【F1茶話】ピレリさんの宿題

 ご存知のとおり、2026年からはF1のテクニカルレギュレーションが全面刷新されます。今回は車体寸法が変わるのにともなって、タイヤサイズも変わります。

 ホイール径は18インチのままですが、タイヤの幅はフロントが25mm、リアが35mm狭くなり、外径も現行の720mm(前後とも)から10〜15mm小さくなります。

 そのためピレリはチームの協力を得て、「ミュールカー」を使って2026年仕様のタイヤのテストプログラムを進めています。近いところでは、スペインGP後に居残りでドライタイヤのテストを行い、その後、フィオラノでウェットタイヤのテストも実施しました。

 ミュールカーというのは、現行のクルマを改造して、タイヤにかかる負荷をできるだけ2026年のクルマのそれに近づけたものです。2026年型マシンがまだ存在しない現時点では、そういうかたちでテストをするしかないわけですね。

 けれども、ピレリは2011年にF1のタイヤ供給を初めて以来、もう何度か大幅なレギュレーション変更を経験していて、そういった難しい条件での新規格タイヤの開発には自信があるとのこと。

 なんでもそうですが、コツコツと経験を重ねて、時には失敗もしながらノウハウを積み上げてきた人にはかないません。

 そんなピレリさんにも、来年に向けての宿題がいくつかあります。

 ここではそのうち「C6、使いづらいねん」問題と、「いつ使うんだよ、ウェットタイヤ」問題を取り上げようと思います。

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 ピレリは5月のイモラでのレースで、第6のコンパウンドとしてC6を導入しました。来季もドライコンパウンドは6種類とする予定ですが、C6の性能特性は改良を要すると考えているそうです。

 C6は、それまで最もソフトだったC5よりも、さらに一段階柔らかいコンパウンドです。そもそもの狙いは、従来C3〜C5が使われてきたレースで、C6を事実上の予選専用タイヤとすることでした。

 そうなると主なレースタイヤはC5とC4になり、レンジのなかではソフト寄りのこの2種類であれば、2ストップの戦略を採るチームが増えるという狙いがあったのです。

 まあ、戦略はコンディションなどにも左右されるので、そうそうピレリの目論見どおりにはなりません。しかし、C6が初めて投入されたサンマリノGP、じゃなくてエミリア・ロマーニャGP、つまりイモラでは、1ストップと2ストップに選択が分かれましたし、カナダでは上位陣はみんな2ストップをチョイスしました。

 ただ、ピレリにとっては予想外のことも起きました。イモラとカナダでは、C6を嫌ってC5で予選最速タイムを出したドライバーが何人かいたことです。

 どうやら、C6の方がグリップレベルが高いのはわかっていても、そのピークを引き出せなかったり、うまくウインドウに入れたのに、それが1周もたないことが多かったようです。

 また、これはソフトコンパウンドの宿命ではあるのですが、温度が上がったときにトレッド面の動き(グニャグニャする感じ)が大きすぎて、クルマのフィードバックが曖昧になるのを嫌がったドライバーもいたとのこと。

 こうした指摘を受けて、ピレリのマリオ・イゾラさんは、来年のC6はもう少し温度へのセンシティビティを下げつつ、C5より明らかに速いタイヤにしたいと語っています。

「C6とC5の差をもっと大きくするつもりです。現状でタイム差は1周あたり0.2秒ほどですが、これを少なくとも0.5秒くらいにしたいと思います」

「来年のC6は、今年と同じくらいのデグラデーションレベルでありながら、よりアグレッシブなタイヤになります。そうすることで、チームの戦略面での選択肢も増えるはずです」

 ピレリのエンジニアさんたちとしては、今年のC6は「あれれ、ちょっと外しちゃったなぁ」みたいなところなのかな。

 タイヤのパフォーマンスを引き出せるかどうかがギャンブルになってしまうと、チームとしては困るでしょうし、競争の本来の面白さをスポイルしかねません。来年のC6は、よりわかりやすく、使いやすいものになることを期待しましょう。

