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【かわいいだけじゃだめですか?】 Hitの理由分析レポート 〜 TikTok今週の1曲 [No.14 - 24/12-3]

こんにちは!今回はTikTokの分析です。

「かわいいだけじゃだめですか?/ CUTIE STREET」について分析していきます。

執筆:株式会社ハイトリンク(スイ・山本慶太朗)

「かわいいだけじゃだめですか?」に注目すべき理由

本楽曲はTikTokでのUGCが15万を超えており、
これは国内ヒット曲で今年最大規模の数値です。

※UGCとはUser Generated Content の略で、特定の楽曲を使って不特定多数のユーザーが投稿した動画の数を指します。

例えば以前同様に今年最大級のTikTokUGCHit曲として紹介した
「シカ色デイズ / シカ部」はリリースから5ヶ月経った現在UGC17万なので、
リリースから2ヶ月足らずでUGC15万を叩き出した「かわいいだけじゃだめですか?」の凄さは容易に想像できると思います。

……というわけで、そんな特大ヒットを生み出した成功の秘訣を本レポートでどこよりも分かりやすく解説いたします。


「かわいいだけじゃだめですか?」がヒットした最大の理由

大前提としてUGCが伸びるということは、

・クリエイターがその曲を使いたいと思う理由
・視聴者がその動画を面白いと思う理由

この2つが揃っている必要があります。

そして「かわいいだけじゃだめですか?」においては

クリエイター側 : 強烈な可愛いフィルター + 可愛いアピして何が悪いの?という本心の解放

視聴者 : 可愛いものを見て目の保養にできる

というのが本楽曲ヒットのコアになっていると考えられます。
特に視聴者の感情はコメント欄を見ると明らかです。

詳細はここから深ぼっていくとして、今回はこのコアを軸に分析を進めていきたいと思います。


1、バズの拡大経路

まず始めに、UGCというのは複数の界隈を渡って広がっていくものなので、初期のバズからそれ以降の拡大までどのようなきっかけでどんな界隈に広がっていったのかを分析することが重要になります。

それを紐解くべく、弊社では【イノベーター理論】を用いて分析をしております。
イノベーター理論とはサービス等の市場での普及率を示すマーケティング理論の一つになります。
※詳しくは以下のサイトを参照ください。

今回もそれに倣い拡大経路の順を以下の3つに区分してリサーチいたしました。
それぞれの区切りは本家リリースから投稿までの期間で判断します。
ざっくり以下の通りの認識で今回は分析します。

(1) イノベーター (一番最初に広まったきっかけ)
 →今回はリリース同日〜数日以内で投稿されたもの

(2) アーリーイノベーター (初期段階で拡散されたきっかけ)
 →今回は約2週間以内で投稿されたもの

(3) アーリーマジョリティ (早期段階でさらに拡散されたきっかけ)
 →今回は約2週間以降で投稿されたもの


(1)イノベーター

まずはこのイノベーターが最初に楽曲が広まるきっかけになりますが、今回のイノベーターは【本家】であり、
ここで紹介する最初期の3動画だけでも累計1,500万回再生を超えます

前章で「本楽曲はクリエイター目線でも視聴者目線でも人気になる要素を押さえている」という話をしましたが、そもそも楽曲の存在自体が広まらなければ始まらないため、最初のバズ、つまり認知を獲得することが第一フェーズになります。

今回の場合それを本家自身が達成したわけですが、その理由はどこにあったのか?
先ほどのコアをもとに分析していきたいと思います。

まず、クリエイター側が使いたくなる理由はそもそも自身の楽曲なので省くとして、なぜ視聴者目線で刺さるコンテンツになったのか?(=再生数が伸びたのか) に着目します。

前章でもお伝えしたとおり、こういったアイドルや美女を見る視聴者の感情は「推し」や「憧れ」総じて「可愛いものを見て目の保養にしたい」という理由が大きく、これはこの動画のコメント欄からも明らかです。

つまりアイドルが持つ「可愛い」を大きく引き出し、視聴者の心にグサっと刺さるコンテンツだったからこそ伸びたというのが結論になりますが、では具体的にどこがポイントになっていたのでしょうか?
ここでは大きく分けて2つ解説します。

