学校の中では何が起きているのかー 「チーム学校」の舞台裏
保護者の方が学校に子どもの困りごとを伝えるとき、
多くの場合、こんな不安が頭をよぎるのではないでしょうか。
「この話は、ちゃんと学校の中で共有されているのだろうか」
「担任の先生のところで止まってしまっていないだろうか」
「うちの子の困りごとは、後回しにされていないだろうか」
学校の中で何が起きているのかは、外からはほとんど見えません。
見えないからこそ、不安が生まれるのはとても自然なことだと思います。
今回は、子どもの困りごとが学校に持ち込まれたあと、校内でどのように扱われているのか、
そしてそこにある「チーム学校」という考え方についてお話ししたいと思います。
私自身が「チーム学校」という視点を強く意識するようになったのは、
25年ほど前、工藤勇一先生とご一緒に仕事をさせていただいた経験がきっかけでした。
一人で支援しようとすることの限界と、
専門性の異なる大人が協働することの力を、その現場で学びました。
子どもについての困りごとが学校に伝えられたとき、
最初に受け取るのは多くの場合、担任の先生です。
担任はまず、
「自分にできることは何か」
「学級や授業の中で工夫できることはないか」
を考え、できるところから対応を試みます。
それでうまくいけば、それが一番よい形です。
けれど、一人の教員の関わりだけでは解決が難しい場合も少なくありません。
そうしたとき、担任は学年主任に状況を報告し、
必要に応じて、生徒支援部や生活指導部といった校内の組織へ話が上がっていきます。
ここから、「担任一人で抱えない」動きが始まります。
私が現在勤務している横浜創英中学・高等学校を例にあげると、
中学・高校それぞれに支援コーディネーターが配置されています。
担任がキャッチした生徒の困りごとは、
学年主任を経て、この支援コーディネーターに共有されます。
そして、どのような対応が必要かを判断したうえで、
必要なケースはスクールカウンセラーも参加している「支援会議」にあげられます。
また、生徒や保護者から直接スクールカウンセラーに相談が持ち込まれるケースも多くあります。
その場合は、教員との情報共有について、必ず本人や保護者の了承を得たうえで進めます。
こうして集まった情報は、支援会議の場で関係する教職員に共有されます。
支援会議では、
「この子の問題をどう処理するか」
という話し合いは行いません。
まず丁寧に行うのは、その子が今、どんな状況に置かれているのかを立体的に理解することです。
学校での様子、家庭から伝えられている情報、
心身の状態、人間関係、学習状況。
こうした情報を持ち寄りながら、
「この子にとって、大切なことは何か」
を何時間もかけて考えます。
現時点だけでなく、長い時間軸でみたときに、
どのような支援が子どもの学びになるのかを、皆で検討します。
そして次に行うのが、その子にとっての「キーマン」探しです。
誰が関わると安心しやすいのか。
誰の言葉が届きやすいのか。
どのタイミングで、どんな関わりがよいのか。
担任だけでなく、学年の先生、教科担当、部活顧問、スクールカウンセラー、養護教諭、管理職など、学校にあるあらゆる資源をどう組み合わせるかを、チームで検討していきます。
一人の大人が抱え込まないために。
そして、子どもを孤立させないために。
これが「チーム学校」です。
そしてこのチーム学校には、当然、保護者も含まれます。
子どもを真ん中に置いたとき、
家庭と学校は対立する位置に立つものではありません。
けれどときに、
「学校と戦わなければ、子どもを守れない」
という気持ちになってしまうこともあります。
その気持ちが生まれる背景には、
「何が行われているかわからない不安」があるのだと思います。
だからこそ知っていてほしいのです。
学校の中では、子どものために多くの大人が、
時間をかけて、真剣に話し合っているということを。
チーム学校の役割は、
「問題を早く片づけること」ではありません。
子どもを取り巻く大人が、
それぞれの得意なところを生かしながら、
情報を共有し、関係をつなぎ、
その子にとって意味のある関わりを戦略的につくること。
そしてそこに家庭の視点が加わることで、
初めて支援は立体的になります。
保護者と学校が同じチームになること。
それが、子どもにとって何よりの安心につながります。
家庭の中が見えにくいのと同様に、学校の中も、きっと見えにくいものだと思います。
でも、見えないものが見えると、不安は少し和らぎます。
そして、信頼はつながりに変わっていきます。
次回は、
家庭と学校が「チーム」として関わり続けるために大切なこと、
コミュニケーションのあり方について、
もう一歩踏み込んでお話ししたいと思います。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
