経審の「伸ばしやすい軸」を見極める|費用対効果で優先順位を決める
前回、経審P点を自己診断シートとして使い、財務・技術・社会性の現在地を確認する視点を整理しました。
現在地が見えたら、次は「どの軸から手をつけるか」です。すべての軸を同時に伸ばそうとすると、中小建設会社には負担が大きすぎることが多いです。
大切なのは、費用対効果で優先順位をつけること。今回は、経審の各軸の性質の違いをふまえて、伸ばしやすい軸を見極める考え方を整理します。
✅ 結論:経審の軸には「着手しやすさ」と「効果が出るまでの時間」に差があります。一般に社会性(W)は着手しやすく、技術(Z)は中期、財務(X2・Y)は日々の採算の積み上げ。この性質の違いから優先順位を考えると整理しやすくなります。ただし、最適な順番は会社の状況によって変わります
📌 ① 軸ごとに「性質」が違う
同じ1点でも、稼ぐための難易度と時間は軸によって違います。ざっくり整理すると次のような傾向があります。
社会性(W):制度加入・整備で積める項目が多く、比較的短期で着手しやすい
技術力(Z):技術職員の育成・採用が中心で、時間がかかる中期の軸
財務(X2・Y):利益の積み上げが必要で、単年では動きにくい長期の軸
完成工事高(X1):受注の積み上げが必要で、受注戦略と連動する
この性質の違いを知っておくと、「まず何から」の判断がしやすくなります。
📌 ② 着手しやすい社会性(W)から見る
多くのケースで、最初に検討しやすいのが社会性(W)です。
建設業退職金共済(建退共)への加入
退職一時金制度・企業年金の整備
法定外労働災害補償への加入
若年技術者・技能者の育成、確保
これらは制度への加入・整備で積める項目が中心のため、技術者を増やすより着手しやすいことがあります。ただし、加入には掛金などのコストも伴うため、費用対効果は会社の状況によって変わります。取り切れていない加点がないか、まず確認するのが一例です。
📌 ③ 技術力(Z)は「中期の計画」として
技術力(Z)は、点数への影響が大きい軸である一方、伸ばすには時間がかかります。
技術職員(資格者)の計画的な育成
若手の資格取得支援
元請としての完成工事高の積み上げ
すぐに点数化しにくいため、単年ではなく2〜3年の計画で捉えるのが現実的な場合が多いです。採用・育成の計画(人員計画)と連動させると、無理なく進みやすくなります。
📌 ④ 財務(X2・Y)は日々の採算の延長線上
財務の軸は、経審のためだけに動かすものではなく、日々の工事採算の積み上げの結果として表れます。
工事別採算の改善 → 利益の確保 → 自己資本の積み上げ(X2)
経営状況分析(Y)の指標の維持・改善
前週まで整理した工事別採算の取り組みが、ここに効いてきます。財務は即効性が低い一方、会社の体力そのものを底上げする軸です。
📌 ⑤ 優先順位のつけ方の一例
以上の性質から、優先順位の考え方を一例として整理すると:
短期(今期):社会性(W)で取り切れていない加点を確認・整備する
中期(2〜3年):技術職員の育成・採用を計画に組み込む
継続:工事別採算を積み上げ、財務(X2・Y)を底上げする
ただし、これは順番の一例です。すでにWを取り切っている会社なら技術・財務が主戦場になりますし、取りたい工事に必要な点数によっても変わります。
📌 ⑥ 「点数のため」だけにしない
経審の点数を目的化すると、コストばかりかかって経営にプラスにならない打ち手を選んでしまうことがあります。
建退共や労災の整備 → 人材の定着・安心にもつながる
技術者の育成 → 施工品質・受注力の向上にもつながる
工事別採算の改善 → 利益体質そのものの改善
「経審の点数」と「経営の強化」が重なる打ち手から選ぶと、費用対効果が高くなりやすいです。どれが自社に合うかは、専門家と相談しながら整理するのも選択肢の一つです。
📌 まとめ
経審の軸は「着手しやすさ」と「効果までの時間」に差がある
社会性(W)は制度整備で積みやすく、短期で着手しやすいとされることが多い
技術力(Z)は育成・採用が中心で中期の計画として捉える
財務(X2・Y)は工事別採算の積み上げの延長線上にある長期の軸
優先順位は「短期W・中期Z・継続で財務」が一例。会社の状況で変わる
点数と経営強化が重なる打ち手ほど費用対効果が高くなりやすい
📌 次回予告
次回は、「経審の「現在地」を来期の打ち手につなぐ|決算・申請から逆算する1年」を整理します。伸ばす軸を決めたら、それをいつ・どの順で実行するか。決算・申請のタイミングから逆算した年間の打ち手の並べ方を整理します。
※「伸ばす軸の優先順位を一緒に決めたい」方はこちらからご相談ください。費用対効果をふまえた打ち手の選び方から、自社の状況に合わせて一緒に進めます。
