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弾丸☆ズ 第三話 進め! 交通安全委員長!!

自転車屋の店内で、自転車屋の店主が嘆いた。
店主「こりゃあ、ダメだ! 修理するより買った方が安いよ」
ジロウの後ろの窓ガラスの引き戸が静かに開く。
ジロウ「そこをなんとか修理してよぉ~…神業を会得したチャリンコだからうっかり買い換えて感が狂うと事故っちゃうよぉ」

解説「解説しよう! ジロウの時間を少し遡る…」
学ランを着てヘルメットをかぶったジロウが自転車にまたがったまま立っている。
ジロウは腕時計の時刻を確認して自転車で駆け出す。バスはジロウの後ろのバス亭に迫っている。
黒炎号(ほっほっほ、お先ですわ!)
とバスに別れを告げてジロウの自転車は加速に入る。
ジロウが下り坂を下る。自転車の速度メータをチラリ見し、ブレーキを操作し法定速度40km/hrをキープしていた。
ジロウは下り坂が終わり、平地での巡航モードに入った。
ペダルを踏むのを休み、前傾姿勢のまま下り坂で稼いだスピードを殺さないよう努めていた。
ジロウの後方を走るバスは、路線上の各バス亭に停車するため、なかなかジロウに追いつけない。
バスより先行し高速巡航を続けるジロウの自転車を、バス亭で同級生の桜木 萌と桃川 鮎が目撃していた。
ジロウは自分の位置と時刻を確認し、次の信号を青のまま通過すべく再加速を開始しベダルを踏み込んだ。
しかし、ペダルが空回りする。さすがにジロウも焦った。
ジロウ(チェーンが外れた?)
ジロウはペダルを逆回転させてみた。
ペダルは問題なく回転した。
ジロウ(チェーンは外れていないようだ。もう加速のタイミングは逸しているが、もう一度―)
再びペダルを踏み込んだが、同じようにペダルが空回りをする。
ジロウはこのまま車道を走るのは危険と判断。次のポイントで自転車用の通学路へ進路を変更した。
黒炎号(残念!今日のスタートは自己ベストを更新できるほど快調でしたのに…)
チェーンが空回りするため、さすがのジロウもすぐに失速し自転車を押して歩くしかなくなった。
ジロウ(せっかくできた時間だ。もっと効果的なトレーニングがなかったか振り返るか―)
ジロウは歩きながらこれまでの筋トレの自分史を思い出していた。
ジロウ(―もともと自転車を全力疾走でこぎ出したのは、移動時間を短縮して空いた時間を漫画の修行に充てるため。漫画の修行をしていく内に、漫画家は慢性的に運動不足と睡眠不足に襲われ長く週刊連載はできないとわかった。そうすると人生100年時代だといっても週刊連載は若い内しかできないのか、残念。だが、待てよ…筋トレをして若くて強靱な肉体をキープし続ければ100歳でも週間連載できるのでは…とか思って―)
黒炎号(ジロウ様、歩いて考えるだけなら筋トレができますわ♡)
そうしてジロウは自転車を押しながら考えながら筋トレまで始めた。
ジロウが始めた筋トレ:つま先歩き、もも上げ90度。なるべく体重がつま先に乗るようにしたので歩幅が狭くなり歩くスピードが遅くなる。
筋トレに集中している彼は、スピードを捨てて運動負荷のコントロールに集中している。
端から見ると変態が歩いているように見えるが、この自転車用の通学路を利用しているのはジロウ一人。なぜならジロウのいる集落は限界集落化が進んでいるため、この通学路を使用する者が他にはいない。たまにこのアタリの集落の人や小学生に会う程度だ。
だが春香はこんなジロウを”TPOをわきまえない筋トレバカ”といつも文句を言っていた。

再び、自転車屋の店内に戻る。
ジロウの背後に春香の人影がたつ。
店主「どんな神業を会得したって?」
ジロウ「そりゃあ、もちろん”刹那の間合い”(第一話参照)みたいな、極めし者のみがたどり着ける境地みたいなやつです」
店主「さっぱり、わからん?」
店主はジロウの後ろの女生徒が肩を震わせているのに気づいて言葉を飲み込んだ。
ジロウは店主の様子から背後を向こうとするが、ジロウの後ろからジロウのホッペタに指を突き刺して春香が話す。
春香「何よその”刹那の間合い”?」
ジロウから春香をみた、春香のアップ。メチャクチャ怒ってる。
春香「あんたそんな漫画の必殺技みたいなもののために命かけてる訳?」
春香「どうしようもないバカね!」
ジロウは不意を突かれて焦るジロウ。
ジロウ「じっ、人生チャレンジしたものにしか味わえない経験…」
ジロウは焦っているので、いつもの屁理屈にキレがない。
ジロウ「それを”刹那の間合い”って言いたかったの…」
春香は納得がいっていない。
春香「そんなボンヤリしたものに、命をかけるなってことなのよ!」
春香のジロウへの説教は続く。その様子に困った顔の店主のアップ。
春香「真のアスリートは自分や周りの安全も考えて日々鍛錬しているのよ」
春香「アンタみたいに勝手にどこでもここでも命をかけられたら周りは迷惑なの!」
店内のアオリ。三人の位置関係を示す。
手前に春香の後ろ姿。
左手側には店主が自転車を挟んで腰掛けていた。その表情は春香の勢いに気圧されている。
春香「自損だったら自業自得のタダのバカだけど…」
春香「それでもあんたの家族や周りの人が悲しむでしょう!」
ジロウのアップ。春香の勢いにおびえ気味。ホッペタへのグリグリは続いている。
春香「万が一、他人を巻き込んで事故でもしたら…」
春香のアップ。その表情は強い意志に満ちている。
春香「誰もアンタを許さないわよ!」
春香の右目のアップ。涙が溢れそうだ。
ジロウも春香の涙に気づいて動揺する。
春香は涙が溢れて声が出なくなった。
それでももう一言言わないといけないと思い言葉をしぼり出した。
春香「知っているでしょう。私のお父さんは、車が突っ込んできて亡くなったのよ」
春香「アンタにそんな暴走車のようなマネは絶対にしてもらいたくない―」
春香は涙が止まらなくなってきたので自転車屋から飛び出して学校とは反対方向に向かった。

