ほたる飛びて美しかった|1920(大正9)年6月13日(日)〜6月19日(土)
📗 1920年(大正9年)の日記です。書いたのは18歳の祖父、読んでるのは106年後の孫(私)。
旧制中学を出たばかり。
小学校の教員を目指して受験した師範学校に落ちて、来年こそ!と思いながら、親戚の家に居候しつつ田舎の小学校で代用教員をしていた、初夏のころの話です。
🧭 この日のあらすじ
母と山菜採りに出かけ、夜は亀くんとほたる狩り。
校長に会い、打合会に出て、慰労会に出て、青年会にも出席。
18歳にして地域活動への参加率高し。
その一方で、図画と体操は失敗。
授業は失敗するし、夜は紙袋(母に頼まれたっぽい)を作るし、宿直もあるしでなかなか大変そうですが、週末には高山の家へ帰宅。
そして〆には
「道々ほたる飛びて美しかった」
なんだかんだ言って、この週はほたるが全部持っていきました。
📅 日記本文
6月13日(日)
朝、母来らる。
うるい、ふうき等を摘んで、午後帰られる。
夜、をゝ谷の亀くんとほたるをとる。
6月14日(月)
始て校長さんに合う(原文ママ)。
午後2時より打合会および慰労会あり。
夜、青年会例会あり。
帰宅11時。
6月15日(火)
図画、体操、失敗す。
夜、けそくの紙袋を作る。
6月16日(水)
夜直
6月17日(木)18日(金)
記事なし
6月19日(土)
放課後、石松にて支度してうちに帰る。
道々ほたる飛びて美しかった。
📍背景メモ
ホタル
ゲンジボタルの発光パターンには4秒周期(東日本型)と2秒周期(西日本型)があって、飛騨高山あたりでは西日本型なんだそう。そして、4秒(東日本)と2秒(西日本)のホタルが交配すると、子供のホタルは何秒周期になるでしょう。
…ご想像通り!3秒周期になるんだそうです。
大谷の亀くん
教え子?青年会の知り合い?素性は謎。
始て校長さんに合ふ
4月1日に挨拶、4月5日には着任の注意事項を受けているので、初対面ではないはず。「始て」が何を指すのかは不明。
けそくの紙袋
「華束(けそく)」は浄土真宗で仏前に供える丸い餅。
下宿先の石松家は曹洞宗だけど祖父の家は浄土真宗。
法事で参列者に配るための袋を母に頼まれ、一枚一枚のりで貼って作ったのだろうか(素直な息子である)。

ちなみに正月のお雑煮は角餅です
💭 孫のつぶやき
「道々ほたる飛びて美しかった」
この一文だけで、なんか全部わかる気がする。
夜道をひとり歩く18歳。
一週間分の疲れを抱えて、高山の家へ向かう8.1キロ。
その道のあちこちに、きらめくほたる。
日記に余分な言葉はない。ただ「美しかった」とだけ書いて、それで終わり。
こういう時、誰かに「ほたる!見て!」って言いたいけど誰もいなくて残念なような。
でもこの特別な時をひとり占めできる贅沢を楽しみたいような。



