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創作雑記「『ラスト・カイジュウ・マエストロ〜着ぐるみ怪獣デザイナー・老兵ツバメの闘い』をなぜ作ったか

私が、あえて「アナログな怪獣デザイナー」を物語の主人公に据えたのはなぜか。
 その理由は、私の原風景にあります。
 私は、円谷プロダクションの『ウルトラQ』、そして『ウルトラマン』をリアルタイムで、毎週むさぼるように観ていた直撃世代です。
 まだCGなど影も形もない時代。
 画面の中で暴れ回る怪獣も、宇宙人も、そしてウルトラマンも、そのすべてが「着ぐるみ」という"実体"を持ってそこに存在していました。

 現代のCG技術を決して否定するつもりはありません。
 むしろ、かつては不可能だった表現を可能にする、極めて素晴らしい技術だとリスペクトしています。

 しかし、だからこそ、私は「着ぐるみ」にこそ、日本のものづくりの凄みとプロフェッショナルの真髄が宿っていると強く思うのです。

 着ぐるみのデザインには、常に人間が中に入って動くという絶対的な「制約」がつきまといます。

「アクターの視界をどこで確保するのか」
「首や関節の可動域をどう殺さないか」
「粘土をどう捏ねれば、ウレタンやラテックスに変形したとき生物としてのリアルな躍動感が生まれるのか」

 デザイナーと造形家たちは、この果てしない制約と格闘しながら、二次元の絵を「命ある三次元の怪獣」へと昇華させていきました。
 そこには、日本のお家芸とも言える緻密なエンジニアリングの精神が息づいています。

 そして忘れてはならないのが、そのデザインに魂を吹き込むスーツアクターの存在です。
 怪獣特有の重厚なすり足、生物としての細かな仕草、独特の間。
 それらは単なる演技を超え、一種の伝統芸能にも近い身体表現の極致です。
 デザイナーの思想と、アクターの命が融合して初めて、怪獣はただの造形物から「生きた畏怖の対象」へと変わるのです。

 しかし、こうした素晴らしいアナログの技術や現場は、時代の潮流の中で今や残り少なくなってしまいました。 
 効率化やデジタル化の影で、職人たちの至高の技が失われつつあるのが冷厳な現実です。

 ゆえに今、私は物語というフィルターを通して彼らにエールを送りたいと考えました。
 時代の波に洗われながらも、自らの手で泥をこね、紙に鉛筆を走らせ、実物としての怪獣を生み出し続けるアナログのデザイナーたち。
 彼らの指先が紡ぐ「人間の体温」と、誇り高き職人魂を、もう一度この令和の時代に再現できないものか……!
 画面の向こう側に、間違いなく「何かがそこにいた」あの頃の熱狂を胸に、少しでも書けないものかと。
 
 危機に瀕しているからこそ、今なお最前線で戦い続けるすべてのプロフェッショナルたちへ、最大の敬愛を込めて。

〈還暦通過爺のあくまでも個人的な戯言ゆえ、どうか許したまえ〉

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