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1人TOUR DE EURO97 その13 灼熱すぎる問題 

1997年の夏。
24歳の僕は、たった一人でヨーロッパを90日間かけて一周する旅に出た。

旅の名前は「一人ツール・ド・ユーロ」

フランスには「ツール・ド・フランス」という有名な自転車レースがあり、それにちなんで、人生のレースという意味を込めて名づけました。もちろん僕の旅はレースではない。誰かと競うわけでもないけれど過酷さだけは負けていなかった。

会社に人間関係に疲弊した3年間を過ごし。僕はもう死にたいでも死ぬ勇気はない。最後にせめて世界を見てみたい。そう思って会社を辞めて全財産をバックパッカーに詰め込んで日本を出ました。

たった90日間の旅がその後の人生を確実に変えました。
この旅で、僕はたくさん迷って、たくさん考えることになります。
「自分の人生って」
「自分は何を求めているのか」
「なぜ、こんなにも遠くまで来たのか」

今になって思う。あの頃の自分に伝えたい言葉がある。

世界は、広いようで意外と狭い。
これは、24歳の僕が見た世界の記録。

旅のルートを知りたい方はこちらです。

13)1997年7月27日-コルドバ(スペイン)

朝9時起床。
パンとオレンジジュース、そしてマフィンの簡単な朝食をとった。
明日は南へ向かい、グラナダへ移動する予定だ。どうせならバスで行きたいと思ったが、最近バス事故があったという話を聞き、少し不安もあった。それでも、バスなら田舎道を抜け、向日葵畑を眺めながら進むという情報を聞き、心が動いた。

駅近くのバスターミナルへ向かい、なんとかチケットを購入。英語も通じず、スペイン語でまくし立てられたけれど、ジェスチャーで押し通した。旅をしていると、言葉が通じなくてもなんとかなるものだと実感する。

外は43度。灼熱という言葉がぴったりで、歩くだけで頭がクラクラする。スペインが“情熱の国”と呼ばれるのは、恋愛よりもこの気温のせいなんじゃないかと思うほどだった。
水ばかり飲んで汗を補い、食欲もわかず、冷たいサラダだけが喉を通る。

この小さな町では、歩けば同じ人に何度も出会う。特にドイツ人の旅行者とよくすれ違った。暑さでまともに動けず、日陰を探してはウロウロ。太陽の下と日陰では、まるで別世界のように体感温度が違う。あまりにも暑くて途中でホテルへ戻り、水のシャワーを浴びた。

やる気がまったく出ない。
正直、今日は出発してもよかったと後悔した。小さな町なので、半日あれば十分。前半でのんびりしすぎると、後半が駆け足になるのは旅の常だ。ペース配分、大事にしよう。

旅のあいだ、僕の頭の中は常に次のルートでいっぱいだ。どの道を選べば最適か考えるのが楽しい。でも実際に旅をしてみてわかったのは、日本で地図を見て考えても無意味だということ。現地に来ると予定なんて簡単に変わる。

計画を詰めすぎると、旅が窮屈になる。だから僕は、90日間フリーという時間の中で「大きな目標だけを決めて、あとは自由に動く」ことを心がけている。

同じ道を戻るのは避け、できるだけ新しいルートを選びたい。
目標はヨーロッパ一周。そして最終的にパリの凱旋門に戻ること。

今のところの旅の三大目標は、
1.バルセロナのガウディ建築を観る
2.パリのルーヴルでモナ・リザを観る
3.イタリアでF1グランプリを観戦する

モナ・リザはすでにクリア。ガウディ建築はもうすぐ。あとはF1だ。9月前半にイタリアにいるようにルートを調整したいが、遠くにいたら難しい。F1に合わせて動くのも一つの手だろう。

旅の情報は「地球の歩き方」が頼りで、あとは現地で出会った人から聞く話が大きい。インターネットがあればもっと便利だっただろうが、情報が少ないからこそ、自分で考える旅になっている気もする。

夜になると少し涼しくなり、ホテルの庭に宿泊客が集まってきた。

僕も混ざってみる。昼間何度もすれ違ったドイツ人がいたので、思い切って声をかけてみた。英語はろくに話せないが、挨拶くらいならできる。すると彼が話しかけてくれて、戸惑う僕。

彼はキャンプセットを取り出し、自分でコーヒーを淹れて僕にも一杯くれた。旅先でコーヒーを淹れるなんて、なんて余裕のある旅なんだろう。

僕は荷物を軽くしたい派なので、そんな装備は考えたこともなかった。けれど、彼らは旅先でくつろぐために椅子やランプ、ガスバーナーまで持っている。まるで移動する家のようだ。僕には真似できないが、そんな旅も悪くないと思った。

会話はほとんど成立しなかったけれど、彼の笑顔や身振りから気持ちは伝わってきた。言葉が通じたら、もっと深い話ができただろうに——なぜ旅をしているのか、どんな町で暮らしているのか。そんなことを話してみたかった。

イギリス、フランス、スペイン、ポルトガルと旅して思ったのは、ドイツ人旅行者が本当に多いということ。YH(ユースホステル)でもよく見かける。彼らの旅のスタイルは質実剛健というか、装備からして本格的だ。

結局この日は、ほとんど食べずに水ばかり飲んで終わった。
明日のグラナダもきっと暑いだろう。
バス移動ではユーレイルパスが使えず少し損だけど、列車ばかりだったからたまにはバス旅もいい。とはいえ、あの事故の記憶が頭をよぎる。

荷物をまとめ、ドミトリーの端のベッドに横たわった。
灼熱のスペインの夏は、まだまだ続きそうだ。


この日の教訓
1.暑すぎると食欲をなくす
2.英語はできたほうがいい
3.ドイツ人はキャンプ道具を持って旅している

次回は、その14はグラナダであった日本人女性のバックパッカーの話です。

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けんいち【kindle作家】 娘が留学をすることになり、何か僕も父として背中を見せて、一人でもがんばって負けないように生きていけるように挑戦を始めました。娘との思い出もここに沢山残そうと思い記事を書いています。少しでも応援してもらえたらウレシイです。いただいたチップは活動費に使わせていただきます。