アウトカムマップができるまで
お疲れ様です!
カミナシでCS(カスタマーサクセス)をしている石井といいます。
このnoteは何?
・「カミナシ 設備保全」のCS設計において取り組んだ施策「アウトカムマップの作成」について紹介したもの
誰に向けたnote?
・カスタマーサクセス業務の設計に携わっている方
・自社プロダクトの価値を明確にしたい方
・お客様との成果の合意方法に悩まれている方
・カミナシCSの取り組みに興味がある方 etc…
背景/なぜやったのか
① リテンション活動を設計するため
Quickwinを整理したことで、キックオフ及び初回ハンズオン時点のお客様にはプロダクトの良さを実感いただけている手応えはありました。
一方で、リテンションフェーズ(カミナシではオンボーディング完了以降を「リテンション」と呼んでいます)で何をするべきか?に関してはほとんど白紙の状態。
成果創出のための伴走を実現するためには、 CS自身がその道標となる「何か」を手にしている必要がありました。
② お客様の事業への貢献を明確にするため
リテンション活動の先には当然、リニューアル(契約更新)が待っています。お客様にご納得の上で更新の意思決定をしていただくには、「便利である」以上の成果を実感いただかなければなりません。
特に経営レイヤーの方々に評価いただく上で、「プロダクトがお客様の事業のどのポイント(経営指標)に寄与しうるのか」は改めて明確にする必要がありました。
③ THE MODEL間で「プロダクトがもたらす成果」の共通認識を持つため
こういった整理を行う上で起こりがちなこと(私がよくやってしまいがちな失敗)として、「CSで独りよがりなサクセスストーリーを作ってしまう」ことが挙げられます。
マーケ→セールス→CSとお客様がカミナシと関わってくださる中で「なんか、事例で読んだことと微妙に違うな…」「営業担当の方から伺った話と若干ズレてる気がする…」という状態が仮に生まれてしまった場合、それはプロダクトがもたらす成果を正しく整理し社内外に伝えられていないCSの責任であると個人的には考えています(あくまで個人の意見です…)。
THE MODEL各部門が一枚岩になるための地図を作りたい、お客様のサクセスがカミナシ社内で循環する状態を作りたい、という想いがありました。
アウトカムマップとは
企業ごとに様々な定義があるかと思いますが、今回のアウトカムマップは「現場のQuickwinから経営インパクトまでの関連性を整理したもの」として定義し、作成しています。
イメージ図
最終的に出来上がったものは以下のようなものです

構成要素

①プロダクト価値
これはなに?
・お客様に「ええやん」「便利やん」とQuickwinを実感いただける、プロダクトそのものが持っている特徴のこと
対象
実際にプロダクトを触ってくださる現場メンバー
計測の仕方
・プロダクトのログを見れば、そのプロダクト価値が発揮されていることを予測することが可能(カミナシだけで判断が可能)
※詳しくは前回noteを参照ください。
②アウトカム
これはなに?
・プロダクトを活用いただいた先にお客様に起こった「良い変化」のこと
いわゆるライトサクセスと呼ばれるもの(の中でも深めのもの)が該当
対象
・現場メンバー
・現場の部門長
計測の仕方
・指標自体はカミナシで設定することができますが、実際にそのアウトカムが生じたか?は直接お客様に確認する必要があります
③インパクト
これはなに?
プロダクトが最終的にもたらした変化
いわゆるディープサクセスと呼ばれるものであり、経営指標に影響を与えるもの
※よりわかりやすく言えば、先方の社長が聞いて「…それで?」とならないもののイメージ
対象
・経営層
計測の仕方
・アウトカム同様、お客様にヒアリングをすることでしか計測はできません。
※本noteではインパクトの具体は言及していませんが、「それぞれのアウトカムを実現した先にある状態」としてイメージいただけますと幸いです
使い方
オンボーディング段階
カミナシ 設備保全ではオンボーディングのプログラムを以下の4つに分けています。
このうち、決裁レイヤー&プロジェクトオーナーと実施する「事前ミーティング」でアウトカムマップを提示しながら「どの成果を目指していくか?」を擦り合わせしています。