①可愛いインフルエンサーとのコミュニケーションを促進している

UGCの多くが「かわいいだけじゃだめですか?」という歌詞を冒頭としていますので、冒頭スワイプ率を重視するTikTokアルゴリズムに於いてここに何かバズの理由があると考えるのが自然ですね。

女性TikTokerを好む視聴者の多くは「可愛い子を見て目の保養にしたい」と思っています。
そんな彼らに「かわいいだけじゃだめですか?」と問いかけるのはコメントやいいねでのコミュニケーションを促進します。

理由を視聴者とインフルエンサーの思惑毎に各フレーズに分解して詳しく解説します。

「かわいいだけ」
【インフルエンサー視点】可愛いTikTokerの自己顕示欲の刺激
 →例:私って可愛い上にセクシーで、歌のセンスもいいんだよなぁ
【視聴者視点】推し理解自慢
 →例:~~ちゃんは可愛い以外にも魅力があるって俺だけが気付いてる。ふん、画面上でただいいねしてるだけのお前らとは違うんだ。俺は握手会で何度もあってるしライブ配信も見てるからかわいいだけじゃないって分かってるんだ。

「じゃだめですか?」
【インフルエンサー視点】あざとさのアピール
 →例:はいー上目遣い!だめじゃないよーって言いなさい!
【視聴者視点】まんまとそれにハマる
 →例:だめじゃないです!!〜〜ちゃんは最強可愛いのでかわいいだけでOKです!!!!!

このような思惑が交差していると考えると、コメント欄で下記のような議論が起こる事が推察できます。

・あなたは最強に可愛いからかわいいだけでいいんだよー!
・かわいい"だけ"!?!? かわいい以外にも魅力がある~~ちゃん最高!
・【メタ的】可愛いだけじゃダメです。資格をとってください。

実際のコメント例がこちら。

引用元UGC:https://www.tiktok.com/@cutie_street/video/7414130705019456776
引用元UGC:https://www.tiktok.com/@minami.0819/video/7421498581741341960

ここまで小難しく解説しましたが、もっとシンプルに考えると

  • 視聴者は可愛い子に「可愛いよ!!!!」ってコメントしたいからTikTokを起動している

  • インフルエンサーはいろんな人に可愛いって言ってもらって自己顕示欲と再生数の両方を満たしたい

  • TikTokはコミュニケーションが促進される動画をバズらせて広告費を稼ぎたい

このような構造で成り立っている場所な以上「かわいいよ!」って言い合える場所をストレートに提供できる歌詞はバズり易いです。

以前解説したとき宣さんの「最上級にかわいいの!」など含め数多くのストレートにこれを追求した曲が伸びていますが、

今回はそこに対するスパイス要素として「だけじゃだめですか?」が採用され、それは上記のような理由で受け入れられた、と解釈するのが正しいでしょう。


【補足】そもそも何故"かわいい"とストレートに言うアイドル曲が今人気なの?

先日このようなツイートが伸びていましたが、これに対する我々なりのアンサーを補足としてまとめようと思います。

そもそももっとマクロな視点として

「かわいいだけじゃダメですか?」= 「それだけで十分じゃない?」

というメッセージは自己承認を求めるニュアンスが強く感じられ、
これはメインの視聴者層であるZ世代にとって、よく共感できる内容になっています。

SNSが発達した今、若者は自信を喪失しがちです。

例えば自分は学校で一番可愛いと思っていたのに、SNSでは手軽に東京のもっと可愛い同世代の子の情報を知れるようになったし、
自分は学校で一番絵が上手いと思っていたのに、SNSでは同世代でもっと絵の上手い人の投稿がバンバン流れてきます。

鎖国された世界で「勘違いを発端に自信が生まれる」というのは若者にとっては必要だと思います。個人的な話ですが、私もクラスで一番音楽ができる、という勘違いから音大受験を目指し、世界を知り途中で挫折しながらも努力して結果的にプロになれたので余計そう思わずにはいられないのです。

SNSネイティブ世代は自信喪失の機会に満ち溢れた世代とも言えます。
「かわいい」に限らず、自分の才能や自信を他者から認めてもらう事に憧れを持っているのです。
そんなZ世代の若者にとって自己承認してもらえる世界や、自己承認されている人は憧れの対象として映ります。


