コスパ・タイパでいいのだろうか
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
今回は最近よく耳にするようになった「コスパ・タイパ」について書いてみます。
コスパ:「コストパフォーマンス」の略で、費用対効果を表す言葉
タイパ:「タイムパフォーマンス」の略で、費やした時間に対する満足度や効果の割合を意味する言葉
上記のような認識で間違いないと思います。
確かに、どちらも大切な考え方に違いはありませんし、ビジネスでも忘れてはならないことではあります。
ところが、最近感じるのは、この言葉だけが独り歩きし始めているのではないか、或いは水戸黄門の葵のご紋の入った印籠のように使われてはいないでしょうか。
水戸黄門を知らない人のために:
コスパやタイパってどこまで要求されるの?
単に低コストであればいいのでしょうか?
日本には昔からこんなことわざがありますよね「安物買いの銭失い」
安いものを買うと、品質が悪く、すぐに壊れて買い替えなければならなくなるため、結果的に高くつくという意味のことわざです。安いものにはそれなりの理由があり、長く使えなかったり、使い勝手が悪かったりすることが多いです。そのため、一時的には安く買えたように見えても、結局は損をしてしまうという教訓を表しています。
百均などは、その最たるものだと思います。
何度も使うものでもないし、今だけ間に合えばいいという考えで買ってしまいがちですが、知らぬ間にゴミになってはいませんか。
恋人や家族に贈るプレゼントにコスパを優先するでしょうか?
百歩譲って、子供になら今はまだ早いからもう少し大きくなったら買ってやる、ということもあるかもしれませんが、伴侶に贈るプレゼント、恋人に贈るプレゼントって、サプライズネタを仕込むことはあったとしても、熟考したプレゼントを選ぶんじゃないでしょうか。
そして、それなりに金額も張るものを購入しますよね。
もう一つ、何事も手っ取り早く片付けばいいのでしょうか?
仕事上で膨大なデータを期日までにまとめてレポートを作成しなければならない、こんな時は最近台頭してきているChatGPTなどのAIの助けを借りることもいいかも知れません。
ですが、注意は必要です。
先日、自分の趣味の範疇でChatGPTを使ってみました。
なるほど、一瞬で回答が得られます。
ただここでちょっと気になることがありました。
出てくる回答のソースがすべて海外のモノだったんです。
私は日本国内の状況を知りたかったので、改めて日本に限定して回答を求めました。
それまで一瞬で回答されたのですが、日本に限定すると暫く待たされてしまいました。
とはいえ、結果的には、ネット検索して調べるよりは遥かに短時間で幅広い情報を得ることができたのは、メリットといえるでしょう。
ここで一番気がかりだったこと:ChatGPTを使った人は全員が同じ情報を得る可能性があります。
自分だけのとびっきりの情報を見つけるには、どうすればいいの?
その対策としては、やはり多角的な調査をしなければならなくなり、結局は時間も労力も費やしてしまうことになる、というのが私の見方です。
ChatGPT注意点
「ChatGPT の回答は必ずしも正しいとは限りません。重要な情報は確認するようにしてください。」
この一文は、ChatGPTを利用されたことがある人なら、見たことがあるはずです。
画面の一番下に、少しだけ小さめのフォントで書かれています。
そこで、ChatGPTにこんな質問をしてみました。
「ChatGPTって、100%信用してはいけないのでしょうか?」
で、返ってきた回答がこれです。
とても良い問いです。
結論から言うと、ChatGPTを「100%信用する」のは危険です。ただし、うまく使えば非常に強力な道具になります。
なぜ100%信用できないのか
1. 誤情報の可能性
ChatGPTは大量のデータから学習しているため、多くの場合は正しい答えを返しますが、必ずしも事実確認をしているわけではありません。古い情報や不正確な情報を混ぜてしまうこともあります。
2. 文脈に依存
質問の仕方によって答えが変わることがあります。曖昧な質問だと、意図に沿わない答えが返ってくる場合があります。
3. 専門性の限界
医療・法律・金融など、専門的な分野では「参考意見」としては役立ちますが、資格を持った専門家の判断にはかないません。
さて、先ほどのプレゼントの話題に戻りますが、心のこもったプレゼントって時間もかかりますよね。
皆さんも経験があるかもしれませんが、バレンタインデーの手作りチョコレート、市販のモノとは比べるまでもありませんよね。
ここまで読まれた方は、私が何を言いたいか、もうお分かりではないでしょうか。
翻訳案件でもコスパ・タイパが大切なのでしょうか?
弊社の本業である翻訳について考えてみました。
AI翻訳が重宝されているような話を聞きますが、本当にそうでしょうか?
確かに、英語が苦手という人がAI翻訳を利用すれば、何らかの答えを得ることはできるようになりました。
ですが、先ほどのChatGPTの例にあるように、自分が望んでいる答えを得ることができているのでしょうか?
見かけ上は、日本語の文字が並んだ原稿から英語のアルファベットが並んだ文章になっていますが・・・
その内容は正しいでしょうか?
あなたが意図したニュアンスの文章に仕上がっているでしょうか?
