FFと僕 〜夢見たものが辿り着く街、ドバイ〜
僕は生粋のゲーマーだ。
僕からゲームを奪うことは、ナメクジに塩をかけることに等しい。
なぜなら——
ゲームが僕の人生であり、僕の人生がゲームだからだ。
人生において、何かに夢中になれるものがあることは、時に救いになる。
僕にとって、それは 「ファイナルファンタジー(通称FF、スクウェア・エニックスの作品)」 だった。
これは、ゲームが、そして たったひとりの男の優しさ が、
僕の人生を変えた物語。
すべては、あの日から始まった
僕が初めてFFをプレイしたのは 12歳の時。
最初に手にしたのは FF9。
だが、奇跡のようなタイミングで、
すぐに FF10 がこの世界に生まれ落ちた。
運命だった。
その頃、僕の人生もまた、急激に変化していた。
両親の離婚。
心が引き裂かれるような感覚。
僕は暗闇の中を、出口もなく彷徨っていた。
そんな時、僕は 母方の祖父母の家に預けられることになった。
「パパ」と呼ばせた男
祖父は会社を経営していた。
僕にとって彼はただの祖父じゃなかった。
彼は、僕の 「パパ」 だった。
僕が生まれたとき、彼はまだ39歳だった。
「おじいちゃん」と呼ばれるのが嫌で、そう躾けられたのだ。
最初は違和感があった。
でも、
気がつけば 「パパ」と呼ぶことが、当たり前になっていた。
ある日、僕は光を見た
学校から帰った日、僕は目を疑った。
リビングに、PS2が置いてあったのだ。
「え? 今日、誕生日だったっけ?」
いや、何の記念日でもなかった。
ただそこに、突然 夢の扉 が開いていた。
「ソフトは何がいいとや?」
生まれも育ちも九州・福岡だったパパは、
博多弁で優しく尋ねる。
僕は、迷わなかった。
「FF。」
「エフ?なんやそれ? なんかわからんけん、ヨドバシ行くぞ。」
僕とパパは一時的にパーティを組み、
上野の家電量販店へ向かった。
まるで 冒険に出る勇者と仲間のように、
僕たちは力強く歩いていった。
彼は、僕を喜ばせるためだけに、
迷いなくゲーム機とソフトを買ってくれた。
それは、ただの買い物ではなかった。
僕を救うための、英雄の決断だった。
FF10 〜運命の扉が開く瞬間〜
PS2に、FF10のディスクをセットする。
起動音。
静かに、物語が始まる。
画面に広がる、見たこともない光景。
現実とは思えない美しさ。
それは、ただのゲームではなく、
もうひとつの世界 だった。
FF10は、神の作品だった。
映画のようなストーリー。
目を奪われるほどの美しいグラフィック。
キャラクターに命を吹き込む、プロの声優たち。
心を震わせる音楽。
名曲「ザナルカンドにて」が流れた瞬間、
僕はこの世界の住人になった。
何もかもが、完璧だった。
「やめられない、とまらない」
それは、僕にとってお菓子ではなく、FF10のことだった。
そして、いつの間にか僕は、
両親のことを冷静に考えられるようになっていた。
このゲームは、ただの遊びではなかった。
これは 僕の人生に必要な物語 だったのだ。
PS2とFF10。
それは 両親の離婚で心に闇が差し込みかけた僕に
新しいゲームを買ってあげることが少しでも気晴らしになれば、
と英断したパパからのギフトであり、
何より 僕への愛 だった。
FFと歩む人生、そしてパパとの別れ
それから僕は、FFの旅を続けた。
僕のFFプレイ歴、
FF9、FF10、FF10-2、FF12、FF13、13-2、LRFF13、FF15、FF16……
過去作も遡り、FF7(リメイク含む)、FF8、FF6(リマスター)、
そして現在はFF5をプレイ中。
(オンライン対応の FF11とFF14 は未プレイ。11の発売タイミングが中学生でインターネット回線がなかったため。14はなぜかまだプレイしていない。)
FFは、人生そのものだった。
だが——
社会人2年目の時、パパは63歳で亡くなった。
末期癌。どうにもならなかった。
病気が見つかった時には、もう手遅れだった。
それでもパパは、
最後まで気丈に振る舞っていた。
だが僕には、それがかえって辛かった。
「大丈夫、大丈夫」と笑うその姿が、
今にも消えてしまいそうに見えた。
——そして、本当に消えてしまった。
「色々あったね」
これがパパと最後に交わした言葉だった。
奇しくも、僕はその時期、FFからも距離を置いていた。
実は高校時代にFF12をプレイして以来、
ナンバリングタイトルには手をつけられていなかった。
特に新卒1年目。
慣れない仕事に忙殺される日々。
疲れ果てて帰る日々。
かつて、FFの世界に没頭していた少年は、
「現実」という名の異世界に飛ばされ、そこで生きることに必死だった。
それに、FFシリーズ自体も 変革の時代 を迎えていた。
FF13は、それまでのシリーズとは大きく方向性が異なり、
賛否が分かれる作品になった。
そして、
僕は祖父の死後に脱サラして起業した。
僕も会社の社長になった。
まるで、
FF10の主人公ティーダが父ジェクトの背中を追いかけたように。
パパこそ僕の「親父」だった。
やはり——
全作品の中でFF10だけは、別格だった。
辿り着いた、夢の街
そして、僕の旅は、
FFの世界を超えて 現実へとつながっていく。
それが、 ドバイ だった。
初めてこの街に降り立った日、
僕は心の奥底で確信した。
「ここは、ザナルカンドだ。」
摩天楼が立ち並ぶ光の街。
水面に映るネオンの輝き。
どこまでも続く未来都市の風景。
僕が 子どもの頃に夢見た光景が、目の前に広がっていた。
FF10の主人公 ティーダ は、
ザナルカンドから異世界「スピラ」に飛ばされた。
そして、彼の旅の目的は、
「ザナルカンドに戻ること」 だった。
僕も同じだった。
長い旅を経て、ようやく辿り着いた。
ここが、僕の ザナルカンド だった。
「夢じゃなかった。」
辿り着けたよ
幼い頃、画面の中でしか見られなかった景色。
憧れ続けた 「夢の街」。
そして今、僕はその街に住んでいる。
「やっと、戻ってこられた。」
祖父とFF10が、僕を導いてくれた。
だからこそ、今、伝えたい。
辿り着けたよ。
パパに会いたい。
ティーダもジェクトに会いたかった。
その気持ちが今よくわかる。
ありがとう、パパ。
ありがとう、ファイナルファンタジー。
