1人TOUR DE EURO97 その12 情熱と灼熱のスペイン
1997年の夏。
24歳の僕は、たった一人でヨーロッパを90日間かけて一周する旅に出た。
旅の名前は「一人ツール・ド・ユーロ」
フランスには「ツール・ド・フランス」という有名な自転車レースがあり、それにちなんで、人生のレースという意味を込めて名づけました。もちろん僕の旅はレースではない。誰かと競うわけでもないけれど過酷さだけは負けていなかった。
会社に人間関係に疲弊した3年間を過ごし。僕はもう死にたいでも死ぬ勇気はない。最後にせめて世界を見てみたい。そう思って会社を辞めて全財産をバックパッカーに詰め込んで日本を出ました。
たった90日間の旅がその後の人生を確実に変えました。
この旅で、僕はたくさん迷って、たくさん考えることになります。
「自分の人生って」
「自分は何を求めているのか」
「なぜ、こんなにも遠くまで来たのか」
今になって思う。あの頃の自分に伝えたい言葉がある。
世界は、広いようで意外と狭い。
これは、24歳の僕が見た世界の記録。
旅のルートを知りたい方はこちらです。
12)1997年7月26日-コルドバ(スペイン)

マドリッド北部のチャマルティン駅に、朝早く到着した。
その足でコルドバ行きの列車チケットを購入。
バスも考えたけれど、やはり事故のニュースが頭をよぎり、列車を選んだ。コルドバ方面の列車は南にあるアトーチャ駅から出るということで移動する。
11時発のスペインの新幹線「AVE(アヴェ)」に乗車。
アトーチャ駅はまるで植物園のようで、緑に囲まれた不思議な空間だった。AVEの外観はフランスのTGVにそっくりで、白を基調にした美しい列車。

座席にはテレビモニターがあり、イヤホンで映画まで観られる仕様。スペインの田舎風景を横目に、列車はあっという間に走り抜け、12時39分にはコルドバへ到着した。
快適すぎて、もっと長く乗っていたいと思うほどだった。
コルドバ駅は近代的で、到着後インフォメーションで地図をもらい、ユースホステル(YH)を探して歩き始めた。だけど外は灼熱。まさに太陽が照りつけるという表現がぴったり。暑すぎる。
旧市街は狭い道と白い壁が印象的で、時間が止まったように昔の姿を残している。どうやら旧市街そのものが世界遺産として守られているようだ。ヨーロッパの街並みは、古いものを残しながら新しいものを築く。そのバランスの見事さには毎回驚かされる。日本なら、きっと壊して建て替えてしまうかもしれない。
そのため、旧市街は保存されつつ、新市街を隣に作り現代と過去を上手く融合している町が多い。パリのような大都会では難しいけど、小さな町では意外とそういう都市計画をしている。
小さい街だけど、迷路のような街並み。YHの場所が分からず何人にも道を尋ねながらようやくたどり着いたYHは満室。
その後、いくつかの宿を回ったがどこも満室で、3軒目でようやく部屋を確保した。シングルルームで2400ペセタ。YHなら1200ペセタだから倍の出費だが、宿がないから仕方なく宿泊することに。
外に出ると、白い壁が太陽光を反射してまぶしく、目がチカチカする。まさに向日葵と太陽とオレンジが似合う町。まずはこの町最大の名所・メスキータとローマ橋を目指した。
旧市街は小さいので観光しやすいが、迷路のように入り組んでいて方向感覚を失う。ようやく辿り着いたメスキータの入場料は750ペセタ(当時約600円)。2025年の今では13ユーロ(約2080円)ほどなので、かなり安かったことになる。
メスキータ(Mezquita)はスペイン語で「モスク」を意味する。正式には「メスキータ=カテドラル」と呼ばれている。8世紀にイスラム王朝が建設し、13世紀にキリスト教の教会として使われ、16世紀には聖堂が建てられたという。イスラムとキリスト教の建築様式が融合した、世界でも珍しい建物だ。

教科書で見た赤と白のアーチの列は、実際に見ると圧巻だった。写真では伝わらなかった奥行きや規則的な並びが、目の前に広がる。まるで石の森の中に立っているようで、イスラムの森にキリストが迷い込んだような、不思議な建築だった。

外に出ると、再び強烈な陽射し。
次はポトロ広場を目指し、街中を歩く。セルバンテスが宿泊したという旅籠「ポトロの宿」を探して、何度も迷いながらようやく発見。ドン・キホーテを読んだことはないが、とりあえず記念に写真を撮った。
そのまま駅に向かい、次の列車を予約しようとしたが、ユーレイルパスをホテルに忘れていたことに気づく。仕方なくホテルへ戻る。
街はやけに静かで、人もまばら。週末だと気づいて納得した。スペインでは週末や昼の時間帯は外に出ない習慣がある。まるで街全体の時間が止まったように静まり返る。店も閉まり、少し不便だが、誰もいない旧市街を歩くとまるで過去に迷い込んだような気分になる。
やっと開いていた大きめのスーパーを発見し果物を買い、ホテルでひとり食べた。日中の気温はなんと45度。水分補給のためにオレンジジュースばかり飲んでいた。
夕方、少し気温が下がった頃にローマ橋へ行くと、空に美しい月が浮かんでいた。何百年も前から変わらない光景なのだろう。ドン・キホーテもこの月を見たのかもしれない。まぁドン・キホーテ読んでないけど(笑)
ホテルに戻り、シャワーを浴びて久しぶりのビールを飲む。よく冷えていて、これ以上ないほど美味しかった。夜9時半、今日はもう寝ることにした。
この日の教訓
1.旧市街は小さい分、宿が少ない
2.コルドバの暑さは想像以上
3.ドン・キホーテを読んでおけばよかった
次回は、その13 灼熱すぎる問題の話です。
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娘が留学をすることになり、何か僕も父として背中を見せて、一人でもがんばって負けないように生きていけるように挑戦を始めました。娘との思い出もここに沢山残そうと思い記事を書いています。少しでも応援してもらえたらウレシイです。いただいたチップは活動費に使わせていただきます。