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AIが使う道具を、デザイナーが作るということ

プロダクトのユーザーがAI Agentになったとき、デザインの問いはどう変わるか

あなたが作ったものを、誰かが思いもしない使い方で使ってくれた経験はありますか?それが人間ではなく、AIだったとしたら——そこには、なんとも言えない不思議な感情が生まれます。

自分は最近、そういう体験をしました。そしてその体験が、「プロダクトのユーザーとは誰か」という問いを、自分の中で大きく書き換えるきっかけになっています。


チャートを描くツールを、手探りで作った

Agent系機能の開発に関わり始めた頃、自分はあるツールを作りました。Agentが数値データを受け取ったとき、チャートとして描画できるようにするためのものです。

正直、手探りでした。Toolとはどういうものか、どう設計すればAgentがうまく使ってくれるのか、手探りで作った一本目です。完成度が高いものではなかったと思います。

でも、AIとの会話の中でAgentがそのツールを引き出して、チャートを描画してくれた瞬間がありました。自分が意図した通りに動いている。それだけのことなんですが、作り手としてじわっと嬉しくなりました。「あ、ちゃんと使ってもらえた」という感覚です。

自分: 先月の週別のPV推移を教えて
Agent: 週別のPV推移をチャートで表示します。(チャートツールを呼び出し、棒グラフを描画…)


思わず笑ってしまった日

それから時間が経って、別の領域で企画Agentを作っていました。ユーザーの行動を分析して、施策のアイデアを提案してくれるAgentです。

そのAgentが生活者の行動プロセスを説明しようとしたとき、以前自分が作ったチャートツールを引き出してきて、ファネルとして行動フローを表現したんです。

企画Agent: ユーザーの購入までのプロセスを図示します。
(ファネルチャートツールを呼び出し行動フローを表現しようとする。訪問 → 商品閲覧 → カート追加 → 購入…)

——ちょっと待って、そういう意図で作ってないんだけど……(笑)

ファネルチャートはステップごとの数値を見える化するためのもの。プロセスを表現するには適した表現とは言い難い。でもAgentはその時点で使えるものの中から一番近いものを選んで、なんとか表現しようとしてくれた。

笑ってしまいながら、同時に気づいたんです。これは、そのユースケースを満たせるツールが、まだ作れていないということなんだ、と。


道具が足りなかった、ということ

Agentは、会話の中で発生したユースケースを満たすために、手持ちのツールを組み合わせて動きます。ツールが豊かであれば豊かなほど、表現の幅が広がる。逆に、ツールが足りなければ、近いものを代用しようとする。

たとえば、Mermaid記法のような表現や、React Flowのようなインタラクティブなフロー図が使えたら、あの場面でのやりとりはどう変わっていたでしょうか。ファネルのプロセスを、流れとして素直に描ける道具があれば、AgentはAgentらしく、ユーザーに伝わる表現を選べたはずです。

ツールの種類が増えることで、Agentがその場の文脈に合った表現を選べるようになる。それは、ユーザー(この場合はAgentと会話している人間)とのインタラクションの豊かさに直結すると思っています。


Agentが、プロダクトのユーザーになる

この体験を振り返って、自分の中で一つの問いが整理されてきました。
これまでプロダクトデザインでいう「ユーザー」は、常に人間でした。どんな人が、どんな文脈で、どんな目的でこの画面を開くか。ペルソナを描いて、フローを設計して、UIを作る。そのインタラクションモデルの中心には、常に人間がいた。

でもAgentにToolを提供する、ということは、プロダクトのユーザーがAI Agentになるということです。「Agentが適切に選択できる」「Agentの意図に応えられる」道具を作る、という設計が求められる。

Agentが使うツールを作ることは、Agentとの会話の中でなされるインタラクションを設計すること——そう捉え直すと、デザイナーとして面白いフィールドが広がっている気がしています。


「インタラクションの中のユースケース」をデザインする

人間向けのUIデザインでは、画面に何を置くかを考えます。しかしAgentが使うToolのデザインでは、会話の中で何が起こりうるかを想定して、それに応えられる道具を揃えることが問いになります。

それはある意味、人間向けUIの設計よりも先読みが難しい。人間のユースケースはある程度想定できますが、AgentはToolを組み合わせて予期しない文脈で使ってくる。あの「そういう意図で作ってないわ!」は、まさにその予期しなさでした。

ただ、そこに面白さもあると思っています。Agentが道具を予期しない形で使ってきたとき、それは「このユースケースが満たされていない」というフィードバックでもある。人間向けのユーザーリサーチと同じように、Agentの使い方からプロダクトを育てていける、という感覚があります。


道具を作る喜びが、変わっていく

チャートツールがAgentに使ってもらえた瞬間の、あの静かな喜び。そして「そういう意図じゃないんだけど」と笑ってしまった瞬間の気づき。どちらも、AIが「使い手」になることで初めて体験できたことでした。

デザイナーが作る道具のユーザーが、人間だけでなくAgentにも広がっていく。その変化は、自分にとってはまだ探索の途中ですし、正直まだわからないことだらけです。でも、「Agentに使ってもらえた」と感じる瞬間のささやかな嬉しさがあったのも確か。
そういう感覚を手がかりに、もう少し先を探っていきたいと思っています。

それでも、見ている先は人間だ

もしかしたらこんな感覚を持つ方もいるかもしれません。「人のためにプロダクトを作ってきたデザイナーが、AIのためにツールを作るようになる。それって、人との距離が遠くなっていくことじゃないか」と。

その感覚はわかります。Agentが使う機能をたくさん作れば良い、という方向に引っ張られていくとしたら、それは本当に人に喜ばれるサービスになるのか、という疑問は正直あります。

でも自分は、目的はあくまでも変わらないと思っています。大切なのは、そのAgentがユーザーとのインタラクションの中で、より早く、より深く価値を届けられるようになること。Agentはその手段であって、目的ではない。

そう捉えると、むしろここで力を発揮できるのは、これまでずっとユーザーと向き合ってきたデザイナーだと思っています。どんなインタラクションがユーザーの助けになるか、どんな表現が理解を助けるか——そういう問いに向き合い続けてきた経験が、ツールの設計にそのまま活きてくる。作る相手がAgentに変わっても、見ている先は同じ人間のはずです。

まだ答えよりも問いの方が多い段階ですが、デザイナーとして、このフィールドをもう少し丁寧に探っていきたいと思っています。今後も考えながら、実践していきます 👋🏻

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