一方残されたジロウの心境は真っ暗闇で膝から崩れ落ちて両手をついてうなだれている。
ジロウは、春香の父の言葉を思い出していた。
春香の父(―ジロウ君、春香と仲良くしてあげてね)
ジロウ(おじさんに頼まれていたのに、泣かせた…)
黒炎号(ジロウ様、ここは謝るの一択ですよ!)
ジロウ(ああ!春香を悲しませるのは俺の本意ではない!!)

春香は橋を渡ると今度は川沿いの土手を歩いて呼吸を整え、思考を整理していた。
春香は深呼吸しながら川を見る
春香(あぁ―。涙止まんなくなっちゃった…)
春香(これだけ言っても心を入れ替えないようなら、もう絶交!)
春香は河原の土手に座り込んで周りの草花を見渡す。
春香(こんな時にも花をcheckするのは花屋のサガって奴かしら…)
春香(クローバーの葉がまだ残っているわね)
四つ葉のクローバーと春香の右手のアップ。
春香(―まったく、こんな時に四つ葉のクローバーを見つけるとか)
春香(本当に”望み叶う”?)
春香は四つ葉のクローバーを右手につまんで目の前でクルクル回した。
春香の後ろから誰かがタタタッと近づいてきた。
ジロウ「春香、ゴメン」
春香はジロウの声にビックリしたが泣き顔を見せたくないので顔を向けずに話した。
春香「うるさい!どうせ本気で言ってないでしょう!」
春香「もうアンタのことは頭の中から綺麗さっぱり消してやるから」
春香はジロウに背を向けたまま話す。その背中を見つめるジロウ。
春香「アンタがどこでどうなろうが知らないわっ」
ジロウは春香に頭を下げる。
ジロウ「春香、本当にゴメン」
春香はジロウを横目で見る。
ジロウは春香に頭を下げ続ける。
ジロウ「自分がバカだって、よっとわかったよ。もう危険走行はしないから許してよ」
春香はジロウの真意を伺うように、ジロウの目を覗き込んだ。
ジロウは春香の両目が涙で腫れているのを見て心がズキンと痛んだ。
春香「…今回はその言葉信じてあげるけど、裏切ったら絶交よ!」
ジロウ「ああ、もう危険走行はしない。約束する」
春香「じゃあ、この話はコレでお終い。学校に戻りましょう」
春香(あっ、そうだ! )
春香は右手に先ほど見つけた四つ葉のクローバーを持っている。
春香はジロウに右手を差し出してクローバーを渡す。
春香「仲直りの証に四つ葉のクローバーあげる」
ジロウは受け取ったクローバーをどうするか戸惑っている。
春香はジロウの鼻先を右手の一指し指でチョンと叩く。
春香「挿し木に成功すれば、来年の春には四つ葉のクローバーが沢山生えて…」
春香「花も咲くかもよ♡」
春香はニコッと微笑んだ。
黒炎号(おお!それは白詰草の花冠を受け取ってくださるということ?!)
ジロウ(うむ、学校に着いたら速やかに挿し木せねば…)
解説「解説しよう! 黒炎号はジロウのイマジナリーフレンドのため、その本体の自転車がなくてもいつもジロウのそばで話しかけてくるのだ。そして、白詰草(クローバーの花)の花言葉は”私のことを考えて”である」

解説「―こうして春香はジロウを改心させることに成功した。しかし学校に戻った二人を待っていたのは…」

職員室のドアの前に生徒会役員と交通安全委員達が集まっていた。黒い弾丸の危険走行を模倣した生徒が多数現われたため、緊急職員会議が開かれているのだ。職員室の中から北条先生が出てきて、ドアの前の生徒達に教室に戻るよう指示を出し、また職員室に戻ろうとした。
春香「先生、提案があります!」
春香の提案は、次のとおりだった。
①陸上部員を自転車に乗せて高速機動隊として取り締まらせる。
②取り締り中は生徒会役員、交通安全委員及び高速機動隊にスマホの使用を許可し、教員達とも情報を共有する。
北条「―なるほど、提案してみるか」
北条先生はそのまま職員室に入っていった。

解説「―こうして、春香は陸上部から精鋭を集めて自転車部隊<高速機動隊>を設立して危険走行する生徒達を取り締まる。そしてジロウは自分の罪を悔い、知恵を絞って春香達に協力していく。二人の物語はまだまだ続く」


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