あとはシンプルにコンテンツが溢れかえっているのでユーザーはタイパを重視し、奥ゆかしい噛みごたえのある歌詞表現よりもストレートでわかり易いものが数字がつき易い、というのもありますね。

これが昨今TikTokUGCに限らず、ストレートなかわいい表現がSNS全体で人気な理由です。


②アイドルという強い崇拝対象

①の楽曲内容に加え、シンプルに可愛い女の子の集団という構図自体が強いこともバズ理由の一つです。
可愛い子が複数人写っている様は絵として強いです。一人でも好みの子がいれば画面に視聴耐久するからです。

これは冒頭でもお伝えしたように、視聴者の感情としては可愛いものを見ることで「憧れ」の対象になり、それが視聴に繋がっています。

そしてその憧れの対象が一画面の中に複数存在するというのがアイドルが文化として強い理由ではないかと考えます。


【補足】 : 視聴限度回数の高さ

動画単体で伸びた理由とは別に、もう一つ重要なのが本家動画が複数伸びている点。
つまりは「可愛い」を単体で大きく引き出すだけでなく、より多くの回数引き出せたことも全体の再生数向上に寄与しているわけですが、そのポイントが「視聴限度回数の高さ」

これについては以前紹介した「最上級にかわいいの!」と全く同じ現象が起きていますので、ぜひ以下のnoteの”第一章「バズの拡大経路」(1)イノベーター”の②をご覧いただければと思います。

ここでも内容を端的にお伝えすると…

・そもそも視聴限度回数とは「同じ企画を繰り返し見てもらえる回数」である
例) 同じアカウントの同じダンス動画が毎回伸びる

・その現象が起きるのは「ぼーっと見ても感情が満たされるから繰り返し見れる」「登場メンバーなどにバリエーションがありそれだけで別物として見れる」などの理由がある

・アイドルにおいては「可愛い = ぼーっと見ても癒される」「メンバーの違い、服装の違い = 毎回異なる”可愛い”を見れる」などの理由から複数動画を見てもらいやすい

ということになります。

つまり可愛い訴求やアイドルグループという形態そのものが「自身がイノベーターとなり再生数を底上げするのに相性の良い構造」にもなっていたということです。



まずはこの2つが大きな理由となって最初の楽曲認知獲得に繋がったと推測しており、
以降はアーリーアダプターとして複数のクリエイターにUGCが波及していくわけですが、その流れと理由についても見ていきましょう。


(2)アーリーアダプター

①1番手:流行敏感女子界隈

@ryoka_720

音源キターーーー👼🏻🎀可愛いすぎ😭😭♥️

♬ かわいいだけじゃだめですか? - 1サビ - CUTIE STREET

早い例だとほぼ本家と同時に、「流行敏感女子界隈」でUGCが広がり始めます。

彼女らの一番の欲求は「もっとバズりたい!」です。
故にトレンドになりそうなものにはいち早く飛びつく傾向にあり、
今回は最速の事例だと本家と同日のUPでした。

さらに「バズりたい!」という欲求は大前提にしつつ、彼女らは基本的に自身の”可愛さ”で認知を取りたいという承認欲求があります。

またそこにいる視聴者も前述したように「女の子の可愛さ」を求めているため、この曲がクリエイターに使われ、視聴者的にUGCの再生数も伸びるのは至極妥当な現象と言えるでしょう。

②2番手:TopTikToker界隈

少し後にして、TopTikToker界隈のUGCが現れ始めます。

彼女らの特徴は「自身のブランディングにプラスになるかどうか」で選曲をするということ。
TIkTokトレンドの行方を決める彼女らに使われるかどうかはかなり重要な分岐点となってくるので、今回そこを突破できたのは大きかったでしょう。

そしてそのポイントとなったのが「強烈な可愛い訴求を認める風潮」ではないでしょうか。
当然TopTikTokerも自身の可愛いを見せたいので、強烈に可愛い楽曲を使うのは当然だろという話もあるのですが、それを受け入れられやすい時代背景が訪れているという部分は割と重要だと思っています。

