「CSMという名前の正体不明ロールについて、そろそろ本気で話そう」― “カスタマーサクセス”は、どこへ行ったのか
今日は、いつもより少しだけ真面目な話をしようと思う。
テーマは CSM(カスタマーサクセスマネージャー) だ。
……と言っても、私はいつも真面目だ。
たまに口調が軽いだけで、中身はだいたい重たい。
さて、CSM。
このロール名、正直なところ、日本に輸入された時点で何かがズレたと思っている。
日本で「CSMをやっていました」と言うと、かなりの確率でこう返ってくる。
「え、CS部門の管理職ですか?」
違う。
それはだいたい違う。
Customer Success “Manager” の “Manager” は、
人をマネジメントする管理職という意味ではない。
顧客の成功を“マネージする”役割だ。
この誤解が、CSMという仕事の混乱の始まりだった。
CSMはどこから来たのか
CSMは、アメリカ・シリコンバレー発祥のロールだ。
90年代後半に定義され、2000年代に入ってから一気に広まった。
背景にあったのは、**SaaS(Software as a Service)**というビジネスモデル。
買い切りではなく、サブスクリプション。
つまり「解約されたら終わり」の世界だ。
当時、SaaSを本格的に広めた “青い雲のロゴのS社” の創業者が、
自らを 「Customer Success Manager」 と名乗ったことが、このロールの始まりだった。
# 厳密には O 社に買収された Siebel の方が先駆者ではある。
ここで重要なのは、
CSMは最初から“営業でもコンサルでもなかった” という点だ。
むしろ出自は、サポートである。
私がCSMの誕生を最前列で見てきた理由
少しだけ自己紹介をすると、
私は新卒で、シリコンバレーの老舗データベース企業(O社)に入り、
その後、SaaSの象徴とも言えるS社に転職した。
O社 → S社。
この移動は、結果的に「CSMの0→1」を全部見ることになった。
S社の創業者も、元O社の人間だった。
だからこそ、O社時代に「これはダメだ」と思っていた点を、
S社では徹底的に改善した。
特に大きかったのが、サポートの扱いだ。
CSMの原点は「サポートの再定義」
当時、サポートは“裏方”だった。
バグ対応、トラブルシュート、問い合わせ対応。
評価されにくく、スポットライトも当たらない。
コストセンターと言われ肩身が狭かったのが事実である。
だがサブスクリプションモデルでは、
サポートの質=解約率に直結する。
そこで生まれたのが、
「サポートに光を当てる役割」=CSM だった。
初期のCSMは、ほぼ例外なくサポート出身者だ。
特に多かったのが SAM(Support Account Manager)。
エンタープライズ顧客にバイネームで付く、
“分かっている人間”たち。
私も、その一人だった。
2010年代、CSMは迷走する
時代が進み、CSMは流行った。
流行ると、必ず起きることがある。
定義が壊れる。
営業出身者、新卒、IT 以外のインダストリー出身者、
「テクニカルはやりません」というCSM。
「CSMは戦略職」
「CSMは業界特化方のコンサル」
「CSMはサポートじゃない」
……いや、
それ、何をやる仕事なんですか?
この問いは、何度も繰り返された。
経営もしたことがないサラリーマンがコンサルやコーチングという少しスピったことをやることに嫌悪感を感じますし、大きなテックジャイアントの看板と名刺を持って、あたかも知ってるようなことをお客様に話す”だけ”の職種って違和感しか感じません。
シリコンバレーの“今”と、日本の“現実”
今、シリコンバレーのテックジャイアントではどうなっているか。
正直に言うと、
CSMはほぼオペレーション職だ。
解約予兆は数値化され、
AIがフラグを立て、
決められたプログラムを回す。
人が考える余地は、ほとんどない。
一方、日本。
もしくは外資も含めて日本市場の中小〜中堅企業。
ここでは、CSMはこう定義される。
「売れた後の仕事は、全部CSMです」
サポート。
リニューアル営業。
コンサル。
マーケ。
時には法務、時にはファイナンス。
“何でも屋”という名のCSM。
CSMという名前が、もう限界な理由
ここまで来ると、
私は思う。
CSMというロール名、もう使わなくていいのでは?
やることがサポートなら、サポートでいい。
営業なら、リニューアル営業でいい。
窓口なら、アカウント担当でいい。
むしろ、会社の「顔」は AE(Account Executive) であるべきだ。
プリもポストも分けず、顧客と向き合う。
CSMという名前で全部を覆い隠すのは、
責任の所在を曖昧にするだけだ。
ITベンダーや SaaS ベンダーの中にいてコンサルやコーチを名乗るのはもってのほかだ。
AI時代、CSMはさらに溶けていく
そして追い打ちをかけるのが、AIだ。
サポートはAIエージェント。
実際、Amazonでは半分以上がAI回答だという。
最近、S社のサポートに問い合わせたら、
「人間を出してください」と言っても
AIが永遠に返してくる。
……まあ、そうなる。
となると、
CSMが担ってきたポストセールス業務の多くは、
AIに置き換わる。
そうなった時、
CSMって、何?
それでも答えは一つじゃない
正解は、ない。
定義がないのだから。
だからこそ、
CSMという名前に固執せず、
もっと分解されたロールが生まれてもいい。
私自身、次のキャリアでは
「CSM」という肩書きを名乗るか、正直かなり迷っている。
これは迷いだ。
そして問いだ。
日本企業のこの混沌については輸入の仕方、定義の間違い、あとは The Model といフレームワークへの陶酔が狂わせたとかんがえている。
ちなみに The Mode というワードは海外では通じない日本語です。
この話は、たぶんまだ終わらない。
だからまた、どこかで続きを話したい。
と、書いた途端に SaaSpocalypse が始まりました。
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では、また。
迷いながら考え続けましょう。
