体と心のデトックスがもたらす、思考の「余白」
2022年10月21日。
月曜日のあさ、キッチンのカウンターから食材が消えました。
妻のHannaが「今週は断食する」と言いだしたからです。
朝食のパンをやくトースターの音だけが、静かに響いていました。
つまの断食は、徹底しています。
月曜日は準備食として、ひるにお豆腐とキムチと納豆をすこしだけ。
火曜日と水曜日の丸二日間は、水と特製のレモネードだけで過ごします。
「酵素ドリンクって、いいやつは四千円以上するんだよね」
つまはレモンをしぼり、メープルシロップをお湯でわりながら水筒に詰めました。
「そんなに高いの買いたくないから、これでいいの」
低血糖と頭痛をふせぐための、自家製レモネードだそうです。
丸二日間の断食をおえた木曜日のひる、キッチンになべの匂いが漂いました。
白菜と、キノコと、ネギと、大根。
ただ水で煮ただけの、何のアジつけもないナベです。
つまはそれにポン酢をすこしだけ垂らし、大根を口にはこびました。
「味が、ものすごく濃い」
つまは目を見開いて言いました。
「大根って、こんなに大根の味がするんだね」
日頃、どれだけ添加物や甘いものに味覚がならされていたか。
それをリセットするための、引き算の儀式なのだそうです。
つまは三人の子どもを出産してから、体質がかわったと言います。
花粉症がひどくなり、頭痛になやみ、下まぶたをあっかんべーすると真っ白な貧血。
キッチンの棚には、サプリメントの袋がならび、コンロの上には真っ黒な鉄のフライパンが置かれています。
「鉄分が食事に溶け出すから」と、卵焼き器まで重い鉄製にかわりました。
そんな身体の波と付き合いながら、つまは絶対に「睡眠」をけずりません。
どんなに納品が立て込んで忙しくても、まいにち七時間は寝る。
子どもたちがすこしでも鼻水をたらそうものなら、夕方にはさっさと風呂にいれます。
寝室の天井にプロジェクターでアニメを投影し、全員で布団にもぐり込んで寝てしまいます。
昨日の保育園の個人面談で、担任の先生に言われました。
「息子くん、本当に風邪をひかなくて丈夫ですね」
面談から帰ってきたつまは、鉄のフライパンで夕飯をつくりながら、とても嬉しそうに笑っていました。
合理的な数値や体調の管理は、ぼくの得意分野です。
しかし、つまは自分の身体感覚を信じ、引き算をしながら、家族のコンディションを静かに整えていました。
鉄のフライパンで焼かれた餃子が、ぱちぱちと音を立てていました。
凡人夫の備忘録。アーティスト妻の歩み
地方の無名アーティストの妻が、東京に挑戦するまでの話。
シーズン1から、全部読めます。
独立して、迷って、それでも描く。
正解のない日々を歩くシーズン2はこちら。
生活と、創作。
泥臭い日々の記録、最新のシーズン3はこちら。
初めての個展を経て、外の世界と繋がり、
泥臭く価値を証明していくシーズン4(共鳴編)はこちら。
自己表現を確立し、他者と深く繋がっていく、
最新のシーズン5(対話と確立編)はこちら。
アーティストHannaの現在
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