経審P点から見る「自社の立ち位置」|財務・技術・社会性の現在地を確認する
前週まで、工事別採算を現場に落とし込み、受注判断に活かす視点を整理してきました。
工事別採算で整えた財務の数字は、経営事項審査(経審)の評価にもつながっていきます。
公共工事に取り組む会社にとって、経審のP点(総合評定値)は入札参加の土台になります。ただ、「点数を上げたい」と思っても、どこから手をつけるべきか分からないという声をよく聞きます。
その第一歩は、自社の「現在地」を知ることです。今回は、経審P点を"自己診断シート"として使い、財務・技術・社会性の現在地を確認する視点を整理します。
✅ 結論:経審の点数改善は、まず自社の現在地把握から。P点を構成する軸のどこが強く、どこが弱いかを棚卸しすることが出発点になります。ただし、目標とする点数や重視すべき軸は、会社の規模・受注戦略・地域によって変わります
📌 ① P点は何で決まるか(おさらい)
経審のP点(総合評定値)は、公共工事に取り組む会社を対象に、複数の評価軸を組み合わせて算出されます。大きく分けると次の5つです。
X1:完成工事高(工事の売上規模)
X2:自己資本額・利益額(財務の体力)
Y:経営状況(財務分析=いわゆる経営状況分析)
Z:技術力(技術職員数・元請完成工事高)
W:社会性等(保険・福祉・法令遵守などの加点項目)
配点の重みは制度で決まっていますが、社長がまず押さえたいのは「自社はどの軸で点を稼げていて、どの軸が弱いか」という相対的な現在地です。
📌 ② 「現在地」を確認する自己診断の視点
点数の絶対値だけを見ても、打ち手にはつながりにくいものです。次のような視点で棚卸しすると、現在地が見えやすくなります。
過去2〜3期のP点と各軸の推移(上がっている軸・下がっている軸)
同規模・同業種のおおよその水準と比べてどうか
自社の受注したい工事の入札に必要な点数と、いまの差
ただし、他社比較はあくまで目安です。地域・工種によって必要な水準は変わるため、「自社が取りたい工事に届いているか」を軸に見るのが現実的です。
📌 ③ 財務(X2・Y)の現在地
財務は、日々の工事採算の積み上げが効いてくる軸です。前週まで整理した工事別採算は、ここにつながります。
自己資本が積み上がっているか(利益の内部留保)
経営状況分析(Y)の指標が悪化していないか
借入と自己資本のバランス
財務は一度に大きく動かしにくい軸です。単年の数字より、複数期でどう積み上げるかという視点が向いていることが多いです。
📌 ④ 技術力(Z)の現在地
技術力は、技術職員の数や資格、元請完成工事高などで評価されます。
技術職員(資格者)が十分にいるか
資格取得を計画的に進められているか
元請としての完成工事高を積めているか
技術職員の育成・採用は時間がかかります。中期の視点で計画する軸として捉えるのが現実的な場合が多いです。
📌 ⑤ 社会性等(W)の現在地
社会性(W)は、保険・福祉・法令遵守などの加点項目で構成されます。
建設業退職金共済(建退共)や退職一時金・企業年金の整備
法定外労働災害補償への加入
若年技術者の育成・確保
防災協定、ISO など
Wは制度への加入・整備で積める項目が比較的多く、着手しやすい軸とされることがあります。ただし、自社にとっての費用対効果は状況によって変わります。
📌 ⑥ 現在地確認を「点数を上げる」前にやる理由
いきなり「完工高を増やす」「技術者を採る」と動くと、負担が大きいわりに効果が読みにくいことがあります。
先に現在地を確認しておくと:
どの軸が費用対効果よく伸ばせそうか、当たりをつけやすい
目標の点数との差から、必要な打ち手の規模が見える
単年でやること・複数年でやることを分けやすい
現在地の把握は、次回以降の「伸ばす軸の優先順位付け」の土台になります。
📌 まとめ
経審の点数改善は、まず自社の現在地把握から始めると打ち手が見えやすい
P点は完成工事高・財務・経営状況・技術力・社会性の軸で構成される
財務(X2・Y)は日々の工事採算の積み上げが効く軸
技術力(Z)は育成・採用に時間がかかる中期の軸
社会性(W)は制度整備で積みやすく着手しやすいとされることが多い
目標点数や重視する軸は、会社の規模・受注戦略・地域によって変わる
📌 次回予告
次回は、「経審の「伸ばしやすい軸」を見極める|費用対効果で優先順位を決める」を整理します。現在地を確認したうえで、どの軸から手をつけると効率がよいか。社会性・技術・財務の性質の違いをふまえた優先順位の考え方を整理します。
※「自社の経審の立ち位置を一緒に確認したい」方はこちらからご相談ください。現在地の棚卸しから伸ばす軸の見極めまで、自社の状況に合わせて一緒に進めます。
