTikToker達から羨望や分析の対象として写っている事になりこれが内部の影響力が高い理由です。


(4)アーリーマジョリティ

ここからはまとめて紹介し、最後に解説を付け加えたいと思います。

➀垢抜け動画


②踊り手・シンガー界隈

@kanzakianna36

あんなだから私も「ますかるのゆあ」に参戦してもいいカナ🪞⁉️ #かがみ #FRUITSZIPPER (@FRUITS ZIPPER 様) #ふるっぱー #フルーツジッパー #踊ってみた #神綺杏菜

♬ かがみ - ますかるのゆあ ver. - FRUITS ZIPPER


③ネオTopTikToker界隈

https://vt.tiktok.com/ZSr8Q8Gtp/

④男子アイドル界隈

@jr_official_tiktok

かわいくなりすぎちゃった?🪄💖 大西風雅 #Lilかんさい 山中一輝 #AmBitious 池川侑希弥 #Boysbe 渡邉大我 #関西ジュニア #トシカレ #かがみ

♬ かがみ - ますかるのゆあ ver. - FRUITS ZIPPER

森香澄さんのUGCを皮切りに、ここで初めて一気に広い界隈にUGCが波及し始めます。

例えば「踊り手・シンガー界隈」は純粋に流行の曲を使ってパフォーマンスすることで、自身の技術と認知を取れるバズを狙おうというムーブメントが多いため、「この曲流行りそう!」感が取り上げる重要な基準となってきます。

今まではその「流行りそう感」が何とも言えないラインでしたが、森香澄さんがUGCしたことによってそのラインを超え、投稿に至ったと考えられます。

他にもネオTopTikToker界隈はほとんどトップに近い立ち位置に存在するクリエイターですが、やはり彼女らが重視するのは「ブランディング」ですし、いち早く流行りに乗ってバズらせよう!というよりは、少し腰を据えてある程度流行ったものに対して自分のクリエイティブを乗せる、そのような感覚があります。

最後の「男子アイドル界隈」に関しては、普段かっこいい彼らの中に「可愛い」一面があるとギャップとしてファン化の役割を果たし、おそらくそれを本人たちも理解しているため、その意味でこういった可愛い訴求ができる楽曲はそもそも男性アイドルにも使われやすいです。

ただ前提として「流行りそうな曲に便乗する」というムーブはどの界隈にもおおよそ共通していますので、今回はやはり様々な界隈への波及が始まったことによってそのラインを超えたことが大きかったと考えられます。

⑤マッシュアップ動画

そして最後に少し変わった事例を単独で紹介しますが、それがこちらの動画になります。

@ksr_kl

さすがに合いすぎちゃったかも#fruitszipper #かがみ #smap #木村拓哉 #shake @FRUITS ZIPPER

♬ オリジナル楽曲 - KSR - ksr_kl
@masamidrums

低気圧ヤバすぎて20時に起きて今コレ

♬ オリジナル楽曲 - KSR - ksr_kl

ご覧いただくと分かる通り、これも先ほどのモンハンミームと同様に突発的な側面が強く、投稿するクリエイターも動機はひらめき、視聴者が動画を見る理由も「脳死で面白い」なので、そこまで狙って起こせるものではないですし、楽曲プロモーションとしては「外れ値」としてある程度除外してしまっても良いと個人的には思っています。

ただ、この動画から一定数のUGCが生まれたのも事実ですので事例として紹介させていただきます。
ここまでが主なUGC拡大経路とそのターニングポイントの分析になりますが、まとめる前にもう一つ重要な点を補足しておきたいと思います。

【+α 止まらない本家ブースト戦略】

印象的だったのが、上記の流れでUGCが拡大している中も本家自身が常に動画を投稿し再生を回し続けていた点。例えばリリースから1ヶ月以上経過した段階で、以下のようなコラボ動画も上がっています。

@fruits_zipper

3/19(水) 「MTV VMAJ」 📍Kアリーナ #INI#佐野雄大 さん と「かがみ」をコラボさせていただきました🪞✨ ありがとうございました👏! @official__ini #VMAJ #FRUITSZIPPER #ふるっぱー #フルーツジッパー

♬ かがみ - ますかるのゆあ ver. - FRUITS ZIPPER

これに限らず、イノベーターフェーズからそれを突破した以降に渡って、常に本家自身が動画を投稿することによって全体の再生数 (≒認知機会) の増加に寄与していました。
もちろん「流行ってる感」「ちゃんとしたヒット」が出るためには自分以外の多くのクリエイターがUGCすることが重要なのであくまでプラスアルファとして捉えるのが適切ですが、できる施策はやり切る、という点でとても大切だと思ったので紹介させていただきました。


