求人が減っているのに、過去最高益。リクルートの決算で確認した数字が、採用の常識をひっくり返していました
こんにちは、キープレイヤーズの高野です。
8月7日にリクルートホールディングスの2027年3月期第1四半期決算が出ました。同時に通期の業績予想が上方修正されています。純利益は7,550億円、前期比プラス51.9%。5月に出した予想の6,230億円から、3か月で1,320億円積み増したことになります。
数字だけ見ると「好調」の一言で終わってしまうのですが、中身を読んでいて、私は一か所で手が止まりました。
リクルートは今年度の米国求人総数を、前年比マイナス4%程度と見込んでいます。求人の数は減る前提を置いているということです。そのうえで、米国の通期売上見通しを期初のプラス13.6%からプラス25.1%へ大幅に引き上げました。
第1四半期の実績を見ると、米国の売上収益は前年同期比プラス30.0%で16.4億ドル。四半期として過去最高です。そしてUS ARPJ、1求人あたりの平均売上にあたる指標の成長率が、35%でした。
求人の数が減る前提のまま、売上を3割伸ばしている。

4年前とは、まったく別の会社になっていました
これがどれくらい異常なことか、比較すると分かります。
HRテクノロジー事業、つまりIndeedを中心とする事業の米国売上収益のこれまでの最高は、2022年度の60.0億ドルでした。そのときの数字が決算説明会の書き起こしに出ています。米国求人総数がプラス3%、売上収益がプラス4.9%、US ARPJの成長率が2%。
求人が3%増えて、売上が5%増えて、単価は2%。ごく素直な伸び方です。
今回は、求人をマイナス4%と見込んだうえで、売上がプラス25.1%、単価が30%。着地見通しは66.5億ドルで、4年前の最高を6億ドル以上更新します。同じ会社の同じ事業とは思えない構造の変化が起きています。
何が変わったか。決算資料の言葉を借りれば「マネタイゼーションの進化」です。具体的には、Premium Sponsored Jobsという有料メニューの伸長が繰り返し挙げられています。求人の数ではなく、1件あたりからいくら取れるかで伸ばす形に変わったということです。
同じ会社が、同じ市場で、単価を3割上げている。しかも求人の絶対数が減る前提で、です。
現場の感覚と、どうつながるか
私は普段、企業の採用のご相談を受けています。ここ1年で確実に増えたのが「求人媒体の費用が上がった」という声です。
去年と同じ枠を、去年と同じ金額では買えなくなった。予算を据え置くと露出が落ちる。だから上位メニューに切り替える。その積み重ねが、ARPJプラス35%という数字になって出てきているのだと思います。
採用する側から見れば値上げです。ただ、これを一方的な値上げと呼ぶのは、たぶん正確ではありません。応募が集まる枠と集まらない枠の差が広がっているから、上位枠に移らざるを得ない。差がついたぶんの対価を払っている、という側面があります。
その意味で、ここから先に効いてくるのは予算の額そのものより、求人票の中身だと思っています。同じ枠を買っても、書いてある内容で結果は変わります。
日本では、人材紹介が想定より早く戻っていました
日本のHRテクノロジー事業は、第1四半期の売上収益が963億円、前年同期比プラス6.7%。通期見通しはプラス2.1%からプラス5.4%の3,670億円に上方修正されました。
理由として挙げられているのが2つあります。Indeed PLUSの有料求人広告数の増加と単価上昇。そしてもうひとつが「人材紹介サービスが想定よりも早く回復している」ことです。
これは私の実感とも合います。今年に入ってから、止まっていた幹部ポジションの相談が明らかに戻ってきました。特に4月以降です。
ただし通期見通しには、減収要因も明記されています。売上収益認識のグロスからネットへの変更が一部残っていること、そして不採算事業からの撤退や縮小です。
リクルートエージェントは、もう株式会社リクルートの事業ではありません
ここで、意外と知られていないことを書いておきます。
リクルートエージェントを運営しているのは、株式会社リクルートではありません。株式会社インディードリクルートパートナーズという会社です。2025年4月1日に、株式会社リクルートから分割して設立されました。
厚生労働省の人材サービス総合サイトで確認すると、職業紹介事業の許可番号も13-ユ-313011から13-ユ-317880に変わっています。リクルートエージェントの公式サイトから「会社概要」をたどると、この会社に着きます。
