そして、イヤホンを外した。
外で一人歩く時、僕の耳にはいつもイヤホンが。
別に音楽が聞きたいわけではない。
ただ、人の気配を消したいからそこにある。
僕は昔から、彼がさよならもいらない他人でも、そこに人がいるというだけで緊張してしまう。
そして緊張でそわそわしてしまった結果、視線も歩き方も手の振り方も何もかもが、ぎこちなく動いてしまい、火に油。
緊張がど緊張に膨れ上がる。
そんな経験を幾度となく経たからか、玄関を開けたその瞬間にイヤホンを取り出す行為が、すっかり習慣となった。
今日もいつもに漏れず、イヤホンから始まったお散歩だが、ふと気づくと周りに誰もいない。
それもそうだ。
華の金曜とは言え誰が好き好んで真夜中から散策を始めるだろうか。
つまり、人がいない。
僕以外誰も。
だから、心が落ち着く。
なぜか不思議と。
そして、イヤホンを外した。
耳に泳ぐは一つの風。
心地よく掠れる、夜のそよ風だった。