こうして執筆現在UGC約4万に到達している「かがみ」
改めてヒットまでの経緯をまとめると、

・まずは本家が初動を作る
・その後、一部限定的にUGCされるもイマイチ広がらない
・そこで森香澄さんが登場し、流れを生み出す ←ターニングポイント
・広い界隈でUGCされ始める

そしてそのターニングポイントは「可愛くなりすぎちゃったかも」という哲学が一人のクリエイターに刺さったことにありました。
一方で爆発的なUGC拡大には至っていない理由もそこに存在し、その哲学的側面から「自分の曲として使いたい!」と反応するクリエイターが未だ若干少ないのかもしれません。(いくら一人によって流行感がブーストされたとしても)


【どうすればもっとバズったのか?】

前提として今回の「かがみ」はFRUITS ZIPPERが持つコンセプトや一貫性に沿った曲でありながらしっかりヒットを生み出していますので、そもそも成功していると思っています。
その上で今後更に上のヒットを目指すには何をすべきか?という視点でちょっとしたアイディアを綴らせていただければと思います。

そのためにまずはこの楽曲の素晴らしいた感じた点について触れさせてください。

優れていた点➀感嘆したサウンドでの差別化

まず冒頭のメロがすごく良いと思っています。
(「あれ?かわいくなりすぎちゃったかも」の部分)

具体的には初見だと変拍子に聞こえなくもない点で、
「あれ?」のアウフタクトを拍子頭だと捉えると拍子感が一瞬だけわからなくもなる。
これはセリフの箇所から切り抜かれた時の弊害です。

譜面にするとこういう誤解をほんの一瞬ですが生ませられる。
「ちゃった」の頃には「正」だと気づくのですが、初めて聞くとこの2秒間だけ少し違和感がある。

そしてその違和感が心地よいフックとなり既存コンセプトと同じでも別曲に聞こえているというのは伸びた理由だと思っています。

そもそも昨今のSNSバズ曲の傾向として「心地よい不協和」が確実にあります。不協和音や変拍子、ノイズなど予定調和ではない展開を心地よいタイミングで挿入することは特にK-PopやEDMなどでよく実践されています。

本楽曲では主軸となるコンセプトは彼女らが多数出してきたヒット曲と変えずともこうしたちょっとした違和感を生ませるメロディ的な工夫で胸に残るように工夫をしていた点は優れていた点です。


優れていた点②:冒頭のフックがありそうでない

「ますかるのゆあ ふるふるる」
の裏の編曲が素晴らしいです。

このレポートを毎度読んでくださっている方、弊社販売の教材の12章を読んでくださった方なら改めて説明するまでもないと思いますが、
楽曲の切り抜き箇所0秒目のサウンドは非常に重要です。
これは教科書12章で言うところの『インパクト系』に該当する伸ばし方をしています。

しかし裏でシンセの全音音階がなっている点はありそうでなかった引っ掛け方です。
冒頭の引っ掛け方は今まで数多のTikTokバズ曲が出てきた中である程度やり尽くされてきています。なので聴感覚が似てきてしまいます。しかし既聴感も大事で、斬新すぎることはできません。

その中で同じような効果(今回ならインパクト系)を狙いつつも、新しい工夫に成功していたのがこの曲です。


ここまでの話をまとめると本楽曲は、
楽曲コンセプトや持っている哲学は既存のヒット曲の路線と同じような方向性でありつつも、サウンド面の工夫で"外していない個性の出し方"をしていた優秀な作品だったと言えます。

今回はこの方向性を活かしたアイデアと、
少し外した方向性からのアイデアの2つをご提案したいと思います。


次曲案①:相性の良いクリエイター/タレントとコラボ

まず今回の方向性を活かしつつ更にUGCを増やす施策です。
教科書の7章でも語りましたが、今年の女性アイドル系はTikTokを活用するなら特別新しいことをやる必要がないと思っています。

ですので今回のように同じ哲学の中でちょっとしたサウンド面の工夫で変化を出すと言うアイデアは最高だったと思います。
これと同じ方向性でもう何曲かはヒットを出せると思います。

その中で「feat.」や「MV共演」「動画を一緒に制作する」などの形で親和性の高いアーティストやアイドルとコラボをするという方向性はアリではないでしょうか。

例えばですが、現在約8万UGCを記録している「すないぱー。/ 『ユイカ』」は、途中で大手ダンスクリエイターのローカルカンピオーネとコラボし、これがUGCの伸びにブーストをかけていました。