グループの事業区分でも、この会社はHRテクノロジー事業に置かれています。株式会社リクルートのほうは、じゃらんやSUUMOを持つマーケティング・マッチング・テクノロジー事業の会社です。
人材紹介は、Indeedと同じ箱の中に入った。決算を読むときは、この整理を頭に入れておかないと数字の居場所を間違えます。
そして8月3日、医師と薬剤師の紹介事業が動きました
もうひとつ、この決算の前後で大きな動きがありました。
株式会社リクルートメディカルキャリアが営んでいた医師・薬剤師の人材紹介事業が、8月3日付でメドレーのグループに入りました。吸収分割で新設された株式会社RMキャリアの全株式を、メドレーが10億円で取得しています。
先に書いておきますが、私はメドレーの創業から取締役を務め、上場後に退任した経緯があり、今も株式を持ち続けています。応援している立場です。そのうえで、公表されている資料に書いてあることだけを書きます。
リクルートメディカルキャリアは1979年創業で、医師6万件以上、薬剤師7万件以上の登録があり、約1万件の顧客基盤を持つ会社です。国内700以上の病院・クリニックに採用代行を提供していました。それが10億円で動いた。
リクルート側の通期見通しにある「不採算事業からの撤退や縮小」が、どこまでこの件を指すのかは開示されていません。ただ、47年やってきた事業の値段としては、考えさせられる数字だと思いました。
厚生労働省のデータで、手数料まで見えました
今年から、職業紹介事業者は職種別の手数料実績を公開することが義務になりました。この決算に出てくる会社の数字を、実際に拾ってみました。
インディードリクルートパートナーズ、つまりリクルートエージェントは、法人・団体管理職員33.4%、ソフトウェア開発32.8%、営業31.4%。就職者は87,754人です。
これに対してJACリクルートメントは35.4%から39.3%。ビズリーチは32.0%から34.6%。リクルートエグゼクティブエージェントは役員クラスで40.0%、管理職クラスで43.0%です。
規模で圧倒しているリクルートエージェントが、料率では中位にいる。これは弱さではなく、その規模を回せる仕組みを持っているということだと私は読みました。年間8万7千人を決めながら3割強を維持できるオペレーションは、簡単に真似できるものではありません。
数字の詳細は、キープレイヤーズのサイトのほうにまとめました。
一番おもしろかったのは、市場の大きさの話でした
決算説明資料の20ページ目に、世界のHRマッチング市場の内訳が出ています。
求人広告と採用ツールが340億ドル。人材派遣が1,050億ドル。人材紹介が710億ドル。採用オートメーションが240億ドル。エグゼクティブサーチが680億ドル。合計で3,020億ドルです。
そのうえで、決算説明会でこう説明されています。HRテクノロジー事業の売上はまだ114億ドルに過ぎず、白地は大きく先は長い、と。
つまり340億ドルの求人広告市場での競争ではなく、企業の人事部がいま人手でやっている採用プロセス全体を取りにいく、という宣言です。募集から先の工程を効率化して、その対価を受け取る形にしていく。
人材紹介という710億ドルの市場も、当然その視野に入っています。私はこの業界の当事者ですから、他人事として読むわけにはいきません。
現場の人間として、何を思ったか
3つあります。
1つめ。単価を上げられる側と上げられない側の差が、決算の数字にはっきり出るようになりました。求人が減る局面で35%値上げできるということは、代わりがない状態を作れているということです。人材業界でこれができている会社は多くありません。
2つめ。人材紹介という仕事は、来年も再来年も同じ形では残らないだろうと思います。採用プロセスの効率化が進めば、単に候補者をつないでいるだけの部分から順に置き換わっていきます。逆に言えば、置き換わらない部分がどこかを、一人ひとりが答えられるようにしておく必要があります。
3つめ。それでも、この決算を読んで悲観はしていません。求人が減ってなお単価が上がるというのは、いい人を採ることの価値が上がっているということでもあるからです。採用が簡単になった会社は、たぶん1社もありません。
決算資料は誰でも読めます。自分が働いている業界の数字を、たまには自分の目で見てみることをおすすめします。私も毎回、思っていたのと違う発見をしています。
採用のご相談は、いつでもお受けしています。

