タイヤウォーターとティーブレイク - 2025 F1マイアミGPレビュー

 マイアミGPも早いもので4年目です。初めてこのコースを目にしたときは(もちろんテレビで)、ちょっとロシアGPの開催地だったソチにも似ていて、あれのド派手な資本主義国バージョンかと思いました。その後、見慣れてくるうちに、また印象は変わってきたんですけどね。

 さて、予選はものすごい僅差の戦いの末に、フェルスタッペンがポールを獲得しました。2位のノリスとの差は0.065秒、ノリスと3位アントネッリの差に至っては0.002秒ですよ! そこから0.104秒差でピアストリ、さらに遅れること0.010秒のラッセルまで含めて、わずかなミスによるタイムロスが小さかった順に並んだ感じでした。午前中の雨で路面がグリーンになっていましたからね。レッドブルに復調の兆しが見えることに加えて、今回はメルセデスもセットアップがコースに合っていたようで、誰がポールを獲ってもおかしくありませんでした。

 ウィリアムズ勢もがんばりました。2台揃ってQ3に残り、サインツが6位、アルボンが7位です。ふたりのタイム差もわずかでしたね。もう前にいるのは、マクラーレン2台とメルセデス2台とフェルスタッペンだけですよ。サインツは「(スプリントのあと)20分ほど昼寝をして、リセットボタンを押したのが良かった」と語っています。

 角田くんは、まだフェルスタッペンとのタイム差が大きいですね。Q2では0.351秒差だったものの、このときマックスは5番手どまりで、実力を出しきっていなかった可能性があります。まあ、角田くんとしてもいきなりマックスと肩を並べようとは思っていないはずで、とりあえずは大きなミスを避けて堅実にという姿勢でよいかと思います。スプリントのレビューにも書きましたが、この差のうちどこまでがフェルスタッペンのクルマに入れたフロアのアップデートによるものなのかは、まもなくはっきりするでしょう。

 ところで、どうでもいい話ですが、FIA会長のスレイエムさんは、なんでいつもパルクフェルメにいるんでしょうね。どうも、あそこでドライバーに声をかけたりしていれば、必ず国際映像に映り込むと計算しているような気がします。意地の悪い見方ですみません。

 決勝でのマクラーレンの2台は、完全に他とは別次元のペースでした。マクラーレンの空力がいいのは確かですが、ブレーキダクトとドラムに何らかの工夫があって、タイヤがオーバーヒートしないようにうまく温度をコントロールしているとの説もあるようです。それもチートではなく完全に合法なやり方で。昨年はタイヤに水を入れて冷やしているのではないかと疑われたりもしましたよね。今回、ザック・ブラウンが、「!タイヤウォーター!」というラベルを貼りまくった水筒をピットウォールに持ち込み、国際映像がそれをとらえていたのには笑いました。

 スタート直後にノリスがランオフに押し出された場面では、鈴鹿のピット出口での一件を思い出しました。相手の出方はよく知っているはずですから、もうちょっと早く引いた方が被害が少なかったのではないでしょうか。マックスが相手だと、「弱気じゃいけない!」と思ってがんばりすぎるのかな。でも、そこからの追い上げでは、見事にやり返しました。

 先行したフェルスタッペンをまずピアストリが、続いてノリスがコース上で抜いていったわけですが、このふたりのアプローチの違いみたいなものも垣間見られて面白かった。ピアストリは戦略的と言うか、「まずこう行って、次はこう」という意図がシロウトにもわかるような攻め方でした。これに対してノリスは、いわば仲間同士が楽しみながらバトルをしているような、隙が見えたらダメモトで差してみる、みたいな印象を受けました。もっとも、今回はマックスとマクラーレン勢との間には明らかなペース差がありましたから、いずれどこかで抜けると思いながらの攻め方だったのかも。

 その後、トップ2台はフィニッシュまでほとんど画面に映らず、3位に入ったラッセルとは30秒以上の大差でした。フェルスタッペンは3位でポディウムかと思っていたら、VSC中にピットに入ったラッセルにしてやられました。