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 ピレリのレインタイヤには、サイドウォールのラインが緑のインターミディエイトと、青のウェットの2種類があります。しかし、ウェットにはなかなか登場の機会がなく、チームからは「使いたくても使う場面がない」と言われています。

 このウェットタイヤは、レーシングスピードで走っているとき、路面の水を毎秒85リットルほど排水する能力があるそうです。正直言って、それがどのくらいスゴいのか、よくわからないんですけどね。

 ただ、それほどの排水能力が必要な雨量になると、もはや現代のF1マシンでは危なくて走れたものではなく、コンディション不良と判断されて赤旗になってしまうらしい。つまり、雨用タイヤとしては、性能的にやや過剰ということです。

 青のウェットが実際にレースで使われたのは、記憶に新しいところでは2024年のブラジルGP、じゃなくてサンパウロGPです。

 このときはインターミディエイトを履いていたドライバーの多くが、ガックリとペースを落とし、無線で「危なくて走れない!」とアピールしながら、赤旗が出されるのを待っていました。ピットに入ってウェットに交換することで、トラックポジションを失うのを避けたかったんですね。そうこうするうちにコラピントがクラッシュして、まんまと赤旗中断になりました。

 予選で自己最高の3番手だった角田くんは、このとき誰よりも早くウェットに履き替えていました。しかし、再開後のレースではそこで失ったトラックポジションを挽回できず、結局7位でフィニッシュしています。

 来年に向けて、ピレリはこのウェットの性能を、もう少しインター寄りに変えようとしているそうです。

 イゾラさんによると、「クロスオーバーポイントをインターに近づけて、使いやすいタイヤにしたいと思っています。現在のように、事実上セーフティカーラン専用ではなく、レースで使えるタイヤにするということです」

 クロスオーバーポイントというのは、ラップタイムがどのくらい落ちたところが「替えどき」かという指標で、現在のインターミディエイトは、ドライペースの112%がクロスオーバーポイントです。

 「いまのところ、ウェットとインターのクロスオーバーポイントは(ドライペースの)118%あたりです。私たちとしては、これを116%か115%くらいまで下げたいと考えています」

 こうした狙いどおりのウェットタイヤになれば、雨のレースはこれまで以上に面白くなるでしょう。

 どのタイヤでスタートするか、そしてコンディションの変化に応じてインターからウェットへ、あるいはウェットからインターへどのタイミングで履き替えるか。そうしたドライバーとチームの判断が、成績を大きく左右する可能性が生まれるからです。中団グループ以降のチームにとって、これは下剋上のビッグチャンスにもなります。

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 ワンメイクのタイヤサプライヤーは、F1に限らずどのカテゴリーでもご苦労が多いと思います。「ライバルに負けることはないんだから、気が楽じゃん」と思ったら大間違い。つねに安定した性能を発揮して当たり前で、なにかトラブルでもあればチームからブーブー言われるだけではなく、企業イメージの悪化にもつながりかねません。

 つまり、ライバルとの勝負という厳しさはなくても、それ以外の部分で背負っている責任がものすごく大きいのです。もしタイヤを買う機会があって、選択肢のなかにピレリの製品があるのなら、F1ファンを自認する人は迷わずピレリを買いましょう!

 autosport のサイトの以下の記事を参考にしました:
Why Pirelli is keeping faith with 'difficult' C6 F1 tyre – but admits it needs to be faster
https://www.autosport.com/f1/news/why-pirelli-is-keeping-faith-with-difficult-c6-f1-tyre-but-admits-it-needs-to-be-faster/10735145/
What Pirelli aims to change on the F1 tyre nobody wants to use

https://www.autosport.com/f1/news/everything-pirelli-wants-to-change-about-f1s-wet-tyre-that-nobody-uses/10735573/


2025年6月24日
 

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