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エミー賞ノミネートの地下鉄インタビューYoutube『Subway Takes』から学ぶ、人を惹きつける映像の作り方。

今日は海外のニュースから気になったものを題材に、コンテンツの未来について書きたい。

7.5億再生。ブランドディール(案件)1件あたり約3,000万円。大統領選のさなかに出演した副大統領候補ティム・ウォルツのインタビュー。ハリウッド大手エージェンシーUTAとの契約。そして、エミー賞ノミネート。

これはテレビ局の話じゃないです。Netflixの新作でもない。

「Subway Takes」というYouTubeチャンネルの話です。

ニューヨークの地下鉄のホームで、通りすがりの人にメトロカード(NYの交通ICカード。日本のSuicaのようなもの)そっくりの形をしたマイクを向けて、「あなたの持論を聞かせてください」とお願いする。

相手はちょっと過激だったり変わった意見を1つ語り、司会がその場で賛成・反対して即興の論戦になる。それだけの番組が、ここまで来た。

日本ではまだほとんど報じられていないこのニュースを、今回は「AIが作れないものの価値」という切り口で読みたいと思います。

本記事ではSubway Takesの凄さを紹介した上で、AI時代にコンテンツの何が残り、何が淘汰されるのかを考えます。

Subway Takesの何がすごいのか

まず、このチャンネルのスケール感を把握しておきたい。

https://www.reddit.com/r/movies/comments/1qb9p6d/amaqa_announcement_kareem_rahma_wednesday_114_at/

創設者はKareem Rahma(カリーム・ラーマ)。エジプト系アメリカ人で、もともと広告・メディア業界にいた人物です。やっていることは上で書いたように、ものすごくシンプル。台本なし。演出なし。編集は最小限。

これだけで、累計再生数は7.5億回を超えました(Tubefilter, 2026年7月8日報道)。

ブランドとのタイアップは1件あたり平均20万ドル、日本円にして約3,000万円(Wikipedia)。ゲストにはコメディアンのHasan Minhaj(ハサン・ミンハジ)、女優のCate Blanchett(ケイト・ブランシェット)、俳優のRamy Youssef(ラミー・ユセフ)といった名前が並ぶ。

@subwaytakes

Episode 561: Listening to music low gives you bad luck!! @La Rosalia #rosalia #music #subwaytakes #interview #musica

♬ original sound - SubwayTakes

2024年8月、大統領選の真っ只中に、ティム・ウォルツ副大統領候補が地下鉄ホームでインタビューに応じた(持論は「雨どいは家で一番おろそかにされる場所だ」)。実はカマラ・ハリス副大統領の回も同時期に収録されたのですが、本人の"持論"が振るわず、双方合意のうえでお蔵入りになっています。台本のない番組だからこそ起きる話です。2025年にはハリウッドの大手タレントエージェンシーUTAとも契約しました(Variety報道)。

そして2026年7月。YouTubeが本腰を入れた「For Your Consideration(FYC)」キャンペーンの結果が出ました。

FYCとは、テレビ局が長年やってきた賞レースへのプッシュ施策に、YouTubeが本格参入した取り組みです。自社クリエイターの番組をエミー賞にノミネートさせるべく動いた。

結果は、

累計40億再生を超える『Hot Ones』:ホストのショーン・エヴァンスがセレブにインタビューを行うアメリカの大人気YouTubeトーク番組などを退け、Subway TakesがOutstanding Short Form Comedy, Drama or Variety Series(短編シリーズ賞…)にノミネート。

40億再生のHot Onesが届かなかった場所に、地下鉄で見知らぬ人の持論を聞くだけの番組が届いた。再生数だけでは、この結果は説明がつかない。

「作れること」の価値が、ゼロに近づいている

ここから、わたしがいちばん書きたかったことを書きます。

いま、AIの進化によって、正しくてそれっぽいものは、誰でも作れる時代になりました。これはもう、みなさん耳が痛いほど毎日見たり聞いたりしている話だと思います。

テキスト、推論、画像、音楽、動画。生成AIのクオリティは日ごとに上がっている。「ちゃんとしたもの」を作ること自体のハードルは、もう十分に低い。つまり「作れること」の価値が、無料に近づいていっている。

