【設計者インタビュー】京町家の伝統を継承 ― 街に相応しい景観を創出&生まれ変わったホテル
塗り壁がつなぐ町家の未来
100年先を見据え、既存を「主」、新築を「従」として町家の価値を未来へ。自然素材と手仕事を軸に、外装・内装の塗り壁で新旧が巧みに融合するホテルへと再構築したプロセスを、実施設計・施工の視点から伺った。
インタビュイー紹介
【企画・構想】 NTT 都市開発株式会社/小池正也
【基本設計・実施設計監修】 株式会社日建設計/多喜茂
【内装デザイン監修】 中村外二工務店/吉田宏
【実施設計・施工】 株式会社大林組/岩垂誠
商品紹介

採用商品:ペブルウォール
用途 :外壁

採用商品:けいそうジュラックス土壁
用途 :内装
インタビュー
■歴史と文化が今も息づく地に京町家を再現

「敷地が面する室町通りは、かつて京都の中心でした。京町家の瓦屋根が連なる低く深い軒や出格子の表構えは、今ではめっきり少なくな りました。この場所は、祇園祭では「役行者山」という舁山 (かきやま) が披露され、歴史 と文化が継承されています」
と、今回実施設計・ 施工に携わった大林組の岩垂さんは語る。続けて
「京の町はその長い歴史の中で、時代の世相や生活習慣に合わせて変化を取り入れることで本質的な価値を継承し、伝統を守ってきました。“はんなり”という言葉に象徴される、 京の町で長い年月をかけて培われた美意識と空気感の継承を計画の中心に据え、京町家の平面構成を踏襲しながら、町家建築の光と風、緑の演出要素を最大限引き出すプランニング で、美しい空間性と生活様式を体験できる現代の施設として再構築しました」
室町通りに面する表家と高塀は構造を補強して現況を保存。新築部はこれにならい、間口33mの町家の佇 まいを形成した。
高層部のファサードはセットバックして通りへの圧迫感を抑え、アルミキャストの縦格子と杉の小幅板のコンクリート打放しによる簡潔な納まりで背景として設え、街並みとの調和を図った。
まるで以前からここにあったかのような存在感がありながら、新しい雰囲 気を山鉾町に付与したのである。
■100年先を見据えて素材を選ぶ

外装材に自然素材を採用された理由をうかがうと
「築100年を超える京町家をホテルに機能再生して長く使うことを目標として掲げていました。既存の建物や構成材料を「主」、新築は「従」と位置付けていたので、生捕材はそのまま保存できるところ、部材だけ再利用できるところ、腐朽の修復が必要なところと、地道に時間をかけて調査、修復して新築の建物に取り込みました。壁の仕上げも同様に、漆喰や土壁がベースになりました。仕上げ材や施工方法には、京都の厳しい美意識の中で鍛えられた手仕事によるものが適していると考えていました。日本の美は「和らぎ」と定義し、自然に接することによりこの和らぎを醸し出せるよう、館内に使われている素材もできる限り自然素材、特に「紙」や「木材」、そして「土」を使用しています」
とのこと。四国化成の製品を採用された理由については
「以前にも何度となくこの仕上げ材を使用したことがあった経験から、この 建物に求められている既存の建物の質感や色彩等の再現性が高いと採用を決めました」
■フロント、ホテル客室に塗り壁を採用

「内装にも塗り壁を使用しました。レストランや客室には本漆喰等に加え、ジュラックス土壁を採用させていただきました。見え方が伝統的な壁材に近いことに加え、もしもの際のキズや汚れにも強く、修繕と復旧を行える点で決めました」
さらに四国化成の製品については
「過去に担当した案件では、工事が始まってから協力会社の左官の皆さんから要望があり、塗りやすさと仕上がり具合から四国さんの「新京外壁」を使いました。伝統的な材料に質感や景色を近づけるために何度も試作見本をつくって頂きましたが、いい仕上がりになりました」
安易な再現復旧を自重し、伝統を追求した丁寧な作業により、新旧が巧みに融合する新たな価値が誕生した。
