「もう若くない」と鏡を見て気づいた朝。スーパーファミコンのカセットに息を吹きかけたあの原始的な力で、人生を再起動する。
洗面所の鏡の前で、ため息をつく。
目の下のクマ。
少し後退した生え際。
なかなか落ちないお腹の肉。
「あぁ、もう若くないんだな」
30代も後半に差し掛かると、
自分の「限界」のようなものが透けて見えてくる。
仕事でも、プライベートでも、
「これくらいが俺の身の丈か」と、
無意識のうちに天井を設定してしまう。
新しいことに挑戦する体力も、気力も湧かない。
エラー画面のままフリーズした人生。
子供の頃。
スーパーファミコンで遊んでいた時のことだ。
画面が突然バグったり、電源を入れても真っ暗だったりした時。
僕らはどうしていただろうか。
そう、カセットを引っこ抜き、
端子の部分に「フーフー」と息を吹きかけていた。
科学的根拠なんてない。(むしろ錆びるからNGらしい)
でも、あの頃の僕らは、
「息を吹きかければ直る」と本気で信じていた。
そして不思議なことに、
何度もフーフーして、ガシャンと力強く差し込み直すと、
高確率でゲームは再起動したのだ。
あの「ダメ元でも、とにかくやってみる」という
原始的なエネルギー。
今の僕らには、それが決定的に欠けている。
大人になり、賢くなった僕らは、
エラーが起きる前にリスクを計算する。
「今から英語を勉強しても、遅すぎる」
「この年齢で未経験の職種は無理だ」
息を吹きかけることすらしないで、
そっと電源を落としてしまう。
でも、人生はまだ中盤戦だ。
ここで電源を落とすわけにはいかない。
僕は最近、AIを「フーフー」の代わりに使っている。
「36歳からプログラミングを始めたい。
常識的に考えれば遅いけど、
あえて『絶対に成功するシナリオ』を書いてみて」
AIが提示してくるシナリオは、
時に強引で、非現実的なこともある。
でも、それでいい。
必要なのは「正解」じゃない。
「もしかしたら、いけるかもしれない」という、
バグった画面を再起動させるためのエネルギーなのだ。
鏡の前でため息をつくのは、もうやめよう。
もう若くないかもしれない。
限界が見えているかもしれない。
でも、僕らの人生のカセットは、
息を強く吹き込んで、ガシャンと差し込み直せば、
まだ何度でも再起動できる。
あの頃の僕らが、本気で信じていたように。
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