社労士試験は運ゲー!? 正答率80%でも約4割が落ちる社労士試験
※ この記事は、もともとも事務所のブログに上げていたものです。初稿は2015年で、その後、何度か加筆・修正が加えられてきたものを、事務所ブログの方針の変更もあり、今回noteに転載しています。
社労士になる人間が必ず通る道、それが社労士試験です。
何を隠そう、わたしも一度、この試験に落ちるという辛酸を嘗めました。
ただ、はっきり言いますが、社労士試験ほど「運も実力のうち」と考えないとやってられない試験はありません。
この記事では、社労士試験がいかに「運ゲー」かについて、みっちり語っていきたいと思います。
社労士試験は運ゲー
早速ですが、社労士試験がいかに運ゲーかを語る上で絶対に欠かせないのが選択式です。
この選択式があるかぎり、社労士試験は運ゲーです。パチンコや麻雀と一緒。
ただ、麻雀でも実力のある人とない人の勝率が違うように、社労士試験も相応の実力があるかないかで運ゲーの勝率も変わってくるのは確か。でも、運ゲーであることに変わりはない。
社労士試験には各教科ごとにボーダーラインがある
とはいえ、どんな試験でもある程度運が絡むのはどうしようもないことではあります。
わたしも昔、大学受験で、過去5年間一度も出題されてなかったので漢文の勉強を全くしなかったら、その年に限って出題されて結果落ちるという悲運を経験したこともありますしね(受験要項には漢文は対象外とは一言も入ってなかったので、100%わたしが悪いんだけど。行きたかったな~、早稲田。)
ただ、社労士試験の運の絡み方は正直、すごく理不尽だと思うんですよ。
ご存知ない方に説明しておくと、社労士試験というのまず、すべてマークシート。この時点で、ちょっと運ゲー(ただし、受験者にいい意味で)。
出題形式は5肢択一の択一式と穴埋めの選択式の2つに分かれていていて、それが教科ごとにそれぞれ出題されるようになっています。
そして、全体の総得点とは別に、教科ごとにボーダーラインが定められていてどんなに全体の総得点が高くても、1教科、例えば、択一の厚生年金がボーダーラインに満たなかったり、選択の労災保険がボーダーラインに満たなかったりしたら、それで不合格。来年またおいで、となるわけです。
選択式は運ゲーの権化
で、正直、択一でボーダーラインを切るってまずないわけです。1教科10問あって4問以上がボーダーなので。
総得点の合格ラインを考えると6割前後を取らないといけないし、1問や2問意地の悪い、作ってるやつの顔を見た上でビンタしたくなるような問題があっても、他をきっちり抑えればなんとかなる。
一方、選択式は5問中3問がボーダーライン。
択一式が4割ボーダーなのに、選択式が6割ボーダーって、なにその一問の重みの違い。これが選挙だったら一票の重みで裁判間違いなし。
もちろん、出題される文章が簡単なものなら別に怒らないというか、みんな解けるので、まあ、いいんですよ。それこそ、どこの参考書にも出てくるような法律の条文をマークシート式で埋められないなら受験生の方に問題がある。
ただ、現実には半年、一年、あるいはそれ以上勉強してきた受験生が「何これ、初めて見るよ」みたいな文章(白書などが多い)を元に問題が出題されることがあるわけです。
もうこうなると、トゲ付きのメリケンサックで往復ビンタです。
ちなみに選択式は教科が8つあり、往復ビンタものは毎年1つや2つは必ずある。結果、1点2点しか取れなくて、涙を呑む、ということがあるわけです。
社労士試験初受験の時はわたしもこれで泣きました。
社労士試験は正答率が80%あっても○○%は落ちる運ゲー
確率の基本的な話
試験を運ゲーというなら、この運について、深掘りしなければ無作法というもの。そして、運と切っても切れないのが確率ですので、ここからは確率の話をメインにしていきます。
確率でわかりやすい例といえば、サイコロ。で、このサイコロを1回降ったとき、6が出る確率は6分の1です。
では、6回降ったら1回だけ6が出るのかといえばそういうわけでもなく、1回も出ないこともあれば6回全部6ということもあります。
いわゆる、確率の偏りという話です。
サイコロを6回降った時に6が1回出る確率はいくらか、2回出る確率は? みたいなのも、計算すればちゃんと出るわけですが、この記事では、長くなるので詳細は省きます。どうしても知りたい方はこちらの記事を読むとわかりやすいです。
選択式でボーダーを超える確率の求め方
計算の前提:実力=正答率で考える
さて、先ほどから問題として挙げている社労士試験の選択式は、1教科につき5問あり3問以上正解しないとボーダーラインに引っかかり不合格になります。また、選択式は8教科あり、これらの1教科でも落とせば不合格となります。
では、8教科すべてで5問中3問以上正解する確率はどれくらいあるのでしょうか。
こう言うと、正答できるかは確率ではなく、受験者の実力と思われるかも知れません。ただ、その一方で、模試なんかを受ければわかることですが、自分の正答率はだいたいこれくらいだなあ、というのがわかるのもまた事実。
つまり、実力=正答率、と考えることにはそれほど無理はないと考えるわけです。
