ワインに深入りしないワインの話(22)~ 貴腐ワインを絶妙な少量ブレンドしました
ニュージーランドの銘醸地・マールボロは、特にソービニヨンブランとピノノワールで名高いところです。
そこで造られたリースリングです。
瓶形を見て、これはドイツ風で甘口かなと嫌な予感を抱かれた方には、甘くないのでご安心くださいなどと迎合するようなコメントは致しません。
自分でこう書いて思い出したのですが、かのイチローが現役だったころの球団移籍会見で、「これからも応援よろしくお願いします」というので、「イチローにしては言いそうにないことを口走ったな」と思ったら、ちょっとだけ間を置いて、「・・・ということを言わない自分であり続けたい」などと(正確には覚えてませんが)付け加えたのを聞いたときの印象が染みついているみたいです。
まどろっこしくてすいません。
何が言いたいかと申しますと、これはれっきとした甘口方面のワインですということです。
「見た目ほど甘くないのでご安心ください」ではなくて、「甘いですが何か?」であります。
亜熱帯になった日本の夏の最初の1杯目には、このような厚めの酸を伴う少し甘めのワインをしっかり冷やしてグイっと飲むと思わず美味しく感じられることは、ほぼ間違いありません。
しかし、それを認めたがらない人たちも根強くお元気に生息中です。
微甘系のワインを美味しいと思ってしまうことに罪悪感を抱く一部の辛口原理主義者は、舌で美味しく感じても決して表情を変えることなく、仏頂面で「甘いな」と一言断じるだけですが、気になって仕方がないので裏ラベルを見たりする仕草に愛らしさを隠せません。

さて、このワインですが、「なし崩し的に」甘くなってしまったのではなく、最初の設計から意図しています。
なんと貴腐ブドウを10%用いています。
この10%という配合比率がいったいどのような成果を上げるのかは、飲んでみると一目瞭然というか一舌瞭然です。
そのまえに色あいですが、これはまた最初から黄金色、それもかなり濃いイエローゴールドです。これをみて高貴な芳香を期待するのですが、香りは控えめです。
1口含むと、その瞬間に美味しさが際立ちます。
甘みよりも先に酸が鋭角的に舌に刺さり込むのがわかります。
その直後に、十分な糖度が追いかけてきますので、口中のバランスが急激に整います。
ソーテルヌでは「甘味→酸味」の順で現れることが多いのですが、こちらは「酸味→甘味」で出てくるので、猛暑のシーズンにぴったりです。
10%貴腐ブドウのバランスとはこのことを言っていたのかと、味わいながら理解することができます。
貴腐の比率を多くすると、こうした酸のキレ味は得られなかったでしょう。
ケチって10%なのではなく、食中酒として最高のバランスを実現する比率だったのでしょう。
生産者の意図としては、ドイツ風ではなくアルザス風に造ったそうですが、アルザスでもドイツでもなく、NZ風というのが相応しいと思いました。
激賞するレベルで美味しいと思います。
裏ラベルに味な言葉が書いてあります:
new world purity & old world complexity
おつまみとしては、ラトビア産のスモークト・オイルサーディンをライ麦パンに乗せるといった北部欧州系のものが定番ではありますが、ここは是非とも江戸前寿司と合わせて頂きたいです。
日本食にドイツ系ワインの相性の良さがよくわかる絶妙の組合せです。
酒言葉=肝胆
