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日本のコンビニでプロテイン商品が増えた理由

1. 健康・フィットネスブームの影響

近年の日本では、筋力トレーニングやフィットネスが一過性の流行から日常的な習慣へと「一般化」しました。NHKの筋肉体操など筋トレ番組のヒットや、24時間営業の低価格ジムの急増(例:エニタイムフィットネスは2022年に国内1,000店舗突破 (〖24時間ジムの市場規模は?〗経営のメリット・デメリットや24時間ジムの店舗数ランキングもご紹介 | BBSインターナショナル) により、幅広い層が運動に取り組むようになっています。また新型コロナ禍でマラソン大会等が中止になる中、アスリートや一般人が自宅トレーニングに切り替え、自宅やジムで運動する人口も急増 (流通のプロが語る、プロテイン市場が拡大し続けている要因とは - スポーツナビ) ました。これらの健康志向の高まりを背景に、筋肉に効果的なプロテインの需要が拡大し、「一億総プロテイン時代」と呼ばれるほど社会全体に広がりを見せています。

フィットネス産業の市場データもこのブームを裏付けています。日本のフィットネスクラブ市場規模はコロナ禍から回復基調にあり、2023年に約4,886億円と前年から8.5%成長し、コロナ前のピーク(約5,000億円)に近づいています (日本のフィットネス市場規模、2023年は4,886億円 |  ☆サクセスby田村真二) 運動人口の増加に伴い、プロテイン市場も飛躍的に成長しました。富士経済の調査によれば、プロテイン飲料や高タンパク食品を含む日本のタンパク補給食品市場規模は2023年に約2,580億円(見込み)と、この10年で約4倍に拡大しています (明治「ザバス」が絶好調!プロテイン飲料最前線 まだ伸びるタンパク質市場へ「オイコス」も参戦 | 食品 | 東洋経済オンライン) 別の推計では現在約1,700億円規模(5年前の2倍)に達し、5年後には2,000億円規模に達する見通しとも報じられています (流通のプロが語る、プロテイン市場が拡大し続けている要因とは - スポーツナビ) このように市場が拡大を続けている背景に、国民の健康・フィットネス志向の高まりと、それに伴うプロテイン摂取ニーズの増大があるのです。

2. 消費者ニーズの変化

かつてプロテインは「アスリートやボディビルダーが筋肉増強のために飲むもの」というイメージでしたが、現在では“プロテイン=タンパク質”であるという理解が浸透し、効率的にタンパク質を摂取する手段として認識されるようになりました (流通のプロが語る、プロテイン市場が拡大し続けている要因とは - スポーツナビ) 要するに「肉や魚、卵などの代わりにプロテインでタンパク質を補う」という考え方が一般の消費者にも広がったのです。この意識変化により、「運動しない人でも健康維持のためにプロテインを摂る」ことへの抵抗感が薄れ、日常の栄養補助食品として受け入れられるようになりました。

実際、一般消費者のプロテイン利用率も上昇しています。2022年の調査では、「直近1年間にプロテインを利用した人」は全体の2割弱に達し、特に男性10・20代では約4割が利用したとのデータがあります (〖プロテインに関する調査〗直近1年間に利用した人は2割弱。利用する理由・きっかけは「筋肉や筋力の維持・増強」「健康維持」「たんぱく質の摂取」が直近1年間利用者の各40%台 | マイボイスコム株式会社のプレスリリース) プロテインを利用する目的としては、「筋肉や筋力の維持・増強」「健康維持」「タンパク質の補給」がいずれも4割台で上位を占め、男性は筋肉目的、女性はタンパク質補給目的の比率が高いという結果でした 。また、普段からタンパク質を積極的に摂るよう意識している人も約6割に上るとの報告もあり (あなたは大丈夫?日本人のたんぱく質摂取量は減少傾向に ... - 明治) タンパク質摂取の重要性に対する認識が着実に高まっています。

こうした背景から、プロテイン商品の主要ターゲット層も拡大・多様化しました。

  • アスリートや若年層のフィットネス愛好者:従来からの主な利用者層で、筋力向上やトレーニング効果アップのため定期的にプロテインを摂取します。

  • 健康志向の一般消費者:運動習慣の有無にかかわらず、美容や健康維持の目的でプロテインを取り入れる層です。特に女性の支持が高く、「プロテイン=美容やダイエットによい」という認識も広まっています (筋トレ民にナチュラルローソンの商品がおすすめの理由〖オススメの高たんぱく食品・コンビニプロテイン7選〗)

