翻訳昔話:タイプライターの時代
読者の皆さんは生まれた時から様々なガジェットに囲まれて育ってこられたのではないでしょうか。
その中にはパソコンも身近な存在だったという方々も少なくないのではないかと思います。
勿論、生まれた時期はそのような時代ではなかったとしても、物心がつく頃にはパソコンが普及し始めていたかもしれませんね。
今から30年前、1995年11月にWindows 95の日本語版が発売され、GUIの進化、インターネット接続機能の搭載、プラグアンドプレイなどの革新的な機能が盛り込まれ、誰でも使えるPCに大きく貢献したといえるでしょう。
因みに、それより更に十数年遡った1981年には、マイクロソフトのPC向けのOSである「MS-DOS」が誕生していますが、まだ誰もが簡単に使いこなせるものではありませんでした。
さて、本題のタイプライターの話をはじめましょう。
タイプライターのルーツは1714年にイギリスのヘンリー・ミルという人物が発明した「指でキーを叩いて文字を紙に印字する機械」と言われています。
その後、1874年にレミントン社が製造したタイプライターが、商業的にも成功した初のタイプライターだと言われていて、「タイプライター」という用語が初めて用いられたのもこの製品が最初のようです。
余談ですが、作家マーク・トウェインは自伝の中で、「トム・ソーヤの冒険」(1876年)の出版社に渡した原稿はタイプライターで打ったもので、自身こそタイプライターを使った世界初の小説家と述べています。(1883年の「ミシシッピの生活」が最初であるとも言われているようですが・・・)
もう一つ余談を披露すれば、世界で初めて「女性タイピスト」が誕生したのもこの頃で、1872年の事だったようです。
それから約100年、イタリアのオリベッティやドイツのオリンピアなど、コンパクトでポータブルなタイプライターが登場することになります。
実は、筆者が卒業論文作成に手にしたのも、このようなコンパクトなタイプライターでした。

手動式タイプライターをお使いになった方はよくわかっていただけると思いますが、ミスをすればそれで終わりだったのです。
キーを叩く力の強弱で印字の濃さが変わってくる
早く叩きすぎると、先端に活字がついたアームが絡んでしまう
間違った文字を打ってしまうと、修正は不可能
他にもたくさんありますが、ここでは割愛します
このような不便を解消するために、電動タイプライターが開発されます。
筆者が実際に使ったことがあるのは、IBMが開発した電動タイプライターでしたが、画期的な発明だと思ったのが、ゴルフボールのようなタイプボールでした。
これならアームが絡むこともありません。
更に、うれしかったのは、修正用テープを使ってミスタイプの修正ができるようになったことです。

その後もさらに進化を遂げ、バッファメモリーを備えるタイプライターも登場します。
その頃には、呼び名も「電動タイプライター」から「電子タイプライター」と変わります。
更に、電子式になってからは、レバーを使って改行するのではなく、「改行キー」を押下する機構になりました。
ここまで進化した電子タイプライターの電子制御機構は、のちに「欧文ワードプロセッサ」へと発展し、遂にはコンピュータの入力機構に応用されるようになります。
タイプライターの時代を生きた翻訳者たちは、翻訳作業のみならず、タイプライターとの格闘を生き抜いてきたと言えるかもしれません。
そして、科学技術の進歩のおかげで、パソコンが身近な存在となってからは純粋に翻訳作業に打ち込めるようになったと言っても過言ではないでしょう。
こんな話は知らなくても、翻訳の仕事には全く関係はありませんが、昔話を読んでいただき、ありがとうございます。