@yuika_singuitar

はーといっぱいでかわいい!!はーとはーと!!!!@ローカルカンピオーネ🗾👑 #すないぱー #ユイカ #オリジナル曲 #ローカルカンピオーネ

♬ Sniper - Yuika

特にこの事例では本家とコラボ先に集まってくる視聴者属性、UGC拡大の鍵を握る女性クリエイターに集まってくる視聴者属性、この2つが大まかに一致していたことから、このやり方でバズればどんどんその火は大きくなっていくような構造ができていました。

親和性が高いクリエイターとはどんな人なのかというと、推し活層の女性視聴者という共通点がありつつも、彼女らと少し界隈が被っていない属性です。

具体的には例えばTikTokで人気ですが層が少し異なる(女子小学生に人気)「しなこ」さん。

@candy_tune

原宿から世界へ🌏 しなこさんと『倍倍FIGHT!』🏁❤️‍🔥 ありがとうございました😉🍬✨ @しなこ🌷💜 #倍倍FIGHT #しなこ さん #きゃんちゅー#CANDYTUNE #TGC#TGC20th

♬ 倍倍FIGHT! - イントロ ver. - CANDY TUNE

同じく女性アイドルですが"次元"が違うVTuberの「星街すいせい」さん

などが良いズラしの候補となるでしょう。
候補で挙げた方はフラッシュアイデアではありますし、現実的に化膿不可能の問題はあるかと思いますが、界隈がある程度被っていつつ、新しいファンも取り込めつつ、コラボがアツいという方向性の頭の使い方はこんな感じになります。


次曲案②:病み系の哲学にする

そもそも哲学に飽きられてくる前に新しいものに挑戦しようと言う提案が2つ目です。

例えば「少し病んでる系の訴求」をするとかは面白いのではないでしょうか?
教科書で言うと2章の内容です。

前述した通りUGCを増やすにはクリエイターが「自分の曲として使える!」と思えることが重要で、さらにその思える人の母数が多い訴求をすることが基本的にはポテンシャルが高くなるわけです。

そしてもう一つ考えるべきなのは「ああ、またこういう感じね」と思われないよう、新しいモノ感も持ち合わせていること。


そうなった時に昨今の女性アイドル曲ヒットの傾向として、

ーーーーー
・わたしの一番かわいいところ = 自己肯定感UP
・最上級にかわいいの!= 乙女の逆襲、逆境への共感→自己肯定感の向上
・かわいいだけじゃだめですか? = 自己承認
ーーーーー

など代表的な曲を見ても「純粋に女の子がプラスの感情で共感できる曲」が多いです。


これに対し「共感」「可愛いブーストできる」という本質は押さえつつ、感情の切り口に変化を与えるなら、例えば少し趣向を変えて「闇堕ち」みたいなのも面白いと思うんですよね。

具体的にはフラッシュアイディアですが、
「私だけを見てよ。今目移りしたね?許さない。悪魔になって貴方の心奪いにいくから」
のようなコンセプトとか。

これはアイドルや女性クリエイター目線で、ファンが離れたことによるショックだったり、「〇〇ちゃんの方が可愛くない? (これは他人に言われた場合も自分で感じた場合も含む)」など少なからず経験したことのある本心を解放するという意味合いで、そこそこUGCしたくなるコンセプトになっているのではないかと考えます。

さらに普段王道の可愛いを征く子がちょっとダークな面を見せるのは、本人・視聴者双方にとって良いギャップになりますし、闇堕ちコンセプトは「〇〇ちゃんしか見てないよ!」などの視聴者アクションも見込めます。
あとは悪魔要素を入れることでカチューシャのコスプレをして踊るという「ハードルがそんなに高くなくてちょっとやりたくなる」イメージもついたり、歌詞をアイドル目線の悲しみに全振りせず、普遍的な浮気とか恋愛にも当てはまるような歌詞にすることで視聴者自身の感情移入も見込んだり…
…など無限に考えたくなってしまうのでこの辺にしますが、色々可能性ありそうだと思っています。

しかしここに正解はないですし、何よりやってみないことには分からないので最後に要点だけまとめると「過去にバズってきた本質は押さえつつも、ちょっとした変化を与えていく」ことが今後重要度が増していくはずで、そこだけ覚えておいていただけると幸いです。


2、哲学を乗せる楽曲クリエイティブ

ここまでUGCが広がったポイントを「哲学」を中心に解説してきましたが、実はここからが最も重要です。
というのも自身で楽曲を作る際には、その哲学をどうやって音楽に乗せ伝えるか、その「実現力」が命運を分けるからです。