これはTikTokにおける可愛いの見せ方全体の流れになりますが、
2024年の風潮として「どストレートな可愛い訴求は敬遠される」という傾向にあり、
例えば2022年「可愛くてごめん / feat. ちゅーたん (CV : 早見沙織)」などの露骨なアピールができる曲よりも、「全方向美少女 / 乃紫」や「魔性の女A / 紫 今」など少し婉曲的な見せ方をする楽曲の方が2024年前半はヒットする傾向にありました。

しかしその後「最上級にかわいいの!」などのどストレートな訴求をする楽曲が再びヒットするようになり、「やっぱり素直に可愛い見せするのも良いよね」という風潮がクリエイター・視聴者双方に直近で浸透してきたと言えます。

故にTopTikTokerにとってもこのような強烈な可愛い見せをすることにリアルタイムで心理的な抵抗がなく、「かわいいだけじゃだめですか?」が問題なく使用された理由もここにあると思いますし、視聴者ウケも当然のようによかったのではないでしょうか。


③3番手:芸能人界隈

TopTikToker界隈でUGCが広がりTIkTok上での地位が確立されてきた最中、さらに芸能人界隈でもUGCが広がり始めます。

@anovamos

さっき間違えて投稿しちゃって投稿し直し

♬ かわいいだけじゃだめですか? - 1サビ - CUTIE STREET

彼女らはTopTikTokerよりもさらに多くの人々に注目される立場ですので、自身のブランディングにかなり気を遣って選曲をすることが想定できます。

つまりUGCする動機としてはTopTikTokerのさらに審査基準が厳しいverという感じですが、ここでも「純粋な可愛さ」という訴求は問題なくそれを突破します。

しかしこの曲が使用された理由はその単純性以外に、もう一つ大きなポイントがあると筆者は推測しています。
それが冒頭でもお伝えした「可愛いアピして何が悪いの?という本心の解放」

これはTopTikTokerパートでお話しした内容にも関わってきますが、「素直な可愛い見せ」が復活してくるまでの背景には「可愛いのは事実なんだから別に見せたっていいでしょ」というある種の不満を抱えていた人たちも少なくないと思います。

それは芸能人も同じで、例えば今回取り上げたあのちゃんや森香澄さんは一部の視聴者から

「ぶりっ子」「あざとすぎて嫌い」

などと言われることも珍しくなく、先ほどお伝えした不満に近い感情を日頃から抱えていた可能性は十分にあります。

それを踏まえると「かわいいだけじゃだめですか?」の”可愛いんだからそれで正義でしょ”という強気な姿勢は彼女らの内的感情を刺激する十分な理由になった、と考えることはできそうです。


④4番手:韓流・男子アイドル界隈

TopTikToker、芸能人など女性の間で大きく波及すると同時に、男性アイドルにも幅広くUGCが広がります。

@official_dxteen

かわいいだけじゃだめですか?🐬 #DXTEEN #DXTN #大久保波留 #NALU かわいいだけじゃだめですか? #CUTIESTREET

♬ かわいいだけじゃだめですか? - 1サビ - CUTIE STREET

彼らがファンに向けて提供するものは基本的に自分の「かっこいい」です。

しかしその中に「可愛い」一面があるとギャップとしてファン化の役割を果たすため、その意味でこういった可愛い訴求ができる楽曲は男性アイドルにも使われやすいです。

ゆえに女性だけでなく一部男性にも使われるのは必然的だといえますし、
女性ファン視聴者も「イケメンが可愛い動きをしている」という光景そのものが目の保養になるため、こちらもクリエイター・視聴者双方にとって人気となる理由が揃っていました。

とはいえその理由だけで界隈も言語も全く違うアカウントでUGCされるかというと少し不足している部分があるため、そこについても触れておきたいと思います。

今回この界隈でUGCされた根本的な理由…それは
"可愛い曲✖️男性アイドル"の動画が日本でウケるということを彼らが認知できたから」です。

そしてその認知のきっかけになったのはいわゆる"推し動画”です。

推し動画とは例えば以下のような動画で、今回も割と初期の段階で韓流アイドル関連の投稿が見受けられます。


再生数こそそこまで伸びていないですが、本人たちがエゴサをすれば簡単に到達できますし、
この曲に限らず可愛い系の楽曲で男性アイドルの推し動画が作られる文化はずっと続いており、これを彼らがエゴサを通じて認知したとしたら、自身でもUGCしよう!となるのは自然と言えるでしょう。

