1951年6月7日 計量法公布|一升からキログラムへ、暮らしの単位が変わった日
1951年6月7日
計量法が公布された
この日を境に
日本の暮らしを
支えてきた古い単位は
少しずつ公式の取引の場から
退いていくことになる
一升
一斗
一貫目
一尺
一坪
それらは
ただの数字ではなかった
米を買うときの言葉であり
反物を測る言葉であり
土地や家の広さを
考える言葉だった
単位とは
暮らしの物差しである
その物差しが
昭和26年、1951年6月7日
静かに変わり始めた
一升で米を買っていた時代
かつて米屋の店先では
米は
「一升」「一斗」
という言葉で売られていた
店主は木の升に白米を入れ
客に見せる。
「一升、ください」
そんなやり取りが
当たり前のように
行われていた
一升は
およそ1.8キログラム
今なら米は
「五キログラム」
「十キログラム」
と袋に書かれて
売られている
けれど
当時の人々にとっては
キログラムよりも
一升の方が実感に近かった
一升あれば
どれくらいもつのか
一斗なら
どれくらいの量になるのか
数字を見なくても
暮らしの感覚で分かっていた
米屋には
木の升があり
竿秤があり
米俵があり
帳面があった
そこに並んでいたのは
商品だけではない
昔から受け継がれてきた
商いの感覚そのものだった
1951年6月7日、計量法公布
1951年6月7日
計量法が公布された
日本の
取引や証明に使う単位を
近代的な基準にそろえていく
ための法律である
目的は
分かりやすくいえば
全国どこでも同じ基準で
売り買いできるように
することだった
同じ一キログラムなら
どこの店でも
同じ一キログラム
でなければならない
同じ一メートルなら
どこの場所でも
同じ一メートル
でなければならない
商いには信用がいる
その信用を支えるためには
はかり方も
表示も
そろえる必要があった
けれど
それは
役所の紙の上だけで
済む話ではなかった
法律が変われば
店先も変わる
米屋の値札も変わる
客の言い方も変わる
人々の
暮らしの中にある言葉まで
少しずつ
変わっていくことになる
一升からキログラムへ
米屋の店先に
新しい値札が並ぶ
一升
一斗
一貫目
その横に
一キログラム
五キログラム
見慣れた古い単位と
まだ馴染みの薄い
新しい単位が
同じ店先に並ぶ
1951年前後の白米価格を
五キログラム約540円
一キログラム約108円
と考えるなら
一升はおよそ190円
ほどになる
一升は一キログラムではない
およそ1.8キログラムである
だから
単位が変われば
値段の見え方も変わる
「一升でいくら」
そう考えていた人にとって
「一キログラムでいくら」
という表示は
すぐには体になじまなかった
はずである
店主も戸惑っただろう
客も戸惑っただろう
けれど
新しい時代は
店先の値札から入ってきた
一升からキログラムへ
それは
ただ米の売り方が
変わったというだけではない
人々の頭の中にある
量の感覚が
変わっていくことでもあった
尺・貫・升は消えていったのか
計量法によって
公式の取引の場では
古い単位は
少しずつ退いていった
尺
貫
升
坪
これらは長く
日本人の暮らしと
結びついてきた
長さを測るなら尺
重さを考えるなら貫
米や酒の量なら升
土地や家の広さなら坪
それぞれの単位には
暮らしの場面があった
だからこそ
法律が
変わったからといって
すぐに人々の口から
消えるわけではない
単位は
紙の上の決まりである前に
生活の言葉である
長く使われた言葉は
人の感覚に染み込んでいる
一升という言葉を聞けば
米の量が浮かぶ
坪と聞けば
土地の広さが浮かぶ
尺と聞けば
ものを測る手つきが浮かぶ
そこには
数字以上の記憶がある
公式は㎡でも、暮らしは坪と畳だった
家の広さは
今では
平方メートルで表される
けれど
私たちは
今でも家や部屋の広さを
「六畳」
「四畳半」
「何坪」
という言葉で
考えることがある
不動産の広告を見ても
平方メートルだけでは
広さがつかみにくい
何畳か
何坪か
その方が
暮らしの感覚として
分かりやすいことがある
畳は、ただの床材ではない
日本人にとって
部屋の広さを
感じる物差しでもあった
六畳間なら、このくらい
四畳半なら、このくらい
数字ではなく
体で分かる広さである
坪も同じである
土地や家の話になると
今でも
「何坪」
という言い方は
根強く残っている
公式の単位は変わった
しかし、人の感覚は
そう簡単には変わらなかった
人は
数字で暮らしているようで
実は感覚で暮らしている
起きて半畳、寝て一畳
昔から、こういう言葉がある
起きて半畳、寝て一畳
人が生きるのに
必要な場所は、案外小さい
そんな意味を込めた
言葉である。
ここにも
畳という単位がある
法律の単位ではなく
暮らしの単位である
1951年6月7日
計量法が公布された
この日
日本の商いと暮らしは
古い単位から新しい単位へと
大きく舵を切った
米屋の店先では
一升からキログラムへ
家の図面では
坪から平方メートルへ
けれど
古い単位は
完全には消えなかった
それは
人々の言葉の中に残った
暮らしの感覚の中に残った
一升
一坪
六畳
四畳半
単位は、ただの数字ではない
人が世界をどう測り
どう暮らしてきたのかを映す
記憶の言葉である
