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学び直せるか、野球界【前編】なぜ「阿部慎之助問題」はここまで大きくなったのか~昭和の価値観と令和の現実~

※本稿執筆後の6月15日、東京地検は阿部慎之助氏を不起訴処分(起訴猶予)としました。本稿は不起訴処分以前に執筆したものですが、問題提起の趣旨は変わらないため内容を維持しています。

ある晩、漫然とテレビでドラマを見ていた私は、字幕速報で「警視庁 阿部慎之助巨人軍監督を逮捕」を知りました。

正直、目を疑いました。
現職のプロ野球監督がシーズン中に逮捕されること自体が異例です。
ましてや、球界の盟主を自認する読売ジャイアンツの監督であればなおさらでしょう。

事件の展開も異様でした。
娘が生成AIに相談。
児童相談所が介入。
警察が動く。
現行犯逮捕。
全国報道。
短時間で釈放。
そして監督辞任。
昭和の野球人には想像もつかない流れだったのではないでしょうか。

私はこの件を単なる家庭内トラブルとは捉えていません。
もちろん、家庭であれスポーツ現場であれ、暴力の是非は論じられるべきです。
しかし本当に注目すべきは、事件の背景にある構造です。

■生成AIは本当に悪者なのか

まず生成AIの存在です。
ChatGPTに相談した結果、児童相談所につながったという報道がなされました。
すると今度は、
「AIが家庭を壊した」
「AIが逮捕させた」
という批判が噴出しました。

しかし、本当にそうなのでしょうか。
実際に選択し、判断したのは、
相談者であり、
児相職員であり、
警察官です。
AIには逮捕権も捜査権もありません。
にもかかわらずAIだけを悪者にする。

これは新しい技術が登場した時に繰り返される現象です。
かつてはテレビが悪者でした。
ゲームが悪者でした。
インターネットが悪者でした。
そして今度は生成AIです。

■“巨人文化の申し子”という存在

一方で、スポーツ界もアップデートに苦しんでいるように見えます。
私は以前から、スポーツ界の行き過ぎた昭和的価値観に違和感と危機感を抱いていました。
勝利至上主義
根性論
過度な上下関係
暴力を伴う指導
もちろん以前より改善されてきました。
しかし完全に消えたとは言い難いでしょう。

阿部氏の会見を見ても、
「迷惑をかけた」
という言葉はありました。
しかし、
「なぜそうなったのか」
「どう再発を防ぐのか」
という部分は見えにくかった。

そこで私は考えました。
この問題は阿部慎之助個人の問題なのか。
それとも球団全体の問題なのか。
私には後者の側面も小さくないように思えます。

なぜなら阿部氏は巨人の生え抜きだからです。
大学卒業後に入団し、主力選手となり、主将を務め、監督にまで上り詰めた。
四半世紀にわたり巨人のユニフォームをまとい、巨人で稼ぎ、巨人で名を上げた人物です。
まさに巨人文化の申し子と言ってよいでしょう。

■「紳士たれ」は機能していたのか

だからこそ問われます。
「巨人軍は常に紳士たれ」
その理念は実践されていたのか。
その教育は機能していたのか。

私は阿部氏だけを責めたいわけではありません。
むしろ球界の盟主たる巨人こそ、自らを検証すべきだと思うのです。

■消火能力と防火能力は別物である

巨人の初動対応の手際よさを評価する向きもあります。
確かに迅速な初期消火によって、事態の拡大を防いだという評価は成り立つでしょう。

しかし私には、阿部氏個人の辞任によって問題の所在が見えにくくなったようにも映ります。
トカゲの尻尾切りと言うつもりはありません。
ただ、臭い物に蓋をしたことで再発防止策が見えなくなってはいないか――という懸念は払拭されません。
後編では、なぜスポーツの教育的価値が今問われているのか。
そして阿部慎之助問題から見えてきた「学び直し」と再挑戦の条件について考えてみたいと思います。

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