ーーーー

ここまででおおよそ主となる界隈には広がりきったと言えますが、この特大ヒットの凄さを強調するかのように最後また少し異なる界隈にも波及します。


(3)アーリーマジョリティ

男性歌い手アイドル界隈

以降に広がったのはこの界隈。
こちらについては広がったタイミング、理由など、以下note ”第一章「バズの拡大経路」(3)アーリーマジョリティ”の「歌い手・VTuber界隈」と同じ現象が起きていますのでそちらをご覧いただけるとわかりやすいかと思います。

端的には、

・この界隈は既にある流行りに乗っかって「自分も楽しみたい」や「着実に再生数を取りたい」などの欲求があり、流行りの波を感じ取った後に動く傾向にある
・特に可愛い見せは歌い手ファンの女性にとって母性を刺激し、ファンになる重要なファクターである

故に可愛い訴求でトレンドとなった楽曲を男性の歌い手が使うのは必然だったし、視聴者目線で再生数が伸びるもの必然だった、というような内容になります。



こうして執筆現在UGC15万に到達している「かわいいだけじゃだめですか?」
改めて波及した理由をまとめると、
・クリエイター / 視聴者双方にウケる強烈な可愛いフィルター」
(+クリエイターの本心を解放させる切り口)

上記がコアとなっていると言えるでしょう。

では、その「強烈な可愛い」がコアだと分かったところでそれが音楽制作の視点でどう落とし込まれていたのか?ここからはそれを紐解いていきましょう。


2、可愛い全体感を作る音楽的要素とは?

「かわいいだけじゃだめですか?」のヒット理由となった「強烈な可愛さ」
しかし、仮に同じように可愛い曲を作りたいと思ってもそれを自分で体現するのは簡単なことではありません。
というわけで本セクションでは強烈な「可愛いさ」が音楽的にどう表現されていたのかみていき、自身に落とし込めるように言語化していきたいと思います。

大きく分けて2つの要素を解説します。

①ハツラツとした可愛さを表現する編曲
②アイドルらしい可愛いボーカルアレンジ



①ハツラツとした可愛さを表現する編曲

これも結局前回の「最上級にかわいいの!」の分析と似たような結論になってしまうのですが、

・シンセベースのきらきら感とドラムと一緒になった時の存在感
・トラック数多めのウワモノでキラキラする

などで動画に載ったとしても1秒で伝わる可愛いサウンドを作れていた点は秀逸と言わざるを得ないでしょう。


②アイドルらしい可愛いボーカルアレンジ

さらに可愛いを直感的に視聴者に感じてもらうために、声の使い方も非常に重要となってきます。

特に重要となっているのが2つで、1つは口角を上げるような歌い方をすることで声色が明るくなったり、アイドルらしい元気な印象になっていること。さらに喉仏を高めに歌うことでその声質を幼く可愛いガーリーな印象にしています。

これらは「最上級にかわいいの!」のときもそうですし、ほとんどのアイドルボーカルのベースになっている声の使い方です。


③和のサウンド

今回他と違くて面白いなと思ったのがサビの折り返しで「歌舞伎」を彷彿とさせるような和楽器サウンドが入っていた事です。
「ヨォー!」という掛け声や、堤太鼓の音などですね。(このヨォーっていうサンプル、同じのがずーっとJ-Popで使われてますよね笑)

これにより歌舞伎のポーズを取るフリが映える形となっています。

これは
・癖になる(最後にこのポーズをどんなふうにUGCでされるのか見たくなる)
・スパイスとして機能するので視聴耐久度が上がる

などの効果として機能していました。
それを機能させるように「わかり易いサウンド」で和を表現できていたのは応用の効く表現とサウンドだったと思います。



3、TikTokに最適化された楽曲構成

前章ではヒットのコアとなった「可愛い」を音楽で表現するポイントを分析しました。
これで楽曲のテーマに沿った”全体感”は作ることができます。
しかしここでもう一つ重要となってくるのが、それをどのように流れで見せるか。

