電欠レイクサイド- 2026 F1オーストラリアGPレビュー
50%電動のF1は、はたして本当にF1たりうるのか。2026年シーズン開幕戦オーストラリアGPの焦点のひとつは、間違いなくそこにありました。
【このレビューは、いわばF1の感想戦です。リザルトは掲載せず、レースの展開を詳しく追うこともいたしません。では、いったい何を書いているかというと、そのイベントでの重要な見どころや、逆に重箱の隅をつつくような話題にフォーカスしています。気軽に面白がっていただければ幸いです。】
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何せいろいろと新しいことだらけでしたから、今回は金曜のFP1のアタマからTVで観戦していたんですよ。すると、誰のオンボードだったか忘れましたが、レイクサイドドライブと呼ばれるターン9手前で、フーっと力が抜けるようにクルマが減速している映像が映し出されました。ゆるく左にカーブしていて、右手にヤシの木(?)が並んでいるこのセクションは、昨年までは全開の区間でした。
これを見て、「おおっ、これがウワサのスーパークリッピングか!」と思うと同時に、「レース中にもこれが起きるとしたら、ちょっと興ざめだな」と感じました。
実際、レーススタート直後にラッセルとルクレールの間で起きたターン9手前での順位の入れ替え(後方でも同様の例はいくつもありました)は、まるでふざけて先を譲り合っているかのようでした。あの不自然でアーティフィシャル(人工的)なオーバーテイクは、ちょっと言い方が大げさかもしれませんが、モーターレーシングの本質的な部分を愚弄しているような気がします。
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フェルスタッペンやノリスが、「こんなのF1じゃない!」と今年のクルマについて不満をこぼしているのも、要するにこういうところなんだろうと思います。
ちなみにノリスくん、Q3でアントネッリがコース上に落とした冷却ファンを踏んでしまったのは、ステアリングの表示を見るのに忙しくてデブリに気づくのが遅れたとのことでした。たぶん、電気エネルギーのマネージメントでやらねばならないことが多すぎて、ドライビングに集中できず、全然楽しくないのでしょう。
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とはいえ、「もうF1は終わりだ!」とか「こんなもの観るのヤメる!」とイキるつもりはまったくありません。だって、まだ新テクニカルレギュレーションで迎えた最初のシーズンの最初のレースが終わったばかりですから。
FIAのシングルシーター技術責任者ニコラス・トンバジスさんも、こうした意見が出るのは開幕前から承知していて、電気エネルギーの放出と回生の規定を調整することで、アーティフィシャルになりすぎないようにしたいと表明しています。ですから、今後ドライバーやチームの意見も聞きながら、ルールのアジャストが行われていくはずです。
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アルバート・パーク・サーキットは、2022年のコース改修で高速セクションが増え、低速コーナーとブレーキングの時間が減って、カレンダーのなかでも特に回生量が不足しがちサーキットになっていました(このレイアウト変更自体は、ドライバーたちには好評だったんですけどね)。ゆえに、新しい半電動F1のまだ洗練されていない面が、はっきりと見えてしまったわけです。
本当に「こんなのF1じゃない」のか。この問いに私たちが自分なりの結論を出すのは、もう少しハイブリッド・フレンドリーな他のサーキットでのレースを経たあと、FIAのルール調整の結果を見てからでもいいだろうと思いますよ。
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レースでは、多くの人が怖れていたように、スタートに失敗するドライバーが何人かいました。なかでもヒドかったのはアントネッリとローソンですね。
フロントローのアントネッリは、最終的には2位まで挽回できましたけど、8番手グリッドからのスタートだったローソンは本当にもったいなかった。特にチームメイトでルーキーのリンドブラッドが、ポイント圏内でフィニッシュしたことを考えるとね。
アントネッリはグリッドに着いた時点で、バッテリーの充電レベルが低かったとか。詳しい理由はわかりませんが、この新しいクルマに慣れるまではそういう失策もあるでしょう。ドライバーだけではなく、エンジニアも含めて。
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それにしても、そのローソンに追突しそうになりながら、クルマを斜めにして壁際ギリギリのスペースを通り抜けたコラピントのドライビングはすごかった! 未見の方は、ぜひともリプレイの動画を見てください。神様はコラピントを見放していないことがよーくわかります。その直後にいたペレスもうまく避けてくれました。
そして、テストの段階から言われていたとおり、フェラーリ勢はスタートの蹴り出しが抜群に良かった。まあ、開幕前からフレデリック・バスールさんは、「MGU-Hがなくなったんだから、ちゃんとスタートできるようにターボのサイズとか、ある程度の妥協もしながら考えるのが当たり前でしょ」と言っていましたからね。
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ただ、レースそのものはあまりエキサイティングではなかったかな。やはりまだチームごとのペースの差が大きくて、ちょっとしたことで順位の変動が起きる状況ではありませんでした。まあ、新レギュレーションの初年度の初戦ですから、それは仕方のないところです。
メルセデス対フェラーリの勝負は、最初のVSCでピットに入ったかどうかに左右された部分もありました。2回目のVSCでは、ボッタスがピットエントリーに止まったためにピットレーンクローズになり、フェラーリ勢はタイヤ交換ができませんでした。
