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土木構造物の劣化判定向けAI“学習用データセット”

土木構造物を“見て”、劣化度合いを判定することができるAIモデルを構築するには、高品質で大量の教師データが必要になります。これらのデータを全て自前で準備するのは大変ですよね。そこで今回は、実務と研究の両方で役立つ代表的なデータセットを特徴別に整理します。



1) 大規模・多条件:汎化性能を鍛える「分類・検出系」

(a) SDNET2018(56k枚/橋梁床版・壁・舗装/クラック有無)

SDNET2018は、実橋で撮影されたノイズ(影・骨材・デブリ)を“そのまま”含むのが最大の特徴になります。微細(0.06mm)〜太いクラックまで幅広く、現場難易度をきちんと反映しているので、分類・パッチ検出のベースに適しています。出典:Dorafshan et al., 2018(Data in Brief)

SDNET2018画像データセット (a)微細なひび割れ、(b)大きなひび割れ、(c)影、(d)汚れ、(e)粗い表面仕上げ、 (f)介在物と空隙、(g)エッジ、(h)継ぎ目と表面剥離、(i)背景の障害物

(b) CCIC: Concrete Crack Images for Classification(4万枚/2クラス)

CCIC (Concrete Crack Images for Classification)には、コンクリート表面のCrack/Non-crackが各2万枚ずつ収められていますので、転移学習の初期訓練やベースライン比較に使いやすい“量”が強みであるデータセットです。

(c) CICS(12,000枚/3クラス:単一・分岐・無)

CICSは分類タスクに特化し、方向や分岐を含めたクラック形態のバリエーションが豊富なデータセットです。マルチブランチCNNなどの比較研究で採用例が増加しています。

https://www.mdpi.com/2076-3417/14/24/11632

(d) RDD2018 / RDD2020(道路損傷の物体検出:D00/10/20/40等)

RDD2018 / RDD2020は、スマホ車載で国・路面・気象条件の違いを跨いで収集しています。2018版は日本が中心で、2020版は日印チェコの多国大型でGRDDCベンチマークとして定着しています。実運用に近い条件下での汎化性能評価に適しています。出典:Maeda et al., 2018Arya et al., 2021

RDD2018データセットイメージ

2) 画素レベルで“線”をとらえる:セグメンテーション系

(a) CrackForest(CFD, 118枚/路面/ピクセルGT)

CrackForest(CFD)は、小規模ながら高品質なアノテーションが特徴です。舗装模様・影・油染みなど“背景が強い”難条件で、U-Net系やTransformer系の微細ひび再現性を測るのに適しています。出典:Shi et al.

舗装路面ひび割れ検出プロセス(a〜d):ランダム構造化フォレスト適用から形態学的処理・分類結果まで

(b) Crack500(500枚/高解像度/ピクセルGT)

Crack500は、Temple Univ. で収集されたもので、2000×1500級からパッチ化し、高解像の微細ひびが豊富に含まれています。セグメンテーションの標準比較として頻繁に用いられています。出典:Zhang et al., 2024

(c) DeepCrack(複数セット/多スケール学習用)

DeepCrackは、“階層的特徴”で細い連続ひびを抽出するモデルとともに公開され、難度の高い検出を促す設計となっています。コード・データ取得先も整備されています。出典:Liu et al., 2019

(d) AsphaltCrack300(約300枚/路面/ピクセルGT)

AsphaltCrack300は、Crack500と“対照評価”に使われる小規模なデータセットです。明暗差・舗装模様・微細ひびの一般化をテストする用途に向いています。

AsphaltCrack300データセットの可視化比較

3) Transformer時代の“検証用セット”:ノイズ過多・多尺度に挑む

(a) Zhang & Zhang, 2023–2024(独自711枚/224×224/ピクセルGT)

Zhangらのデータセットは、油染み・植生・影など実路面ノイズを意図的に含め、TransUNet/SwinUNet/MTUNetとCNN系を同条件で比較しています。Transformerが微細ひびと長距離依存関係で優位—という示唆を与える代表的な検証に用いられています。出典:Zhang et al,.

データセット(RGB画像+バイナリラベル画像)

4) どう使い分ける?——実務・研究の設計指針

  • 現場の“荒れ”まで含めた堅牢化:まずSDNET2018RDD2020で土台を作り、国・天候・舗装差に耐える汎化を狙っていくという進め方が考えられます(分類・検出)。

  • 線の忠実度を突き詰める:微細ひびや分岐の再現はCrackForest/Crack500/DeepCrackで詰めていく方法が考えられます(セグメンテーションのmIoU/F1で比較)。

  • 最先端モデルの効きどころ検証Zhang(711)でTransformer系の安定性・計算量・収束性を可視化し、その結果を実運用向けにRDD系列で再確認すると設計が固まります。


おわりに——「良いデータ設計」が精度を決める

AIモデルの選択(U-Net, DeepLab, Mask2Former, Swin系…)も大切ですが、収集条件・アノテーション粒度・国際多様性を踏まえたデータ設計が精度の“上限”を押し上げます。

まずは、RDD+SDNETで汎化を確保し、CrackForest/Crack500/DeepCrackで微細表現を磨いていく。その上で、Transformer系の導入はZhang(711)で仮説検証し、最後に独自に手元データを準備してドメイン適応を進めていくという流れがベースになるかと思います。

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