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日本の開発会社は、AIを味方につけられるのか?敵にしてしまうのか?


AIを活用し、これまで100日かかっていた開発が、数日で終わるよう世界がやってきています。

開発速度が上がり、顧客に早く価値を届けられる。
開発会社にとっても、本来は歓迎すべき変化だと思います。

一方で、日本の開発会社の多くは、人月を基準に売上を立てています。

100人日かかっていた仕事が1週間で終わるようになれば、顧客にとっては大きなメリットです。
しかし、従来と同じ契約の考え方であれば、開発会社の売上は減る可能性があります。

AIを使った方がよいと分かっている。
しかし、本気で効率化すると、自分たちの売上を減らすことにもなりかねない。

日本の開発会社は今、
こうした難しい立場に置かれているのではないでしょうか?


効率化が売上減少につながる

お伝えした通り、多くのシステム開発が人月を基準に取引されています。
何人のエンジニアが、何か月稼働するのか?
その工数をもとに、開発費用を算出するモデルです。

この仕組みでは、基本的に必要な人数や期間が増えるほど、
開発会社の売上も大きくなります。

ここにAIが入ると、少し複雑なことが起きます。

AIによって開発効率が上がり、これまで5人必要だった仕事が2人でできるようになれば、顧客の負担は減ります。

開発会社としても、より少ない人数でプロジェクトを進められます。

ただ、従来と同じ人月単価で考えれば、請求できる工数も減ります。

つまり、人月商売を続けながらAIによる効率化を進めようとすると、
顧客に提供する価値は上がる一方で、開発会社の売上は下がる可能性があるのです。

もちろん、全ての開発会社が意図的にAI導入を避けているわけではありません。

現場では、さまざまなAIツールが使われ始めています。
コード生成やレビュー、テスト作成など、日々の開発業務にAIを取り入れている会社も増えています。

それでも、AIによって生まれた効率を、会社の利益や顧客への価値へどう変換するのかという点は、まだ整理されていないことが多い気がしています。


AIが仕事を奪う存在に見えてしまう

ちなみにこれは、開発会社に限った話ではありません。
エンジニアがいない会社の現場でも、AIは必ずしも歓迎されるとは限りません。

経営側から見れば、AIは生産性を上げるための道具です。
一方で、現場で働く人から見れば、自分が担当している仕事を減らすものでもあります。

仮に、これまで一日かかっていた業務がAIによって一時間で終わるようになったとします。

会社全体にとっては良い変化でしょう。

しかし、その業務を担当していた本人からすれば、
「自分の仕事がなくなるのではないか?」という不安が生まれます。

特に日本では、業務の範囲が明確に定められたジョブ型雇用よりも、
人と仕事が結びついたメンバーシップ型の雇用が多く残っています。

「この業務は何のために存在するのか」ではなく、
「この業務は誰々さんの仕事」と認識されているケースも少なくありません。

その状態でAIを導入すると、業務改善の話が、
そのまま個人の存在意義や雇用の話につながってしまいます。

すると、AIは便利な道具ではなく、自分の立場を脅かす存在に見えてきます。

新しいツールに反対したり、自分たちの仕事を守るために壁をつくったりする動きも、単なるITリテラシー不足とは言い切れません。
ある意味では、組織の中で生き残るための自然な反応でもあると思います。


多重下請け構造も原因に?

開発の話に戻しましょう。
大規模なシステム開発では、
一社だけでプロジェクトが完結するとは限りません。

複数のSIerやコンサルティング会社、
開発会社が入り、それぞれが担当領域を持っていることがあります。

そのような環境では、AIツールの選定も、
純粋に性能だけで決まるわけではなかったりします。

ある会社のAIツールを導入した結果、
別の会社が担当していた作業が不要になるかもしれません。

効率化によって、
特定のベンダーの予算や人員が削減される可能性もあります。

そうなれば、各社にとってAI導入は、単なる技術選定ではなくなります。

自社の担当範囲や売上を守るための調整が必要になり、
複数の会社の利害が絡み始めます。

利用者にとって最も便利なツールであっても、
既存の役割分担を大きく壊すのであれば、簡単には採用されません。

大企業のAI導入が遅れる背景には、
技術力や意思決定のスピードだけではなく、こうした構造的な事情もあるのだと思います。

むしろ、AIを導入すること自体よりも、
AIによって不要になる業務や契約、役割をどう整理するのか。

実際には、こちらの方が難しい問題なのかもしれません。


AI以前に業務が整理されていない

もう1つ、日本企業のAI導入を難しくしているのが、暗黙知です。
日本の現場では、マニュアルやデータではなく、経験のある人の判断や阿吽の呼吸によって業務が進んでいることがあります。

困ったことがあれば、特定の人に聞く
正式な手順はないけれど、長年の経験から何となく対応する

このような仕事の進め方は、柔軟性がある一方で、AIに学習させたり、業務を自動化したりすることが難しくなります。

今のAIは、目に見えてない複雑な業務プロセスを勝手に整理してくれる能力はまだ低いです。

どの情報を使い、どのような基準で判断し、
例外が起きた場合にどう対応するのか。

こうした業務プロセスやフローが見える状態になって、初めてAIを組み込みやすくなります。

また、日本では一度のミスが強く問題視される傾向もあります。
100回のうち99回正しくても、一度間違えれば「このAIは使えない」と判断されることがあります。

もちろん、現場によっては、間違いが許されない業務も存在します。

ただ、人間が行っていたときのミスは見過ごされていたのに、AIのミスだけが厳しく評価されるのであれば、導入のハードルは必要以上に高くなってしまうでしょう。

AIを使える領域と、人間による確認が必要な領域を分ける。最初から100点を求めるのではなく、使いながら精度を上げていく。

そのような考え方へ変えられるかどうかも、AI活用を左右すると思います。


売るものを変えよう

話をまとめると、開発会社がAIを味方につけるためには、
AIを使って工数を減らすだけでは不十分だと思っています。

提供価値や契約の考え方そのものを変える必要があります。

例えば、稼働した人数や時間ではなく、
完成した機能や得られた成果に対して料金を設定する方法があります。

AIによって早く開発できるほど、
開発会社の利益も増える仕組みにできれば、効率化と売上が対立しにくくなります。

また、単に依頼されたシステムを開発するだけではなく、
顧客の業務を整理し、どこにAIを組み込むべきかを考えるところまで支援することも考えられます。

つまり、コードを書く量そのものよりも、

  • 何をつくるべきか

  • どの業務を変えるべきか

  • AIをどこに使うべきか

  • 事業の成果へどう結びつけるか

といった部分の価値が、相対的に高まっていくはずです。

マーケティングやセールス、プロダクトマネジメントなど、技術以外の領域を理解することも、開発会社にとって重要になっていくでしょう。

AIによって開発が効率化される流れはおそらく止まりません。
その変化を、自分たちの売上を奪うものとして見るのか。
それとも、これまで提供できなかった価値を生み出すための道具として使うのか。

日本の開発会社がAIを味方につけられるかどうかは、
ツールを使えるかではなく、人月を中心としたこれまでの事業構造を変えられるかにかかっているのかもしれません。


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