倒産件数10,300件の激震🏭費用関数の分析による「操業停止点」で解き明かす小規模事業者が直面する厳しい事業環境💴:2026年版中小企業白書 No.25
中小企業診断士試験対策としても実務の視点
としても役立つ中小企業白書解説シリーズ🌟
今回は「【動向・業況】倒産件数の推移と構成比」
をピックアップしていきたいと思います📊
「2010年代以降、減少傾向にあった倒産件数が
コロナ禍以降なぜ増加に転じているのか?」
「なぜ従業員10人未満の小規模事業者に
倒産が集中しているのか?」
中小企業白書に示された客観的データを手掛かりに
ミクロ経済学の重要概念である「固定費比率」
および「操業停止点(Shutdown Point)」などといった
費用関数の分析にスポットを当てながら
なぜ小規模企業が限界に追い込まれているのかを
数式モデルを用いて徹底的に考察していきます!
倒産件数のトレンド転換
資料の「図1 倒産件数の推移」および
「図2 2025年の倒産件数の構成比(業種別)」
から読み取れる決定的なデータ数値は以下の通りです。
①倒産件数のトレンド転換(図1)
✅2025年の倒産件数は10,300件
2010年代以降、倒産件数は長期的な減少傾向に
ありましたが、コロナ禍以降に再び増加傾向へと転じ
2025年には10,300件に達しました。
②企業規模別の圧倒的偏り(図1下段)
✅従業員10人未満の企業が全体の約9割
従業員規模別の内訳を見ると
「~4人」および「5~9人」の層が
圧倒的多数を占めており
従業員数10人未満の小規模企業の倒産が
全体の9割近くを占めています🔖
③業種別構成比のワースト順位(図2)
✅サービス業他がトップ(33.8%)
2025年の倒産件数を業種別に見ると
「サービス業他」が33.8%で
最も大きな割合を占めています📊
✅建設業(19.6%)・製造業(11.5%)が続く
次いで「建設業」(19.6%)、「製造業」(11.5%)
「小売業」(11.4%)、「卸売業」(11.1%)の順と
なっていることは頭の片隅に留めておいてください。
※情報通信業(4.3%)、運輸業(3.8%)
不動産業(3.2%)、農・林・漁・鉱業(1.2%)
金融・保険業(0.2%)。
要点を絞ると、倒産件数の増加は
中堅・大企業ではなく
「従業員10人未満の小規模事業者」および
「サービス業・建設業」に集中して
発生しているということが分析できます📝
ミクロ経済学「固定費比率と操業停止点」
ここからは今回のメインテーマである
「固定費比率」と「操業停止点(Shutdown Point)」
の数学的モデルを用いて、小規模企業の
倒産メカニズムを考察していきます🧠
「企業の費用構造と損益分岐点・操業停止点」という
ミクロ経済学の理論に基づきながら
一緒に考えて行ければと思います💴
企業の総費用$${ TC(Q) }$$は、生産量を$${ Q }$$とすると
固定費$${ FC }$$と可変費$${ VC(Q) }$$の和で
定義されることになります!
$${TC(Q) = FC + VC(Q)}$$
ここで、1単位あたりの平均費用$${ AC(Q) }$$
および平均可変費用$${ AVC(Q) }$$は
以下のように表されます。
$${\\AC(Q) = \frac{TC(Q)}{Q} = \frac{FC}{Q} + \frac{VC(Q)}{Q}}$$
$${\\AVC(Q) = \frac{VC(Q)}{Q}}$$
市場価格を$${ P }$$としたとき
短期における企業の利益$${ \Pi }$$を示す
利潤関数は、以下の通りです。
$${\Pi = P \cdot Q - TC(Q) = P \cdot Q - VC(Q) - FC}$$
企業が操業を行うか停止(生産量$${ Q = 0 }$$)するかを
判断する基準は、以下の2点です。
損益分岐点(Break-even Point)
条件:$${ P = \min(AC) }$$
価格$${ P }$$平均費用$${ AC }$$の最小値に
等しいとき、利益$${ \Pi = 0 }$$となります。
これ以上の価格であれば経済学的な利潤が
発生することになります!
操業停止点(Shutdown Point)
条件:$${ P = \min(AVC) }$$
価格$${ P }$$が平均可変費用$${ AVC }$$の
最小値を下回った場合($${ P < \min(AVC) }$$)
操業を継続すると$${ P \cdot Q - VC(Q) < 0 }$$となり
「操業することで、操業しない場合
(赤字額 $${ FC }$)よりも赤字が拡大する」
という状態になります。
したがって、操業を直ちに停止することが
合理的判断となります📝
💡考察【小規模企業(10人未満)に起きている「操業停止点」の上昇】
図1で倒産の9割近くを従業員10人未満の企業が
占めている背景には、近年の経済環境変化による
「操業停止点ラインの上昇」と「高比率な固定費の
ダブルパンチ」が存在します。
①コスト高による$${ AVC }$$曲線の上昇
人件費の上昇や資材・エネルギー価格の高騰は
生産1単位あたりにかかる可変費用$${ VC }$$を直接押し上げます。
これにより、平均可変費用曲線$${ AVC }$$全体が
上方にシフトし、操業停止点の基準値$${ \min(AVC) }$$自体が高くなります。
②価格転嫁不能による$${ P < AVC }$$の成立
小規模企業はプライス・ターカー(価格受容者)の立場
に近いため、費用の上昇分を販売価格$${ P }$$に
上乗せすることが困難です。
結果として、引き上げられた操業停止点ライン$${ \min(AVC) }$$を
実際の販売価格$${ P }$$が下回る状態($${ P < AVC }$$)が
容易に発生し得る事業環境になって
しまっている可能性が高いと考察できます。
③固定費$${ FC }$$の重みと市場退出
小規模企業は大規模企業に比べて
相対的に「規模の経済」がはたらきにくいため
1単位あたりの固定費$${ \frac{FC}{Q} }$$が非常に大きくなります。
$${ P < AVC }$$の状態に陥ると
固定費$${ FC }$$の回収どころか
日常の可変費用$${ VC }$$すら売上高で
カバーできなくなり、手元の現預金が
急速に底をついて市場からの退出(倒産)に至ること
を判断せざるを得ない状況になってしまうのです。
今回の講義のまとめは以下の通りです✨
2025年の倒産件数は10,300件に達し
その9割近くを従業員10人未満の小規模事業者が占めている。小規模企業が直面している倒産急増の本質は
コスト高による平均可変費用$${ AVC }$$の上昇と価格転嫁難が招く「操業停止点$${ P < \min(AVC) }$$の突破」である。損益分岐点$${ P = \min(AC) }$$と操業停止点$${ P = \min(AVC) }$$の概念やメカニズムを
正しく理解しておくことが、一次試験対策および
二次試験の財務・経営分析において決定的に重要となる。
ミクロ経済学の理論モデル(費用曲線)を
頭に描きながら白書データを読み解くことで
試験で問われる引っかけパターンを確実に
見破れるようになることでしょう!
次回も最新データと確固たる経済理論を
リンクさせた講義をお届けできればと存じます!
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本記事は、中小企業庁公表の「2026年版中小企業白書(概要等)」を基に、学習および情報提供の目的で作成されたものです。
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