TikTokで再生数を獲得するためには「冒頭での離脱防止」「視聴維持率の確保」など、せっかくの良い曲を視聴者に最後まで見てもらうための仕掛けが大切となってきます。
というわけで本セクションでは「かわいいだけじゃだめですか?」の可愛さに加え、マーケティング的に秀逸だった部分を見ていきたいと思います。


➀冒頭の問いかけフレーズ (=冒頭の離脱防止)

冒頭「かわいいだけじゃだめですか?」の部分は非常に印象的だと思いますが、このような突然の問いかけがグッと興味を惹きつけることは「カクテルパーティー効果」という心理効果で証明されています。

ここでは、あたかも自分に問い掛けられたかのような歌詞によって無数の動画をスワイプする手をつい止めてしまう現象が起きていますが、

例えば過去ヒット曲だと

・最上級にかわいいの!冒頭: だって今!
・シカ色デイズ 冒頭 : ぬん!

などで似た手法が使われており、これは冒頭の離脱を防ぐのに役立つ鉄板スタイルです。


②鉄琴の階段メロディ (=サビへの期待感)

①に関連してですが、①を正しく機能させるにはブレイクを入れて主張をわかりやすくする事が求められます。
ですので本楽曲もリズム系がミュートされ、ウワモノだけになっているのですが、そこに鉄琴系の高音を入れる事で"あざとさ"をうまく表現しています。やりすぎてもダメだと思うので、良い塩梅ですね。


③感覚的な訴求と情報量の多い歌詞 (=維持率の担保)

今度は冒頭以降の維持率を高める仕掛けですが、
全体を通してかなり特徴的なのが歌詞が直感的な訴求になっている点です。

例えば

「右・左・正面」
「キュン死させちゃう」
「ぎゅぎゅっとして」
「時は戦国小野小町も」

などが挙げられますが、

この「意味はわかるけど理路整然とした日本語になっていないフレーズ」、しかもそれをアップテンポなオケに詰め込んでいるので視聴者としてはつい流れに乗って聴き入ってしまいます。

例えば今年のヒット曲だと「Bling-Bang-Bang-Born」「しなこワールド」などは完全にこの感覚的訴求に振り切っており、タイパが求められる今の時代はこういった何も考えずとも満足感が得られる曲は強い傾向にあります。

「かわいいだけじゃだめですか?」もここまで感覚に振った訴求ではないにしても、そのエッセンスが入っていたと思います。
直近だと「POP IN 2 / B小町」が類似の要素を持ってヒットしていて、感覚訴求のレベルも近いかもしれません。

@kanzakianna36

沢山の人に知ってもらえたMEMちょコスを1年ぶりにしたよ~~!!新曲好きすぎる😈💛 #POPIN2 #B小町 #推しの子コスプレ #MEMちょコスプレ Oshinoko(@TVアニメ【推しの子】公式 様) #cosplay #踊ってみた #神綺杏菜

♬ POP IN 2_推しの子公式 - TVアニメ【推しの子】公式


4、時代背景における本楽曲の立ち位置

ここまででUGCが伸びた根本の理由とそれを表現する音楽面の分析をしてきました。
ですがバズる曲を作る上でもう一つ非常に重要な視点が「時代にハマっているか」です。

このセクションではこの楽曲が昨今の可愛い系楽曲においてどういう立ち位置にあったのか?その上でこの方向性で次バズらせるとしたら?という部分を解説していきます。


このレポートももう10回以上やっているので、もしかしたら全て読んでくださっている方は気づいてきたのでは?と思うのですが、
TikTokで伸びる曲には幾つかのパターンがあります。
※近いうちにバズパターンまとめ記事を1本作ろうと思います。

今回楽曲は典型的な「アイドル可愛い曲」パターンです。
このパターンはTikTok黎明期から根強い人気があり、過去も現在も、そして未来も暫くは続くヒットの定型例です。

このパターンの伸び方をする場合、逆に「型にはまってる感」が勝つ理由であり、変化をさせすぎるのは逆効果になると考えています。
(つまりパターンによっては型っぽさを出さない自然な感じの方が伸びる場合もあるのですが、逆に今回のパターンは狙ってる感が出る方がむしろ歓迎される)
これにはいくつか理由があるので、次1本しっかりまとめます。


例えば直近の可愛い系楽曲で似たものだと
「最上級にかわいいの!」
が挙げられると思いますが、こういった曲とどこが共通していてどこが違ったのでしょうか?