ちなみに、試験では、問題と受験生の相性によって、100%解ける問題や、4割くらいの確率でしか解けない問題など様々ある上、社労士試験はマークシート式なので、実力以上に正解率が上がることは百も承知ですが、今回はそれらもひっくるめて「正答率」としていきます。
よって、「正答率60%」という場合は、上の諸々の話を全てひっくるめたうえで。1つの問題が解ける確率60%とします。
なお、今回の記事では救済は基本考慮しません。
正答率70%で1教科のボーダーを超える確率
まず、例として正答率が70%の受験生がいたとします。
なぜ、70%かというと、70%あれば、全体の合格点にはほぼほぼ届きます。(実際の社労士試験の合格点は全体の60%弱なので、正答率70%で計算すると合格最低点を超える確率は99%となる)
ただし、すでに述べたように、社労士試験では教科ごとにボーダーラインがあり、全体で合格最低点となる6割を上回っても、1教科でも5問中2問以下しか正解できないと不合格となります
では、正答率70%の人が、5問中3問以上正解する確率はどうなるかというと「83.692%」となります。
言い換えると、5問中2問以下しか正解できない確率は、「100%-83.692%=16.308%」あるわけです。結構高いですよね。
これが、正答率80%の人となると、話はだいぶ変わってきて、5問中3問以上正解する確率は94.208%。1教科あたりのボーダーに引っかかる確率は5.792%と激減します。
驚愕!正答率70%の場合の、全教科でボーダーを超える確率
さてさて、社労士試験の選択式は8教科あります。当然、1教科でもボーダーに引っかかったらジ・エンド。
なので、8教科すべてボーダーラインを超える確率も求めないといけません。
さきほどの例の正答率70%の人の場合、1教科あたりのボーダーを超える確率は83.692%ですので、1教科あたり83.962%の確率で、8教科すべてでボーダーを超える確率はどうなるかを求める必要があるわけですが、これを計算で求めると実は「24%」しかありません。現実は残酷!
つまり、正答率70%くらいじゃ、そうそう全教科でボーダーラインは超えられないわけです。
正答率80%でも驚きのボーダー引っかかり率
一方で、正答率80%の場合だと、全教科でボーダーを超える確率が62%まで上がります。
70と80でこれだけ違うということは、要するに、社労士試験は、合格ラインが70%だとしても、70%ギリギリしか取れない人では、まず受からない試験ということです。
そして、何より、合格ラインよりも明らかに上の実力(正答率80%)があっても、38%は落ちるというのが、そもそも社労士試験の選択式が運ゲーである揺るがぬ証拠ではないでしょうか。
ちなみに筆者の模試での点数は、1年目も2年目もだいたい8割前後でした。
毎年救済←その時点でなにかおかしい
で、これは流石に運ゲーすぎるということで、社労士試験には救済、という制度があります。
これは、ボーダーラインを下回る受験生が多く出た教科のボーダーラインを下げるというもの。
救済は択一式・選択式を問わず行われることがありますが、だいたいは選択式への適用。というか、選択式では、救済が行われない年の方が珍しいくらい、毎年のように救済が行われています。
つまり、社労士試験は救済が前提の難易度のバランスとなっているわけ。
そのため、試験結果発表後はたいてい「どうしてこの教科で救済が行われないのか?」といった愚痴や不満が不合格者から出るし、そこに目を奪われがちですが、実際の問題は毎年救済が出ること自体が制度上の欠陥なわけです。
なぜか合格率が安定する不思議
では、毎年救済が出る、なんていう、制度上の欠陥、いわば社労士試験の恥部を毎年晒しながらも、社労士試験の運営者たちは制度を変えようとしないのでしょうか。
それはこの救済という制度で、合格者数を調整しているからしか考えられません。
実際、社労士試験の合格率はここ10年、5~7%くらいで安定しているのですが、この合格率が大きな波紋を呼んだ年がありました。2015年度の合格率2.6%です。
それ以前の合格率はおおよそ7~8%で、調整すればこのパーセンテージに収めることができたはずなのに、それをしなかった。
その理由は未だに不明ですが、当時は、こうした調整は不正だと、受験者が裁判を起こす事態にも発展しました。
つまり、試験問題も運ゲーなら、救済が行われるか行われないかも運ゲーなわけです。
2025年現在、その後の社労士試験
さて、そんな社労士試験に大きなインパクトを与えたのが2015年度の試験。
このときの合格率が2.6%という、それまでの合格率を大きく下回る結果だったこともあり、その後、裁判を起こす受験生が複数現れました。ただし、このときの訴えはすべて原告、つまり受験者側の請求は棄却されています。
ただ、それもあってか、現在では、救済の基準が公表されるようになっています。
それでも、救済で合格率をコントロールするという、いわば試験実施者の恣意的なコントロールは今でも続いていて、2025年度の試験では選択式3科目に加え択一式でも救済が入る異例の年となりました。
何度も言いますが、社労士試験は形式が変わらない限り運が絡むことからは逃れられないので、もし受験して落ちた、という人がいても落ち込まみ過ぎないようにするのが一番いいかと思います。