  • 高齢者層:筋力低下やフレイル予防の観点からタンパク質補給の重要性が注目され、高齢世代にもプロテインが受け入れられつつあります。シニア向けに飲みやすいミルクプロテイン飲料なども人気です。

このように、女性、成長期の子ども、メタボ対策の中高年男性、シニアまで幅広い年代・属性がプロテインを栄養補助として利用し、大きな市場を形成し始めています (流通のプロが語る、プロテイン市場が拡大し続けている要因とは - スポーツナビ) 従来の粉末タイプのプロテインだけでなく、ヨーグルトや餃子、おつまみといった一般食品にまで「高タンパク」を謳う商品が広がっているのも、消費者ニーズの変化を反映しています。忙しい現代人が手軽に栄養補給できる「プロテイン=手軽な栄養食」との位置付けが定着しつつあると言えるでしょう。

3. コンビニ業界の戦略

こうしたプロテイン需要の拡大を受けて、コンビニ各社は積極的にプロテイン商品を品揃えに取り入れています。その背景には、健康志向の商品で新たな顧客層を取り込み、売上・収益を伸ばしたい戦略があります。コンビニは元来「手軽さ」を売りにした業態ですが、近年はそれに加えて「健康志向」や「高付加価値」を求める顧客にも応えるべく商品ラインナップを多様化しています。その象徴がプロテインコーナーの充実です。

実際、現在では主要コンビニ店内にサラダチキン、プロテインドリンク、プロテインバー(棒状バー)、プロテイン粉末などをまとめた「プロテインコーナー」が設置されており、毎週100種類もの新商品が登場するコンビニ新商品の中でも安定した売場を維持しています (流通のプロが語る、プロテイン市場が拡大し続けている要因とは - スポーツナビ) 各社ともこのコーナーに力を入れており、 **「健康=コンビニでも実現できる」**というイメージ作りを進めているのです。

コンビニ3社の具体的な取り組みを見てみると:

このように各社ともプロテイン商品を品揃えに加えることで商品カテゴリーの幅を広げ、客単価アップと新規顧客の取り込みを狙っているのです。高タンパク飲料やバーは一般の菓子・飲料より単価が高めですが、健康意識の高い顧客はリピート購入する傾向が強く、収益貢献度も高いと考えられます。また「運動後にコンビニでプロテインを買って飲む」といった行動が定着すれば、従来コンビニを利用しなかった層の来店動機にもつながります。コンビニ各社にとってプロテイン商品拡充は、健康ブームに乗ったブランドイメージ向上策であると同時に、新たな収益源の開拓策でもあるのです。

4. 大手メーカーの影響やマーケティング戦略

プロテイン商品の盛り上がりには、食品・飲料メーカー各社の戦略も大きく寄与しています。主要メーカーがこぞってプロテイン市場に参入・拡大し、コンビニ向けの商品開発や積極的なマーケティングを展開したことで、市場全体が底上げされました。

まず、日本のプロテイン市場を牽引する明治(Meiji)の存在は見逃せません。明治の「SAVAS(ザバス)」ブランドは長年プロテインパウダーで実績を持ち、近年はコンビニでも買える紙パック入りの「ザバス ミルクプロテイン」飲料を大ヒットさせました。このザバスプロテイン飲料は、プロテイン飲料市場で約8割という圧倒的シェアを占めており (明治「ザバス」が絶好調!プロテイン飲料最前線 まだ伸びるタンパク質市場へ「オイコス」も参戦 | 食品 | 東洋経済オンライン) 2022年度は前期比9%増、2023年度は同17%増と販売金額を伸ばし続けています。 値上げを実施しながらも販売数量が前年を上回るほどの人気で 、メーカーとしてもプロモーションに注力してきました。明治は著名アスリートを起用したCMや、コンビニでも手に取りやすいフレーバー展開(ココア味やフルーツ味など)で市場を拡大し、「運動前後や忙しい時にすぐ飲めるタンパク補給」という新たな需要を開拓しています。ザバス飲料には常温保存可能な商品もありまとめ買い需要も取り込むなど、利便性を追求した戦略でリピーターを増やしている点も強みです。

