誕生花のアートと自信
2022年11月12日。
妻はすこし焦った顔で車を運転していました。
「キーホルダーの金具がない」
昨日の夜、妻が悲鳴のような声をあげました。
頼んでいたはずの金具が届いておらず、完全な発注ミスでした。
ぼくが朝から急いでかなぐを買いに走り、妻が先にこどもたちを連れて会場へ入ることになりました。
会場の金蛇水神社では、個展の二日目と同時に、敷地内でのマルシェが開催されます。
「ママ、ママ」と泣いて離れない二人の子どもたちも、今日は売り子としていっしょに参加する予定でした。
個展の壁には、ちいさな正方形のイラストがずらりと並んでいました。
妻が5月18日から、インスタグラムでまいにち更新し続けている「誕生花」のアートです。
もともとは、今年の2月に買ったiPadの使い方に慣れるために始めたものでした。
iPadを使いこなすために、自分の誕生日であるチューリップの日からスタートしたのです。
最近は、ぼくの残業や子どもの看病で、作業が深夜におよび、朝の更新が遅れることもありました。
それでも、半年分の印刷された花々が壁一面に並んだ景色は、圧倒的でした。
スマートフォンの小さな画面で見ているときには感じられなかった、重みのようなものがありました。
毎日コツコツと積み上げてきた時間が、目に見える形となってそこに存在していました。
「展示してみて、本当によかった」
金具を届けたぼくに、妻は展示された花たちを見つめながら言いました。
誕生花の作品は、妻のなかで、確かな自信にかわっているようでした。
アトリエの片隅には、愛犬のボストンテリア「ラフ」を描いた絵も飾られていました。
来年にむけて、ぼくとはなしあいながらストーリーを考えている絵本のキャラクターです。
昔のタッチがいいのか、今のタッチがいいのか。
妻は二つの異なる表情のラフを並べて、お客さんの反応を楽しそうに待っていました。
風のない穏やかな秋晴れのなかで、神社の社殿が静かにたたずんでいました。
凡人夫の備忘録。アーティスト妻の歩み
地方の無名アーティストの妻が、東京に挑戦するまでの話。
シーズン1から、全部読めます。
独立して、迷って、それでも描く。
正解のない日々を歩くシーズン2はこちら。
生活と、創作。
泥臭い日々の記録、最新のシーズン3はこちら。
初めての個展を経て、外の世界と繋がり、
泥臭く価値を証明していくシーズン4(共鳴編)はこちら。
自己表現を確立し、他者と深く繋がっていく、
最新のシーズン5(対話と確立編)はこちら。
アーティストHannaの現在
妻の作品はコチラで見れます。
https://www.instagram.com/hanna.iwanuma
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