生きるためにいらない「余白」にこそ、価値がある
2022年10月18日。
妻はアーティストになる前、約10年間、介護士として働いていました。
理想と現実のギャップに悩み、闇を見たこともあったと言います。
それでも、彼女が介護の現場で貫きとおしした「一本の軸」がありました。
それは、利用者の方に「生きがい」を提供することです。
毎日の楽しみが食事だけになってしまいがちな施設生活。
妻は、昔好きだった音楽を朝にかけてあげたり、
絵が好きな人にはスケッチブックを広げてあげたりしました。
言葉が通じない方にも、シーツのシワを綺麗に伸ばし、
パジャマのボタンを整え、冷たい足に暖かい靴下を履かせました。
「音楽がなくても、シワが伸びていなくても、人は生きていける。
でも、生きてるだけじゃつまらないじゃないですか」
生命を維持するだけなら不要かもしれない「余白」。
しかし、その小さな彩りや尊厳こそが、
人の生活に張り合いを持たせ、豊かなものにしてくれる。
妻は、少しでも幸せそうな顔をしてくれる高齢者の方々を見るのが、
本当に好きだったそうです。
今、妻は木材アーティストとして活動しています。
キャンバスではなく、厚みのある木の板に絵を描くスタイル。
正面だけでなく、側面の厚みの部分にまで絵を描き込んだり、
依頼主の希望に合わせて、こっそりとメッセージを刻んだりします。
「その人の生活や想いに寄り添ったものを作りたいから」と。
介護士時代に大切にしていた「生活に彩りを与える」というプライドは、
筆を持つようになった今も、少しも変わっていません。
人生の中で「これだけは譲れない」という一本の軸を持つこと。
それが、どんな仕事をするにしても、
自分自身の仕事を誇り高くしてくれるのだと、
嬉しそうにキャンバスの側面を塗る妻の背中が教えてくれました。
凡人夫の備忘録。アーティスト妻の歩み
地方の無名アーティストの妻が、東京に挑戦するまでの話。
シーズン1から、全部読めます。
独立して、迷って、それでも描く。
正解のない日々を歩くシーズン2はこちら。
生活と、創作。
泥臭い日々の記録、最新のシーズン3はこちら。
初めての個展を経て、外の世界と繋がり、
泥臭く価値を証明していくシーズン4(共鳴編)はこちら。
アーティストHannaの現在
妻の作品はコチラで見れます。
https://www.instagram.com/hanna.iwanuma