この流れは止まらない。加速する一方です。

じゃあ、逆は何か。AIに作れないものは、何なのか。

ここからは、AIの進化と反比例して価値が上がり続けるコンテンツの条件を5つ挙げた上で、なぜ40億再生のHot Onesでなく7.5億再生のSubway Takesだけがエミーに届いたのかを、フォーマットによるIP開発の視点から解説していきます。

AIが作れないもの🟰AI時代に価値が高まる

その「AIに作れないもの」とは、具体的に何か。いくつかある。

まず、ライブ音楽。会場の空気、観客との一回きりのやりとり、あの場にいるという体験。これはAIには再現できない。音楽業界では録音の価値が下がる一方で、ライブの価値が上がり続けていることは以前の記事でも書いてきました。

スポーツや格闘技の生観戦もそう。勝敗は誰にもわからない。その一戦は二度と起きないし、結果を知ってから見ても、あの手に汗握る時間はもう戻ってこない。だから世界中で、放映権もチケットも価格が上がり続けている。予測不能性のかたまりです。WBC、ワールドカップ、NBA、格闘技など「今夜見たい」があるスポーツはこれからより価値が高まるのだと思います。

舞台や演劇や2.5次元もです。同じ演目でも、今日と明日ではまるで違う。役者と客席の呼吸、その日だけのアドリブ、演者の掛け合い、ミスすら含めて一回きり。「録画で見ればいい」にならないのは、ここに理由があります。

次に、ポッドキャスト。生の質問にリアルタイムで答える。相手の言葉を受けて、話の方向をその場で変える。AIはテキストなら出力できても、あの「間」や「声のトーンが変わる瞬間」は作れない。生の会話には、台本にはない揺らぎがあるんですよね。

ライブ配信もそう。予測不能な現場に即応する。チャットのコメントを拾って、その場で返す。AIがどれだけ流暢に喋れるようになっても、現場の空気ごと拾って即応することはまだできない。

体験型イベントもそうです。いまアメリカで話題の没入型ドーム「Cosm(コズム)」は、スポーツやライブを、まるで現地にいるかのような没入感で体験させる。あの空間に身体ごと入って、初めて成立する体験です。誰と行って、その日の自分が何を感じたか。同じチケットでも、体験は一人ひとり違う。

そしてドキュメンタリー。現実の出来事を追いかけて、演出できない瞬間を捉える。何が起きるかは、起きてみないとわからない。

リアリティショーもそう。AbemaTVの『今日、好きになりました。』のような番組や、セレブの日常に密着した番組が、女子中高生から30代まで幅広く支持されている。台本のない人間関係の揺れ、演出しきれない本音の瞬間。作り込めないからこそ、目が離せなくなる。

ストリートの一回性もそうです。代表的なのはよく見る街角インタビューですね。路上パフォーマンス、偶然の出会い、その場所、その瞬間にしか存在しない出来事。

共通項を抜き出すと、こうなる。

一回性。即応性。場所の制約。予測不能性。

これらの要素を持つコンテンツは、AIがどれだけ進化しても代替できない。つまり、相対的に価値が上がっていく。

そしてもうひとつ、別の軸がある。現物です。AIはデジタルのコピーを無限に生み出せる。だからこそ逆に、複製できない現物の価値が上がっていく。グッズ、アナログのレコード、ポケモンカード、ラブブのようなコレクティブトイ。

録音が無料に近づくほどライブ盤やアナログ盤が求められるのと同じで、無限に複製できる世界では「一点物」「実物」そのものが希少になる。一回性が「体験」の希少なら、現物は「モノ」の希少です。

以上長くなりましたが、
結論でいうと、

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エンタメ業界15年、複数事業を統括/プロデュースしたのち独立した朝日けけ。がリミッターを外して思う存…

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