いずれにせよ、今回はフェラーリがいいパフォーマンスを示してくれたおかげで、なんとかレースらしいものになったという感じです。あれがなければメルセデス勢のブッチギリだったでしょう。
2022年からのグラウンドエフェクトカー時代では、ポーパシングの問題を真っ先に解決したレッドブルが、それからの4シーズンを支配しました。今度は電気エネルギーのマネージメントでまず一歩リードしたメルセデスが、この時代の覇者になるという予感がしないでもありません。いまのところ、具体的な根拠はありませんけど。
また、レッドブル勢がまともにレースをできていたら、もう少し面白くなっていたかもしれませんね。ハジャーは最後まで走っていれば、ハミルトンといい勝負ができた可能性があります。そして、フェルスタッペンが上位グリッドからスタートできれば、おそらくトップ4に絡む戦いができたかと。
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アウディは金曜のプラクティスからイイ感じで、予選はボルトレートが10位、ヒュルケンベルグが11位と、レーシングブルズに次いで中団グループの2番手につけました。チームとしては新参ではないものの、パワーユニットが新しいこともあって、最初はもう少し苦戦するかと思っていましたが、キッチリ準備をしてきましたね。お見逸れしました。
レースではヒュルケンベルグがスタートできず、その点ではやはり信頼性が万全とは言えない部分を露呈しました。しかし、ボルトレートは9位でフィニッシュして、アウディに初ポイントを持ち帰っています。彼は2ストップの戦略を採り、1ストップ勢よりタイヤの状態が良かったこともあって、中盤以降は結構ペースが速かったんですよね。
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レッドブル・フォードのパワーユニットもちゃんと機能していました。それだけに、予選でがんばって3番手につけたハジャーのユニットが、レース序盤の段階で壊れてしまったのが残念です。本人によると「スタート直後からヘンな音がしていて、最後まで持ちそうにないと思っていた」とか。
予選でフェルスタッペンでクラッシュしたのも、ERS(エネルギー回生システム)関係のトラブルでリアがいきなりロックしたためだそうです。ただ、信頼性はまだ完璧とは言えないにしても、パフォーマンスとしてはメルセデスやフェラーリを相手に十分に戦えるレベルにありそうに見えました。
決勝ではレーシングブルズのリンドブラッドが8位に入って、デビュー戦にして自身の初ポイントを獲得しました。これはお手柄ですね。フェルスタッペンが終盤にノリスを追いきれなかったのは、タイヤのデグラデーションのせいだそうです。
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ピアストリのレコネサンスラップでクラッシュは衝撃的でした。彼は「タイヤが冷えていたし、必要もないのに縁石に乗ったのは自分のミス。だけど、電気のパワーが急にドカンと出てグリップを失った」と言っています。ホームグランプリでの出来事ですから、ピアストリだけでなくオーストラリアのファンもお気の毒でした。
ノリスも金曜からいまひとつ精彩に欠ける感じでしたね。チャンピオンになって気が抜けたなんてことはないにしても、今年の半電動マシンが好きになれず、気分が乗らないところもあるのかな。
マクラーレンのチーム代表、アンドレア・ステラは「メルセデスに対して、最大でラップあたり1秒のパフォーマンスギャップがあった」と認めています。
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ハースとアルピーヌは、今季は中団勢のトップを走るのではないかと前評判が高かったのですが、シーズン初戦はちょっと期待外れな結果に終わりました。
オコンとガスリーは、ターン9へのアプローチで抜いたり抜かれたりを繰り返しながらバトルをしていました。あれはおそらく、チームによって電気エネルギーの使い方が違っていたせいで、その部分では両者ともにまだマネージメントのやり方を詰めきれていなかったのでしょう。
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クルマだけではなく、チームそのものがゼロからの出発だったキャデラックは、いわばまだ「F1練習生」みたいなものです。長い目で見てあげましょう。もっとも、チーム首脳にはグレアム・ロードン、パット・シモンズ、ボブ・ベルといったベテランが揃っていますから、遠からず初心者マークは外せると思います。
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アストンマーティンとホンダは、まだレースができる状態にならないうちに開幕戦を迎えてしまいました。信頼性やパフォーマンスがどうこうという以前の問題です。もうしばらく様子を見るしかありませんね。
フジテレビの中継では、番組の最初と最後にホンダのCMが流れていました。それが自動車ではなく、ボートのエンジン(船外機)を主役にしたものだったんですよね。まるで「弊社といたしましては、他にもいろいろとやることがございますので……」と言っているような気がしたのは私だけでしょうか。いや、たぶん私だけですね。
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次の中国GPはスプリントフォーマットですから、プラクティスが金曜午前の1回しかありません。どのチームもエネルギーマネージメントについては、出たとこ勝負になりそうです。ただ、ハーベスティング(エネルギー回生)に関しては、アルバート・パークより上海の方がずっと楽なはず。
ともあれ、この半電動F1のオプティマイゼーション(最適化)には、まだしばらく時間がかかるでしょう。そして、メカオタクの面々(私も含めて)には、そのプロセスもまた興味深いテーマのひとつです。
2026年3月10日