次に、森永製菓(Morinaga)の展開も重要です。森永製菓は「ウイダーinゼリー」シリーズで知られますが、高タンパク版の「inゼリー プロテイン」をコンビニで広く展開し大成功を収めました。コンビニで買えるプロテイン商品人気ランキングでは、「inゼリー プロテイン(ヨーグルト味)」が支持率約45%で堂々の1位となり、同シリーズの高タンパク版(プロテイン15g配合)が3位に入るなど圧倒的な人気を得ています (コンビニで買えるプロテイン人気ランキング! 皆のおすすめ商品は? | マイナビニュース) (コンビニで買えるプロテイン人気ランキング! 皆のおすすめ商品は? | マイナビニュース) 手軽に持ち運べてどこでも飲めるパウチ入りゼリーという形態が「いつでもどこでも気軽にタンパク質補給できる点が人気の理由」と分析されており 、運動習慣のない一般層にも浸透しました。また森永製菓はプロテインバー(inバー プロテイン)も展開し、「お菓子感覚で食べられる」と好評を博しています。際、前出のランキングでも10位以内にバータイプの商品が3種ランクインしており、プロテインを「健康的なおやつ」として訴求する戦略が功を奏しています。

アサヒグループ食品も「1本満足バー プロテイン」シリーズを展開し、コンビニ菓子コーナーでも存在感を示しています。1本満足バーは従来からある栄養調整食品をベースに、タンパク質強化版としてチョコレート味など美味しさにもこだわったバーを売り出しました。その結果、前述の人気ランキングでも2位に入る支持(約11%)を集め 、「手軽で美味しいプロテイン補給食品」として定着しています。アサヒは他にも「クリーム玄米ブラン」など栄養調整食品を持っていますが、プロテインバー市場にも参入することで若年層男性から女性層まで幅広くアピールしました。こうした大手によるプロテイン商品の一般菓子・飲料化とも言える戦略が、市場拡大に貢献しています。

さらに、乳業メーカーや外資系メーカーの参入も市場を活性化させました。例えばダノンジャパンは高タンパクヨーグルト「オイコス」で人気を博しつつ、プロテインドリンク市場にも新規参入しました (流通のプロが語る、プロテイン市場が拡大し続けている要因とは - スポーツナビ) また海外ブランドでは前述のMyProtein(英)がファミマ限定商品を共同開発したほか、日本国内のスポーツサプリ企業もコンビニ流通向け商品に力を入れています(国産ブランドのエナジードリンク風プロテイン飲料や、プロテイン配合コーヒー飲料などの発売)。これらメーカーはSNSやフィットネス系イベントと連動したプロモーションを行い、「プロテイン=格好良い・時代の先端」というブランディングにも努めました。例えば、近未来的デザインのパッケージで話題を呼んだ「マイルーティーン MAX」(ウエニ貿易)は発売時に著名人を招いたオンライン発表会を開催し、商品の効果や美味しさをアピールしています (今、プロテインが流行している要因を解説!三冠獲得の「マイルーティーン MAX」オンライン会見&流通アナリストの講演レポート! | 株式会社ウエニ貿易のプレスリリース) (今、プロテインが流行している要因を解説!三冠獲得の「マイルーティーン MAX」オンライン会見&流通アナリストの講演レポート! | 株式会社ウエニ貿易のプレスリリース)

商品開発面でも各社工夫を凝らし、コンビニで手に取りやすいスタイルに特化しました。粉末タイプは依然として主流ですが、シェーカー不要でそのまま飲めるペットボトル入りや紙パック飲料、スナック感覚で食べられるバーやクッキー、さらには豆腐やサラダチキンをアレンジした高タンパク惣菜まで、多様な形で「プロテイン」が商品化されています。例えば老舗豆腐メーカーのアサヒコは、豆腐に10gのタンパク質を含ませた「豆腐バー」を開発し、コンビニのサラダチキン横に陳列したところ発売1年で1,000万本突破の大ヒットとなりました (アサヒコ豆腐バー、大ヒットの背景とは。サラダチキンの隣に陳列し“植物性タンパク質”をアピール | 健康 ×スポーツ『MELOS』) 従来縮小傾向にあった豆腐市場に新風を吹き込むと同時に、コンビニのプロテイン食品の選択肢を広げた好例です 。このように大手・新興メーカー問わず積極的な商品開発とマーケティング投資が行われた結果、コンビニで買えるプロテイン商品のバリエーションは飛躍的に増え、消費者の目に触れる機会も格段に増加しました。その相乗効果で市場がさらに拡大していると言えます。