リテンション段階
オンボーディング終了後は活用のロードマップを状況に合わせて更新していく形になります。
目指す成果に対する現在地はどこか、他に優先度が上がったアウトカムがないかを確認します。
リニューアル段階
EBR/QBR(半期ごとのビジネスレビュー。カミナシでは「年振り」「中振り」と呼んでいます)を実施する段階では、プロダクトの利用状況と事前のヒアリングを組み合わせて「プロダクトの価値が本当に発揮されているかどうか」「目指す成果が実現できたかどうか」をオンボーディング同様決裁レイヤーの方とプロジェクトオーナーにレビューしていただき、契約更新の判断材料としていただきます。
その他(他部門連携)
・セールスへの還元
目指す成果の合意についてはオンボーディングの前段階からでも実施が可能ですので、「このプロダクトがどんなアウトカムを出せるのか」はセールスにも共有をし、一部メンバーは既に商談時に使ってくれています。
・マーケへの還元
さらに前工程で言えば、マーケで作成してくれる事例に関しても、「この事例はどんな成果が出たものなのか」をアウトカムマップを軸に整理してもらっています
※他部門連携の取り組みはまだ始まったばかりなので、実践を重ねていきたいと思っています。
やったこと
作成パート
ここからは、実際の作成の流れを紹介します。
Step1. 経営層の関心が高いテーマを考える(これまでの商談を振り返る)
まずはプロダクトがβ版だった時代(正式版リリース以前)から現在に至るまでの商談を振り返り、決裁レイヤーの方が何にご期待下さっているのかということに向き直りました。
結果、商談時に”刺さっている”ポイントはβ版時代から大きくは変わっていないことがわかりました。
例:現場の実態を把握したい
Step2. Quickwinの延長線にある成果を考える
前回のnoteの終わりに「Quickwinを整理する中でアウトカムの輪郭がはっきりした」と記載したのはまさにここです。
お客様の「カミナシええやん」「便利やん」の先を突き詰めていくとどんな良い変化があるのか?ということを整理しました
例:その場でパッと写真が残せるの、便利!ええやん!
→ よりリッチな記録が溜まっていく(記録の精度が上がる)ことに繋がりそう
Step3. 2つの視点を突合し、分類を行う
「商談時点でご期待をいただいていること」と「実際に活用いただいた先の景色」を擦り合わせていくと、共通して目指す成果が合致するものがありました。
プロダクト価値は既に洗い出しが済んでいたので、上記を元に最終的なアウトカムを振り分けていく形で整理を行いました。
例:アウトカム「状況の見える化」→プロダクト価値「視覚情報を記録できる」→関連する機能「写真撮影機能」
Step4. それぞれのアウトカムとプロダクト価値を計測するための定量指標を設定する
プロダクト価値とアウトカムの整理ができたら、それぞれを判定するための計測指標を決めます。
ここでは、「定量で測定できること」にこだわりました。アウトカムによっては定量に置き換えることが難しい場合もあるのですが、「活用前後で業務フローがどう変わるか」に着目することで関連する指標を計測のターゲットにしていきました。
例:状況の見える化の場合…
アウトカムの計測指標は”状況確認にかかる時間”
プロダクト価値の計測指標は”写真撮影機能の利用率”

展開パート
作成後は以下のような形で社内に展開していきました。
①CSフローへの組み込み
上記の通りアウトカムマップはオンボーディング段階から活用するものになるので、ご導入後の初回お打ち合わせをはじめとした各種資料に組み込みました。
また、利用状況を見る上で注目すべき機能も特定ができたので、PdMの協力の元Quicksightでモニタリングできる仕組みを整えました。

②チームへの展開
アウトカムマップができた時点で、サービスチーム&ビジネスチーム両方に(「カミナシ 設備保全」に関わるメンバー全員に)共有しました。
リリースから少し時間が経ち、改めて「このプロダクトでお届けできる成果はなにか」という話題が挙がっていたこともあり、各部門からの反応は上々でした。

③マーケ施策への組み込み
こちらも上記の通りPMMの高倉に連携し、作成中の事例記事は全てアウトカムマップを軸にグルーピングをしてもらうことになりました。
やってみた結果
お客様との成果合意/振り返りがしやすくなった
「このプロダクトによって得られる成果」を明示できることで、お客様の言語化のお手伝いがしやすくなっている印象があります。
決めつけにならないようにバランスをとってコミュニケーションする必要はありますが、課題の顕在化と同じように「求める成果の顕在化」ができることで、活用方針が決めやすくなりました。
お客様の活用状況から「もうすぐ生まれるアウトカム」がわかるようになった
全てのアウトカムはプロダクト価値と紐づくように整理をしています。
求めるアウトカム→付随するプロダクト価値という順番で活用案内をする方法が主ですが、逆に「この機能が多く使われているということはこのプロダクト価値を発揮できている→このアウトカムが出ているのではないか?」
という仮説を立てることができるようになりました。
例:写真を沢山撮ってくださっている企業様では、状況の見える化(確認時間の削減)のアウトカムが生まれているのではないか?
部門間でサクセスの認識が揃い始めた
「サクセス」ほど共通認識を取りづらい言葉は無いな、と日々痛感しています。定義しようとするといくらでも議論に時間を取られてしまう言葉でもありますよね。
「これ!」と明示するものが作れたことで、他プロダクトや他部門で共通認識を取りやすくなり始めている実感があります。
今後組織が拡大したり横断部門が増えたりした際にジワジワと効果を発揮するのではないかと考えています。
ポイント
「プロダクト価値が発揮されている状態」と「アウトカムが出ている状態」のラインを明確に分けたこと
アウトカムの整理をする際によく当たる壁が「これは機能の話なのか?成果の話なのか?」という線引きの難しさです。
今回、アウトカムとプロダクト価値を以下のように定義したことでこの壁はクリアできました。
線引きの基準はズバリ、「自社だけでわかるかどうか」。
例:「沢山写真を撮ってくださっている!」→カミナシ側だけでログを取れるため、プロダクト価値
「状況の見える化ができている!(=確認時間が削減できている)」→実際に発生しているかどうかはお客様に聞かないとわらないため、アウトカム