 それにしても、あのフェラーリのチームオーダーはいったい何だったのでしょう。順位を入れ替えてアントネッリに追いつけたわけでもなく、後方からはサインツに迫られ、ゴタゴタしただけで何の成果もなしというお粗末。マクラーレンの2台がメチャ速で上位争いが面白くなかったので、なおさら注目されちゃいましたね。ハミルトンが無線で放った「(決定が遅いのにイラついて)お茶でもしとくか」とか、「彼(背後に迫っていたサインツ)も抜かせた方がいい?」のセリフもパンチが効いていました。皮肉や嫌味を言わせたら、やはりイギリス人は世界一です。

 ウィリアムズはアルボンが5位入賞。しかもアントネッリのメルセデスをコース上でオーバーテイクしています。ただ、ここでもチームオーダー絡みの話の行き違いがありました。スタート直後のターン3でサインツとアルボンが軽く接触し、サインツのクルマには軽いダメージがあったようです。その結果、ペースの上がらないサインツをアルボンが攻め立てるかたちになり、チームはドライバーに「ポジションキープ」を伝えます。ところが、アルボンは「それを聞いたときには、もう抜きにかかっていた」とかで、そのまま前に出てしまったんですね。

 それはサインツとしては面白くないでしょう。「ジェッダでは協力したのに、こんなふうに抜かれちゃって、まるで僕がバカみたいに見えるよね」と、レース後に不満をこぼしていました。その後、彼はVSC中にピットに入ったルクレールに先行され、いったんは抜き返したものの逆襲にあい、ターン1でオーバーシュートしたところをハミルトンにもやられてしまいます。そんなこんなで、レースはフェラーリ勢とアルボンに抜かれて9位に終わりました。最終ラップのターン17(実質的な最終コーナー)で、ハミルトンに対して接触も辞さないアタックをしたのは、フラストレーションのあらわれのようにも見えました。

 あと、ウィリアムズに関しては、アルボンのレース後のコメントも良かった。「レース中にずっとマックスの背中が見えているなんて、レッドブル時代にもなかったこと」だって。

 角田くんは、VSCの直前にピットに入ったのがアンラッキーでしたね。そこでもう少し運に恵まれれば、サインツの前あたりまで行けたかもしれません。ただ、基本的にペースが遅かったことは否めず、ピットレーンでのスピード違反と5秒のタイムペナルティも余計でした。最後はハジャーと5秒差以上でフィニッシュできるのか、本当にハラハラドキドキでしたよ。おじさんの心臓にあまり負担をかけないでください。

 ハジャーも必死で追ってきていて、それゆえにちょっとミスをしてしまったとコメントしています。10位と11位では、考えようによっては1位と2位よりも大きな違いがありますからね。まあ、角田くんもそれはよく承知していて、全力を尽くして逃げ切り、フィニッシュ後の無線ではチームに謝っていましたけど。

 アストンマーティンの不振は重症です。アロンソの単独スピンがあったとはいえ、2台揃ってラップ遅れで、完走者のなかでは最下位の15位と16位。今季のパフォーマンスのテコ入れを行うべく、いよいよエイドリアン・ニューウェイ御大がお出ましになるのではとも言われていますが、当面はあくまで2026年の新車の開発に専念するとか。

 ローソンはこの週末、スプリントではアロンソと、レースではドゥーハンと接触して、それぞれ相手をリタイアさせてしまいました。速さとは別の面でも成熟していかないとマズいですね。その点、ハジャーはハミルトンとバトルになったときにも、しっかり相手にスペースを残していました。ハジャーがルーキーとしては大健闘しているので、次は誰をメインチームに起用するかというレッドブルの考えも変わってきつつあるかも。次のシャッフルでは、岩佐くんにも活躍の場が与えられることを期待しましょう。

 マイアミGP決勝が行われた5月4日、ドイツの元グランプリドライバー、ヨッヘン・マスさんが亡くなられました。1976年に富士スピードウェイで日本初のF1レースが開催されたとき、マスさんはマクラーレンで同年のタイトルを獲得したジェームス・ハントのチームメイトでした。F1では派手な活躍はなかったものの、ツーリングカーやスポーツカーですばらしい成績を残しています。キャリアの最終盤にはザウバーのグループCチームで、シューマッハー、フレンツェン、ベンドリンガーという当時のドイツの新鋭3人組の教育係を務めました。マスさんが乗った流麗なオープントップボディのポルシェ936とか、ロスマンズカラーのポルシェ956/962とか、カッコ良かったなぁ。ご冥福をお祈りします。


2025年5月8日

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