まず共通点として挙げられるのは
「共感性が高く女の子の可愛いを増幅させられるメッセージ」です。

・「最上級にかわいいの!」
→ 失恋して強くなった乙女の姿

・「かわいいだけじゃだめですか?」
→ 可愛いアピして何が悪いの?

が該当します。

しかしその中で同じことをするに留まらず、
・感覚的訴求 (=色々詰め込まれていてタイパがよく感じられる)歌詞
・Z世代全般に届く自己承認のメッセージ

など従来の曲にはなかった要素で差別化も図っていたのが本楽曲です。

つまり、可愛いアイドル曲に求められるベースは押さえつつ、劣化コピーや既視感をなくすために別の切り口を取り入れてのヒットだったと筆者は踏んでいます。


5、バズった結果得られたものまとめ

楽曲ヒット理由の分析は以上となりますが、そこからアーティストにどんなリターンがあったのかがアーティストをプロデュースする上では重要になるポイントです。
このヒットをきっかけに彼女らには一体どのような影響があったのでしょうか?

(1)成果


YouTubeのMVがリリースから2週間で400万再生突破。

さらにワンマンライブや地上波メディアにも出演。

驚くべきはデビューから2か月ほどでここまで人気になっているということですが、その人気の秘訣についても少し触れたいと思います。

(2)デビューから2ヶ月で特大ヒットとライブ・メディア出演まで繋げた秘訣とは?

視聴者目線で考えると、TikTokで知った後に見るのは本家MVが多いと思いますのでそちらを確認してみましょう。

実はこのMVが結構特徴的で、このようにシンプルな映像に顔アップの画角が多く、これについて以下のようなコメントがついています。

つまり、余計なものを排除してシンプルな可愛さのみでゴリ押している点が

・元祖アイドルのキラキラ感
・TikTokで感じたメッセージからの一貫性

を感じさせ、これが魅力となりファンになっているようです。

ここから分かることは、重要なのは「視聴者をファンにする自身の魅力やメッセージ、そしてそれを伝える一本線」であり、オリジナル曲をバズらせるというのはその線上にある1つの点に過ぎないということです。
その前提ありきのTikTokバズであり、そこからYouTube等に移った時に何をどう見せたいのか?
そういった全体設計がハマるとファンになるということです。

「かわいいだけじゃだめですか?」は単体ヒットに留まらず、その一本線の中で綺麗に機能していたと思います。


6、再現性のある要素

①バズの型を理解し、踏襲する

今回であれば「どストレート可愛いアイドル曲」という時代の流れを汲み、余計な仕掛けを付け加えず、しかし受け入れられる範囲内で良い変化をもたらしていたのが良い点だったと思います。

自分達の作る曲が、どんな潮流を意識して乗せるのか?
ここをしっかり踏襲し、変えるべき箇所は変える、変えない箇所は変えないといった切り分けがしっかり楽曲や施策に反映されていれば確実に伸びます。


②楽曲バズは一本線を繋げる点の一つとして使う

一発曲が大バズしてもライブ動員ができなければ意味がないですし、アーティストにとって基本的に最も重要なのは自身にファンがつくことです。
そう考えるとまず自分のどこを魅力に打ち出すのか、それを伝えるための流れ (一本線) とは何なのか、そしてその中でオリジナル曲をバズらせることはどういう意味を持つのか。
こういった思考の流れが重要になります。

例えば今回のアイドルググループ「CUTIE STREET」は元祖アイドルの可愛いキラキラ感が軸となっていて、TikTokでバズった箇所はそれを伝える入口 (=認知獲得)に過ぎませんでした。
そこからYouTubeに落ちてきた時も「可愛いをゴリ押す」という一貫性があったからこそファンになったのであって、こういう全体像が非常に重要となってきます。



「かわいいだけじゃだめですか?」の分析は以上となります!
ぜひご自身のバズ楽曲制作、アーティストプロデュースに活かせるものになっていたら幸いです!

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今回の執筆助手は「スイさん」でした。
ありがとうございました!
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