この考え方は他プロダクトのCSにも転用し、CSがよりシビアにお客様の成果に向き合う土台が作れてると感じています。
他部門を巻き込んだこと
PdMとCSでとことん話し合ったこと
アウトカムを整理して全部門で共通のものにする、という構想は、実はβ版時代からPdMのmigiには共有をしており、「いつか必ずやろう」と話していました。
いざ取り組みを開始してからは今まで以上に「このプロダクトがどこに向かうのか」「プロダクトとしてのビジョンは何か」を共有/議論する時間を意識的に設けました。
結果として、「いま既に実現できるアウトカム」のみならず「今後実現していくべきアウトカム」も含めた整理ができたと思っています。
プロダクトビジョンや開発ロードマップに対する理解が深まれば深まるほど、CS段階でどんなアウトカムを創出すべきなのかという方向性も明らかになっていったのは良かったです。
作成段階から前工程にシェアしていたこと
6-7割完成したタイミングで、マーケ&セールスのリードメンバーには「こういう整理をしている」と頭出しをしました。
「こう売ってきて欲しい」「この成果を合意してきて欲しい」というものではなく「これがあることで売りやすくなりそうか(お客様に活用イメージを持っていただけそうか)」という観点を大事にしたことで、事例のプロットなどの施策に早期に組み込んでもらえたのではないかと考えています。
(しくじり共有)アウトカムマップのルートは一つじゃない場合もある
少し良いことばかり書きすぎた気がするので笑、しくじりポイントも共有させてください。
いざアウトカムを整理するぞ!と決めた本当に最初のタイミングでは、「ダウンタイム(設備の停止時間のこと)の削減」という1つのアウトカムを指定し、そこに向かう一本道の「活用ステップ」のようなものを作るところから始めました。

結果から言えば、このアプローチは(少なくともカミナシ 設備保全においては)全くフィットしませんでした。
「ダウンタイムの削減」を最終ゴールにしてしまうと、それ以外の様々なアウトカムをカバーできなくなってしまったのです。
また、最終ゴールとしては変数が多すぎて「プロダクト単体で実現するアウトカム」としては難しそうということもわかりました。
アウトカムを敢えて複数設定し、それぞれに対するルートを考えるように視点を拡張してみたところ、ようやく取りこぼしがなくなりMECEに整理ができるようになりました。
「一本道」でアウトカムマップを整理していた期間は1ヶ月半くらいだったので、前提を疑わなかったせいで結構タイムロスしてしまったなぁ…と反省しています。
これから整理に取り組む方は自社プロダクトが「”ひとつのアウトカム”を実現するもの」なのか「”いろいろなアウトカム”を実現するもの」なのか、あたりをつけてから着手することをおすすめいたします。
今後に向けて
誰でも使える状態への昇華
我ながら良いものが作れたと自負していますが、より重要なのは「誰でもこれを使いこなして成果が出せるようになること」です。お客様との価値合意をする上では決めつけっぽくなってしまうリスクもあるため、示唆とヒアリングのバランスが取れるようにスクリプト等は丁寧に設計していく必要があります。作って終わり、にならないようにしなければいけません。
他部門との連携強化
今Qは特にここに力を入れていく予定です。
既にご利用いただいている企業様からアウトカムにつながる活用が生まれつつあるため、アウトカムマップを軸にしたユースケースを資料化し、マーケやFSにも使ってもらいやすい状態を作っていきたいと考えています。
クロスセルへの展開
カミナシは2024年からマルチプロダクトに舵を切っており、「カミナシ 設備保全」の他にも4つのプロダクトを展開しています。
それぞれのプロダクトにおけるアウトカムを特定することができれば、同じアウトカムを持つ他プロダクトへのクロスセルも実現できるのではないかという仮説を持っています。こちらは新たなチャレンジとして取り組んでいきますので、またいつか報告させて下さい。
御礼と予告
今回アウトカムマップを作成するにあたって、日本カスタマーサクセス協会(JCSA)の山田ひさのりさんに何度も壁打ちを行っていただきました。
それこそ最初は「一本道のアウトカムマップ」しか想定できておらず煮詰まっていたところから、複数アウトカムを前提とした設計、他プロダクトへの接合の可能性まで、視座と練度を高めていただきました。
この場を借りて感謝申し上げます。
今回の取り組みについては、秋〜冬頃に発表する場を設ける予定でJCSA様と準備を進めています。 改めてお知らせいたしますので、ぜひ期待してお待ちください!
良いご報告ができるよう、お客様との成果創出に向かって実践を重ねてまいります。
We Are Hiring!
いかがでしたでしょうか? 少しでもご参考いただけるものになっていたら幸いです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
カミナシでは、マルチプロダクト展開に伴い「0→1」と「1→100」の両方を経験できるフィールドが広がっています。お客様の成果に全力で向き合いながら、新たな発明や取り組みにもチャレンジできる最高の環境です。
少しでも気になった、話を聞いてみたいと思ってくださったそこのアナタ! まずはカジュアル面談からでも嬉しいので、こちらからお気軽にご連絡下さいませ。 お待ちしております!