というわけでここからは「かがみ」において音楽的に着目したいと思った部分に触れていきます。


①楽曲コンセプトに合った「ポジティブ」を表現する編曲

本楽曲はブラスメインの編曲がされており、これは過去アイドル系ヒット曲を見てもハピネスに相性の良い編曲です。ここは普段の形をオーソドックスに活かした素敵な選択だと思いました。


②アイドルらしい可愛いボーカルアレンジ

さらにそのポジティブ・明るい可愛さを体現している声の使い方も簡単に触れておきます。

これを印象作っているのは大きく以下の2点で

・喉を上げ気味かつ狭めに使う

・優しめの発声

例えば喉仏を上げると比較的幼い声になりやすく、また狭め (少し喉を絞るような感じ) で使うことで少女感というか、よりキュルンとしたガーリーさが生まれます。さらにその感じでそこまで強く出力しない発声を採用することで、より乙女感がでています。

…というのを言葉で説明はしたものの、重要なのは自分が出したい音色や全体の印象 (デザインでいうトンマナのような感じ) を感覚で捉え、再現できる「イメージ力」だと最近は個人的に感じています。いずれにせよ、アイドルといえばこういった声の使い方は定番ですね。


③冒頭のおまじないフレーズ

こちらは先ほども触れましたが改めてマーケティング的側面とサウンド面の両方から触れたいと思います。

まずマーケティング手法の領域にはなりますが、印象的なのはやはり冒頭の「ますかるのゆあ ふるふるる」ですね。
この突飛なフレーズがバックのオケもほとんどない状態でいきなり耳に入ってくるので、インパクトがあるというか、気になってしまってある程度冒頭の離脱防止に寄与していると思います。

参考までに、このような突然の印象がグッと興味を惹きつけることは「カクテルパーティー効果」という心理効果で証明されています。

過去ヒット曲だと

・最上級にかわいいの!冒頭: だって今!
・シカ色デイズ 冒頭 : ぬん!

などで似た手法が使われており、これは冒頭の離脱を防ぐのに役立つ鉄板ではありますが、やはりこの手の入りもそろそろ脳死で使い続けると外す時代が来そうだなという感じがしています。
色々なクリエイティブ、音楽に触れることで良い変化をしていきたいところです。

個人的に2025年のアイドル曲は、24年に隆盛しきったTikTokアイドル曲に対する「飽き」とどう向き合うかが課題になると思うので、このような今までにはなかった秀逸なアプローチがされていることがとても勉強になりました。


④単純明快な哲学提示とそのタイミング

これは歌詞の作り方とその構成の話になりますが、
「あれ?かわいくなりすぎちゃったかも」というこの楽曲のコアになる部分をどストレートにわかりやすい表現で、かつ冒頭を除いた最初のフレーズに持ってきているのが意外と重要なポイントだったのではないかと思っています。

UGCするクリエイターの動機は度々お伝えしている通り楽曲のコンセプトや哲学を重視していて、少なからずそのコンセプトというフィルターをかけて視聴者もその動画を見ます。

そうなった時にそのコンセプトがシンプルに伝わる、しかも早い段階で、というのは当たり前のように思えて意外と重要な要素ではないかと思い触れさせていただきました。

思えば「かわいいだけじゃだめですか?」も「最上級にかわいいの!」も序盤でストーリーやコンセプトが伝わる構成になっていますよね。
この冒頭1フレーズの「開発」こそがTikTokヒット曲の作曲において一番大事になってきます。


3、時代背景における本楽曲の立ち位置

さて、ここまで「どうすればバズるか?」という視点も交えながら、楽曲のメッセージ性や音楽要素について解説してきました。

ですがバズる曲を作る上でもう一つ非常に重要な視点があります。

ーーーそれが「時代にハマっているか」です。

昭和に人気だった曲を今聴けば「昔感」を感じるのと同様に、ヒットする曲には今人気になる理由がしっかりと存在することが多いです。
ですので本セクションではその部分を「かがみ」がどのようにクリアしつつ、どういった立ち位置にあるのか見ていきましょう。


ここでのポイントは「安定」と「変化」です。

まず1、バズの拡大経路 (1)イノベーター③影響力のあるアイドルグループで触れた内容にもなりますが、やはり2025年もこの純粋な可愛いやアイドルへの需要は健在です。