AIを利用すれば、確かにコストも時間もかかりません。
まさしくコスパ・タイパそのものでしょう。
しかし、AIの作ったものをチェックもしないで使いますか?
チェックする能力がないからAIを使うのでしょうか?
仮に、それを取引先にそのまま出すのだとすれば、その取引先をバカにしているのと同じではないでしょうか。
下手をすれば、一瞬にして信頼関係は破綻し、それで取引は終わりますよ、と言いたいです。
弊社の取引先が作るバッグ、一つ作るにも丸一日以上かかります
イタリアの有名なブランドですが、熟練の職人が一人で一つのバッグを完成まで責任をもって仕上げます。
勿論、レザーも最高品質のものしか使いません。
だからこそ、値打があり、顧客もそれを求めます。
いいものを作り上げるにはコストもかかるし、時間もかかるということを知っているブランドですから、翻訳一つにもAIなど使いません。
ですから、弊社もそのつもりで応えます。
このブランドとは20年以上のお取引の実績があり、その中で蓄積した知識を総動員して翻訳にあたります。
もしも、過去の情報と齟齬があればブランドにそっとコメントします。
的確なコメントができる翻訳会社だからこそ、ブランドも安心して任せてくれます。
このようなブランドとのキャッチボールの成果をコスパ・タイパで測ることなどできません。
大切な相手だから、相手が何を喜んでくれるかじっくり考え、時間をかけて手作りすることと似ていますよね。
ビジネスだろうと、同じことです。
相手が何を望んでいるかを考え、行動する。
そうすれば、自ずと答えは出てきます。
本物の信頼関係はコスパ・タイパでは作れないんですよ。
日本には素晴らしいビジネスモデルがあったことを皆さんはご存じでしょうか?
例えば、富山の薬売りの「先用後利」そして近江商人の「三方よし」の考え方です。
江戸時代にはインターネットはおろか電話やファックスすらなかったのですから、歩いて「行商」をするしか顧客開拓や顧客サービスの手段はありませんでした。
現代でも、「行商」が「ルート営業」に姿を変えて生き続けていますよね。
富山の薬売りは定期的に顧客の家を一軒一軒訪問し、減っている置き薬を補充していただけではありません。お年寄りの話し相手になったり、子供にはおもちゃの紙風船を配ったり、些細な事から人と人の信頼関係を作り上げながら、ある家の娘さんが嫁入りしたと聞けば、嫁ぎ先までお祝いに伺うなどして、新たな顧客開拓にも活用していたのです。
「行商」も「ルート営業」も、コスパ・タイパの定規で考えれば、これほど効率の悪い商売はないかもしれませんが、受け継がれているのには意味があるからなんですよね。
皆さんの取引先の担当者の方々が社内の人事異動とか、転職・転籍されたりすることもあると思いますが、ごあいさつをいただくことがありますよね。
実は、先日も「ご挨拶メール」をいただきました。
後任の担当者との引継ぎもさることながら、転職・転籍先でも弊社を利用したいとまで言っていただけると、この仕事をやっていてよかったと思うとともに、信じて続けてきたビジネスモデルが結果を出したことが実感できる最高の瞬間です。
信用三本柱を実践してきた富山の薬売りの精神を紹介して、今回のnoteの記事を締めくくりたいと思います。
富山の薬売りの精神
読者の皆さんの中には、ご自宅に「おきぐすり」の箱があったのを覚えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
風邪薬とか胃腸薬とか熱さまし、私も子供のころには服用した記憶があります。
「おきぐすり」については、以下のリンクを参照してみてください:
さて、この富山の薬売りにはコスパ・タイパとは正反対の考え方があったのです。
信用三本柱
「一代限りと思うな。孫の代まで続けるという心がけで、真心をこめて対応し、誠を尽くそう」
くすり売りの間で、親から子へ、子から孫へ、代々語り継がれてきた言葉ですが、これを実践するために打ち出されたのが「信用三本柱」です。
三本柱とは「商いの信用」、「くすりの信用」、そしてもうひとつが「人の信用」です。
「商いの信用」の基本は、顧客との間にトラブルを起こさず、不正な商いをしないということです。一円の勘定も誤りなく正確に取引することで信頼関係が生まれます。
「くすりの信用」は、有効で安全な品質の高いくすりを提供することです。そのために、絶えず顧客の求めるくすりをリサーチし、品質開発に努めなければなりません。
「人の信用」はもっとも重視されました。顧客の悩み相談に乗って、適切なアドバイスを行ったり、励ましたりすることで信頼関係が作られています。
「くすりを売るのではなく、人間を売れ。顧客は人間を見てくすりの信用、イメージをつくる」という考え方が、人材開発を促し、くすりの量産化につながり、販売の拡大をもたらしたのです。
富山十万石の二代目藩主・前田正甫の「用を先に利を後にせよ」という精神から生まれた「おきぐすりの先用後利」販売システムは、当時としてはかなり画期的な商法でした。
「くすり」を「翻訳」に置き換えたら
現代にも通用する考え方ではないでしょうか。
おこがましいですが、コスパ・タイパよりも富山の薬売りの精神でこれから先もクライアントの皆さんと接していく覚悟でおります。
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