「ミラクルフルーツ」
Aコープの産直棚にミラクルフルーツが並んでいた。
「おお!懐かしい」と残っていた2袋をかっさらうようにカゴに入れる。
生産者は村内の玉元さん。
この方はハラペーニョとか韓国唐辛子、水レモンなどちょっと風変わりなものを作るのがお好きなようで、いったいどんな方なのか納品時にワンチャン(ス)居合わせたいものである。
青果コーナーを過ぎ、精肉コーナーを左に曲がろうとしたそのとき、正面から友だちが「うーむ」みたいな表情で現れ、「あ!」と矢継ぎ早にわたしに気づき、「これ、やっぱりやめようと思うの」と目の前に差し出されたのは半額シールの貼られたベーコンスライスパックだった。
Aコープは夕方17時半くらいから半額シールが一斉に貼られる。
このシールの吸引力は半端なく、ある日は犬猫用に鶏レバー、鶏なんこつ、砂肝、ささみ、胸肉、鶏ハツと、焼き鳥屋さながら店員さんがシールを貼っているそばから勇んでカゴに入れる。
羞恥心やプライドやためらいなどはなく、有るのは達成感しかなく、ドヤ顔でレジに並ぶもそこでようやく「いくらなんでも買いすぎでは己」と我に帰っても時遅し。
なのでその手前で「いらないかも」とちゃんと気づいた友人は半額シールの誘惑に打ち勝った人である。
デパートのバーゲンなどはちーっとも興味がないのに、Aコープの半額シールには過剰な反応を示すというのはどういうことだろう。
まいにちサイエンスダイエットのカリカリが主食の猫らに精肉をあげたときの喜びよう、すなわち猫まっしぐらよう。
その姿を好々爺のように愛でるのがの最大級の愉しみ、、、。
おっと、本題は「ミラクルフルーツ」なのである。
数十年前に葉山のとあるカフェでひと粒500円で買って食べて以来、今帰仁産はなんと1袋380円で14粒も入っていたから、思わず「転売ヤー」という単語が脳裏をさーっとよぎるが、そういうことはしない主義である。
購入した2袋のうち1袋は、ベーコン案件の友人の子らに「面白いよ!」とプレゼントしたけど試してくれたかな?
さてさて、早速うちの子らにミラクルを感じてもらおうと帰り道は武者震いが止まらない。
帰宅後、まずは長男と末っ子がその真っ赤なひと粒を口に入れて数分、種をペッと出し、串切りにしたレモンをおそるおそる食べると、、、、
「ぎゃーーーーーーヤバ〜!凄〜!甘〜!なにこれー!ミラクル〜!」と、こちらの想像を上回る反応をしてくれた。
続いてわたしと潤ちゃんもパクリ。
からのレモン3個、シークワーサー、柚子を立て続けにキメて調子にのった我らはレモン原液果汁もトライ。
「めちゃ甘い!美味しい!ぐびぐび飲める!」
そこで果敢な潤ちゃんが「米酢もいけるんじゃない?」とぐびっとするも「うえー」と顔をしかめて「都昆布がものすごくまずくなった味」と酷評を下すといったパプニングが差し込まれた。
このように、総じて皆の反応がすこぶる面白く、では屋上階の後期高齢者御夫妻(わたしの両親)にも是非!と、わたしはふた粒の果実(とレモン串切り)をふわっと握りしめて階段を小走りした。
ちょうど韓流ドラマ鑑賞中であったが、「ミラクルフルーツだよ〜」と言うと「あー!これテレビで見たことある!酸味を全部甘くするんでしょ?」と幸先良き興味を示す。
しめしめ。
「今宵、ミラフルワールドへあなたたちを誘います」という気分はナビゲーターである。
あとは想像通り、母&父もお決まりの反応をきっちり見せてくれたので10分で退室。
「ただいまー」
とうとう長女がアルバイトから帰ってきた。
わたしと末っ子でオラオラしながら長女ににじり寄り、「つべこべ言わずにこれ食べよ」と、ちょうどノグリラーメンを食べようとしていた長女を阻止し、ミラクルを強要した。
「え、なに?」
長女はこの先に起こることを知らない。
「なんか、ちょっと苦い実?ってこと?」
そこでレモンである。
「あれ、え?え?」
続いてレモン原液果汁。
「え?え?うわーーーーーっ!あっまい!すっごい!今年一番の驚きなんだけど!」
大きな目をさらに見開いて、目ん玉落ちるんじゃないかってくらいの顔で残りの串レモンを貪る長女。
もっとレモンくれ!ギブミーレモン!
ミラクルフルーツでキメたレモンたるや、まったく恐ろしい。
ラーメン伸びるし。
真夜中、レモンの逆襲で胃がしくしく痛み出したのはわたしだけ、おまけにwikipediaでミラクルフルーツについての知識を得るも、いちにち経った今ぜーんぶ忘れてしまった。