5. 海外市場との比較

日本のコンビニにおけるプロテイン商品の拡充は、海外の健康トレンドの影響を大いに受けています。そもそも北米や欧州では日本より先行して高タンパク食品ブームが起きており、プロテインバーやプロテインシェイクは一般のスーパーやコンビニでも昔から販売されてきました。米国は高タンパク食品の新商品開発が特に盛んな市場で、2012年時点で世界の「高タンパク」表示食品の新製品の19%が米国発だったとの調査があります (Research shows US consumers have an appetite for high protein food) これは他国を大きく上回る割合で、インド9%、英国7%と続いていました 。欧米ではプロテインが筋肉増強だけでなく満腹感維持や体重管理に有用と認識されており 、健康志向の強い層を中心に幅広いカテゴリの食品にプロテインが取り入れられています。実際、米国で新発売される高タンパク食品・飲料は、スナック菓子が20%と最も多く、以下、ダイエット・栄養ドリンク17%、ヨーグルト15%と続くなど、多彩なカテゴリーに及んでいます 。ヨーグルトやシリアル、パンケーキに至るまでプロテイン強化食品が存在し、「日常のあらゆるシーンでタンパク質を摂る」文化が根付いているのです。

コンビニエンスストアにおける展開状況にも国による違いが見られます。アメリカのコンビニではプロテインバーやプロテインドリンクが数多く並び、ジム帰りの客がプロテインシェイクを買っていく光景も珍しくありません。バー一つ取ってもチョコ味・ピーナッツバター味・クッキー&クリーム味などバラエティ豊かなフレーバーがあり、糖質オフやヴィーガン対応など機能性の差別化も進んでいます。価格帯は日本円にして200~300円程度のものが多く、日本のコンビニと大きく変わらないものもありますが、コストコのような大量販売店やドラッグストアではより割安にまとめ買いできる点が異なります。一方、韓国や台湾などアジアのコンビニでも日本同様にここ数年でプロテイン食品が増えました。韓国ではコンビニ各社がサラダチキンやプロテイン牛乳、プロテインバーを揃え、「ジムに行かなくてもコンビニで高タンパク食が手に入る」状況になっています。韓国ブランドのハリム(Harim)のように、味付き鶏胸肉のプロテインおかずやプロテインクッキーを発売する企業も登場し、「健康と楽しさの両立(Healthy Pleasure)」という消費トレンドに乗せて人気を博しています (Harim releases protein-focused RTH products and snacks to ride 'healthy pleasure' trend) このように海外ではプロテイン食品が既に日常食に溶け込んでおり、日本はその動きに追随している形と言えます。

日本市場と海外市場を比較すると、商品ラインナップや消費者層にいくつか違いが見られます。海外(特に欧米)はフィットネス人口自体が多く、たとえば商業フィットネス施設の参加率は米国約23.7%、英国15%以上に対し日本は約4.5%というデータもあります (日本のフィットネス市場規模、2023年は4,886億円 |  ☆サクセスby田村真二) 運動習慣の裾野が広いため、プロテイン商品の主要顧客も広範囲に存在し、結果としてコンビニでもプロテイン関連商品の品揃えが早くから充実していました。日本では近年になってようやく一般層にまで広がってきた状況ですが、欧米では10年以上前からプロテインシェイクやバーがコンビニで買えるのが当たり前でした。また、商品の種類についても、欧米はホエイプロテインのシェイク飲料からエナジーバー、ビーフジャーキー(高タンパクスナック)まで多岐にわたり、ボリュームや味も多彩です。日本では和風のきなこ味や抹茶味、あるいは豆腐バーのように日本独自の嗜好に合わせた商品が見られる点で差別化されていますが、基本的なトレンドはグローバルに共通しています。価格面では、欧米のプロテインバーは日本円換算200円前後と、日本と大差ないかやや安い程度ですが、プロテインパウダーなどは海外通販の方が安価で手に入るケースも多く、日本ではコンビニで少量ずつ購入するスタイルが主流なのに対し、海外では大容量を購入して日常的に摂取するスタイルが一般的です。

日本のコンビニ各社は、このグローバルトレンドを敏感に捉えて商品戦略に活かしてきました。ローソンが2016年頃に海外発のプロテインブームに着目して高タンパク商品の導入を開始したのはその一例です (筋トレ民にナチュラルローソンの商品がおすすめの理由〖オススメの高たんぱく食品・コンビニプロテイン7選〗) またファミリーマートが海外ブランド(MyProtein)と提携したのも、「海外で当たり前のプロテイン飲料を日本市場にいち早く取り込む」狙いがありました。結果として、日本の消費者も遅れることなく世界的な高タンパク質志向の恩恵を受け、今やコンビニで手軽にプロテイン補給できる環境が整ったのです。総じて、日本のコンビニにプロテイン商品が増えた背景には、国内の健康ブームと消費者意識の変化に加え、海外市場の動向やグローバルな食品トレンドが大きく影響していると言えるでしょう。


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