事実その需要にしっかりと沿い、今の数字を生み出したのがこの「かがみ」と言えるでしょう。

一方で視聴者を飽きさせないように、新しいモノと感じさせることも重要で、それはここまで触れた「既存のコンセプトは活かしつつも、サウンドやちょっとした部分で異なるフックを作る」が一つの解決策として存在すると思います。

つまりそのオーソドックスに需要に刺す「安定」とその中で新しい価値を付与する「変化」が重要なわけです。

その2点において「かがみ」はどちらかといえば「安定」の側面が強く、確実なヒットを生み出した楽曲と言えるでしょう。


4、ヒットの後に待つもの

楽曲ヒットの分析・見解は以上となりますが、ほとんどの方は楽曲をアーティストプロデュースの一環として行っているのではないでしょうか?
その場合、楽曲単体のヒットで終わらないようしっかりとその後に得られた成果についても考えておく必要があります。
では、このヒットをきっかけに彼女らには一体どのような影響があったのでしょうか?

「成果」


YouTubeのMVがリリースから1ヶ月で800万再生突破。


また、これをもって新曲3ヶ月連続配信リリースが決定し、2月にはABEMA「恋する❤️週末ホームステイ 2025 冬」の主題歌「好き、お願い」が配信されるなど、やはり勢いのあるグループとして「かがみ」にとどまらない活躍をしています。

さらに、今年5,6月にはホールやアリーナでのライブが決定しており、アイドル・アーティストなら多くの人が憧れであろう舞台もしっかりと実現しています。

参考:https://asobisystem.com/news/53716/


これを踏まえて、やはりTikTokでのヒットはあくまでアーティストにとって一つのピースでしかないという話をしたいと思います。

「TikTokヒットはそれ以上でも以下でもない」

まずはこちらをご覧ください。


これはYouTubeのMVコメント欄からの抜粋ですが、なぜ視聴者が彼女らのファンになっているか、その一部が垣間見えると思います。

・憧れ、崇拝対象としての輝き
・楽曲に込められたメッセージと伏線回収
・本人たちの努力やその軌跡とのマッチング

ここからわかるように、彼女らが大きな箱でライブをできているのは単に曲がバズったからではなく、ちゃんとその後ろの感情の動き、好きになってしまうポイントというのがちゃんと存在するからなのです。

それを踏まえると、ヒットというのは単体で意味があるものではなく、「視聴者がそのアーティストのファンになるポイント」に到達してもらうまでのフェーズの一端なわけです。

実際「かがみ」は今よりもさらにかわいく、輝ける自分へ近づこうという前向きな気持ちを歌った楽曲で、タイトルの「かがみ」にはこれまでも、これからもファンの人たちと一緒に歩んでいきたいという気持ちから“ファンはFRUITS ZIPPERの鏡であり、FRUITS ZIPPERはファンの鏡である”という思いも込められているそうです。
(参考:https://asobisystem.com/news/53716/)

それを知った上でこの曲を聴くと見え方がさらに変わってきますし、一概にバズ具合が大きい楽曲 = 優れているではないので、より広く視野を持つようにしようと僕自身も改めてとても学びになりました。

あくまで本当のゴールを忘れないことが重要ということですね。


5、再現性のある要素

ここまで楽曲ヒットから最終ゴールに到達するための話まで、かなり情報量が多かったと思いますので、最後に今回の重要ポイントをまとめて終わりたいと思います。

共感性が高く、クリエイターが自分の曲にしたいと思うコンセプトを作る
今回であれば「かわいくなりすぎちゃったかも」という自己肯定感の非常に高いコンセプトが、ヒットのターニングポイントを生むと同時に、UGCするクリエイターの幅を狭めている側面もありました。
総合的に見て、どのようなコンセプトであれば明確かつ広く刺さるモノになるのか、この視点は0→1を作る上で非常にコアとなるポイントです。

新しい価値、変化を生み出す
確実に需要に刺すと同時に既存曲と異なるものとして聴いてもらえる工夫も重要です。
今回は冒頭に「全音階」が使われていたり、サウンド面でまた新しいモノになっていました。

最終ゴールに繋げろ
「TikTokヒットは1つのピースに過ぎない」というのは先ほど触れた通りです。楽曲ヒット、認知を取ることは非常に重要ですが、それはあくまでライブ動員などの本当に成し遂げたい何かに繋げるための一端にすぎません。バズらせる視点と、そこからファンになってもらう視点、そういった人間の感情の動きを全体設計に組み込む視点を持つことが最も大事なことと言えるでしょう。



「かがみ」の分析は以上となります!
ぜひご自身のバズ楽曲制作、アーティストプロデュースに活かせるものになっていたら幸いです!

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