「痩せ薬」が「臓器を守る薬」になった年
GLP-1を「ダイエット注射」だと思っているなら、認識を更新したほうがいい。糖尿病のない人でも、心臓を守ることが、大規模試験で示された。痩せる薬から、守る薬へ。
Lincoffらが2023年にNew England Journal of Medicine(SELECT試験)で、心血管病の既往があって肥満だが糖尿病はない人、1万7604人を平均約3.3年追った。セマグルチドを使った群は、心血管死・心筋梗塞・脳卒中を合わせた主要イベントが、プラセボに比べてハザード比0.80、2割減。糖尿病の有無に関係なく、心血管を守った。
なぜ守れたのかは、まだ完全には分かっていない。減量によるものか、薬が血管に直接効くのか、その両方か。いずれにせよ、結果として臓器を守った。
だから、この薬は「美容」でなく「リスク管理」の文脈に置きたい。
40歳以上で、心血管リスクが複数あり、BMIが27を超えるなら、臓器保護の選択肢として主治医と議論する
年1回、自分の10年心血管リスクを医師と一緒に出してから判断する
健康な人が美容目的で外挿する話ではない、と線を引く
ただし、これは企業主導の試験で、対象は「心血管病+肥満」の高リスク集団だ。健康な人の予防に、そのまま当てはめてはいけない。それでも、この薬の意味が「痩せる」から「守る」へ広がったのは、確かだと思う。
